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未収金の会計処理ガイド|計上・貸倒引当金・貸倒損失・税務処理の4段階を仕訳例つきで解説【2026年版】

未収金の会計処理を計上・貸倒引当金・貸倒損失・税務の4段階で解説。法人税法・法人税基本通達9-6-1〜3に基づく損金算入要件、仕訳例、実務上の判断ポイントを経理担当者向けにまとめました。

未収金が発生してから回収不能と判断されるまでの間、会計処理は段階的に変化します。適切なタイミングで正しい処理を行わなければ、BSの健全性の歪みや税務リスクにつながります。

本記事では、未収金の計上から貸倒引当金の設定、貸倒損失の計上、税務上の損金算入要件までを一連の流れとして整理します。法人税法および法人税基本通達9-6-1から9-6-3の要件を中心に、仕訳例を交えて解説します。

未収金の計上と分類

未収金(未収入金)の勘定科目と計上タイミング

未収入金(未収金)は、本業以外の取引から生じた債権を計上する勘定科目です。不動産の売却代金、固定資産の売却代金、保険金の未収分などが該当します。勘定科目の分類基準や売掛金・未収収益との違いは未収金の勘定科目ガイドで整理しています。

一方、本業の売上に関する債権は「売掛金」として計上します。両者は勘定科目が異なりますが、貸倒れに関する会計処理の考え方は共通です。売掛金が回収不能になった場合の仕訳と損金処理は売掛金が回収不能になったときの仕訳と損金処理で詳しく解説しています。

勘定科目本業との関係具体例
売掛金本業の売上商品販売代金、サービス提供料
未収入金本業以外不動産売却代金、保険金、貸付利息

計上のタイミングは、債権が発生した時点(役務の提供完了時、資産の引渡し時など)です。実際の入金を待って計上するのではなく、発生主義に基づいて処理します。

未収金の分類:正常債権と不良債権

計上された未収金は、回収可能性に応じて分類します。企業会計では、金融商品会計基準に基づき、回収可能性に応じた3段階に区分するのが一般的です。

区分状態会計上の対応
正常債権支払期日内、または軽微な遅延通常の管理
貸倒懸念債権経営破綻には至っていないが、支払いの遅延が継続個別に貸倒引当金を検討
破産更生債権等破産手続き開始、実質的な経営破綻全額または相当部分の引当

この分類は、貸倒引当金の設定額を決定する際の基礎となります。

ケース別の仕訳例

未収入金は本業以外の取引で生じるため、発生する場面がばらつきます。代表的なものを並べます。

固定資産を売却して代金が未回収のとき(帳簿価額300万円の機械を350万円で売却)

借方金額貸方金額
未収入金3,500,000円機械装置3,000,000円
固定資産売却益500,000円

保険金の支払いが決まったが入金が翌期になるとき

借方金額貸方金額
未収入金800,000円受取保険金800,000円

保険金は、支払額が確定した時点で計上します。事故が起きただけで金額が未確定の段階では、まだ債権として確定していません。

入金があったとき

借方金額貸方金額
普通預金800,000円未収入金800,000円

入金時に売上や収益を立てると二重計上になります。計上済みの未収入金を消し込むだけです。年度をまたぐ場合の考え方は未収金の年度またぎ仕訳で詳しく整理しています。

未収金と買掛金の相殺

同じ相手に対して債権と債務の両方を持っている場合、相殺によって決済できます。相殺が成立すれば対当額について回収不能のリスクがなくなるため、相手の資力が悪化しているときほど有力な選択肢になります。

民法第505条第1項は、二人が互いに同種の目的を有する債務を負担し、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者はその対当額について相殺によって債務を免れることができると定めています。実務では次の3点を確認します。

確認事項内容
同種の債権債務か金銭債権どうしであること
双方が弁済期にあるか自分の債務(買掛金)は期限の利益を放棄すれば足りる。相手の債務(未収金)は弁済期の到来が必要
相殺禁止の特約がないか契約書に禁止・制限の定めがないか。定めがある場合でも、第三者に対抗できるのは、その第三者が定めを知っていたか重大な過失で知らなかったときに限られる(同条第2項)

相殺は当事者の一方から相手方に対する意思表示によって行い、条件や期限を付けることはできません(民法第506条第1項)。効力は、双方の債務が相殺に適するようになった時にさかのぼって生じます(同条第2項)。

意思表示は口頭でも成立しますが、いつ相殺したかが後から争点になるため、内容証明郵便で通知するのが実務です。内容証明郵便の書き方も参考にしてください。

仕訳例(未収入金50万円と買掛金30万円を相殺)

借方金額貸方金額
買掛金300,000円未収入金300,000円

差額の20万円は未収入金として残ります。

相手が破産手続に入ってからでは制限がかかる

破産手続開始後に取得した債権による相殺など、破産法が禁止する場面があります。相殺できる状況にあるなら、相手の資力に不安が生じた段階で実行するかどうかを検討します。個別の可否は弁護士にご確認ください。手遅れになってからの対応は取引先が倒産したときの未収金対応を参照してください。

長期未収金への振替

回収が滞った未収金は、貸借対照表の区分を見直します。判定は一年基準によりますが、債権の状態で見る基準が変わります。

債権の状態判定基準該当すると
通常の未収金(主目的以外の取引によるもの)貸借対照表日の翌日から起算して1年以内に入金の期限が到来するか到来しないものは投資その他の資産
破産債権・更生債権およびこれらに準ずる債権1年以内に回収されないことが明らかかどうか明らかなものは投資その他の資産

いずれも企業会計原則注解16によります。

「支払期日から1年経過」で機械的に振り替えない

判定の基準は、経過した期間ではなく、いつ入金されるか、あるいは回収されないことが明らかかどうかです。支払期日を1年過ぎていても、翌月に入金する合意ができていれば流動資産のままです。逆に、期日を過ぎて間もなくても、相手が破産手続に入って1年以内の回収が見込めないなら固定資産へ振り替えます。

流動資産に置いたままにすると流動比率が実態より高く出ます。金融機関は回収可能性を踏まえて実態の貸借対照表を作り直すため、決算整理で正しく区分しておきます。

貸倒引当金の設定

貸倒引当金とは

貸倒引当金は、将来の貸倒れに備えて事前に費用(引当金繰入額)を計上し、同額を貸倒引当金として貸方に立てる仕組みです。負債ではなく、債権の回収可能性を見積もって差し引く評価性引当金で、貸借対照表では原則として対象の債権科目から控除する形で表示します。

引当金繰入額をどこに表示するか

貸倒引当金繰入額は、対象の債権の性質で損益計算書の区分が変わります。財務諸表等規則第87条は、通常の取引に基づいて発生した債権に対する貸倒引当金繰入額または貸倒損失を、異常なものを除き販売費として別に掲記すると定めています。同規則第93条は、第87条により販売費として記載されるもの以外を営業外費用に掲記するとしています。

売掛金や営業に関係する未収入金は前者、貸付金など営業に関係しない債権は後者にあたるのが通常です。どちらに入れるかで営業利益の水準が変わるため、繰入額が大きい年度ほど影響が出ます。

個別評価金銭債権(法人税法第52条第1項)

回収懸念のある特定の債権について個別に引当てます。繰入限度額は事由によって3通りに分かれ、どれに当たるかで金額が大きく変わります。 法人税法施行令第96条第1項が定めています。

事由繰入限度額
1号更生計画認可の決定、再生計画認可の決定、特別清算に係る協定の認可の決定等により、弁済が猶予され、または賦払により弁済されること事由が生じた事業年度終了の日の翌日から5年を経過する日までに弁済されることとなっている金額以外の金額(取立て等の見込みがある部分を除く)
2号債務超過の状態が相当期間継続し事業に好転の見通しがないこと、災害・経済事情の急変等により多大な損害が生じたことその他の事由により、債権の一部の取立て等の見込みがないことその取立て等の見込みがない一部の金額
3号更生手続開始の申立て、再生手続開始の申立て、破産手続開始の申立て、特別清算開始の申立て債権の額(実質的に債権とみられない部分と、担保権の実行・保証債務の履行等で取立て等の見込みがある部分を除く)の50%
4号外国の政府・中央銀行・地方公共団体の長期にわたる債務の履行遅滞により、経済的価値が著しく減少し弁済を受けることが著しく困難であること同上の残額の50%

混同しやすいのが2号と3号です。「申立て」の段階なら3号で50%、債務超過が続いて回収見込みのない部分があるなら2号でその金額、という並びになります。認可の決定まで進んで弁済が猶予された場合は1号で、5年より先に弁済される予定の金額が対象です。

同じ未収金1,000万円でも、事由で繰入限度額が変わる01,000万円1号 弁済猶予・賦払5年内弁済分を除く700万円2号 取立見込なしその部分の金額400万円3号 各種の申立て債権額の50%500万円いずれも、担保や保証で取立ての見込みがある部分は先に差し引いて計算する
個別評価金銭債権の繰入限度額(法人税法施行令第96条第1項第1号〜第3号)

書類の保存がないと事実が生じていないものとみなされる

法人税法施行令第96条第2項は、各号の事実が生じていることを証する書類その他の財務省令で定める書類を保存していないときは、その事実は生じていないものとみなすと定めています。裁判所の決定通知、申立書の写し、債務者の決算書など、事由を裏づける書類を必ず保管してください。

一括評価金銭債権(法人税法第52条第2項)

個別評価の対象にならない一般の売掛債権等について、過去の貸倒実績率をもとに一括で引当てます。

中小企業者等は、実績率に代えて業種別の法定繰入率を使うことができます(租税特別措置法第57条の9第1項)。割合は同法施行令第33条の7第4項が定めています。

業種法定繰入率
卸売業・小売業(飲食店業・料理店業を含む。割賦販売小売業を除く)10/1000
製造業(電気業・ガス業・熱供給業・水道業・修理業を含む)8/1000
金融業・保険業3/1000
割賦販売小売業、包括信用購入あっせん業、個別信用購入あっせん業7/1000
その他の事業6/1000

条文の業種区分は日常の呼び方とずれます。飲食店業は「卸売業・小売業」に入って10/1000、修理業は「製造業」に入って8/1000です。 自社を「その他」と判定して6/1000で計算すると、本来使える枠を取り逃がします。判定は主たる事業で行います。

なお、この特例を使えるのは中小企業者等に限られ、資本金1億円以下などの要件を満たしていても、過去3年間の平均所得金額が15億円を超える適用除外事業者は対象外です。

業種によって繰入率が異なるため、自社の業種区分を正しく判定することが重要です。たとえば建設業の未収金は工事代金の出来高請求に伴う長期滞留が特徴的で、飲食業の未収金はツケ払いや法人接待の後払いが多い傾向があります。業種ごとに未収金の発生パターンと適切な引当水準が異なる点を押さえておきましょう。

仕訳例:貸倒引当金の設定

期末に取引先A社に対する未収入金100万円について、50%の個別貸倒引当金を設定する場合。

借方金額貸方金額
貸倒引当金繰入額50万円貸倒引当金50万円

完全支配関係がある法人への債権は対象外

100%グループ内の法人に対する金銭債権は、個別評価も一括評価も貸倒引当金の対象になりません。 法人税法第52条第9項第2号が、完全支配関係がある他の法人に対して有する金銭債権を除くと定めています。

親会社が子会社へ立て替えた費用や貸付利息の未収分は、金額が大きくなりがちです。グループ会社への債権を一括評価の期末残高に含めたまま法定繰入率を掛けると、繰入限度額を過大に計算することになります。相手先別の残高一覧を作るとき、完全支配関係の有無で分けておくと計算を間違えません。

引当金は翌期に全額を戻し入れる

税務上、貸倒引当金は洗替が強制されます。 法人税法第52条第10項は、第1項または第2項により損金の額に算入された貸倒引当金勘定の金額は、その事業年度の翌事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入すると定めています。「洗替でも差額補充でもよい」という選択の余地はありません。

翌期の処理は次のようになります。前期に50万円を繰り入れ、当期末に同じ債権へ60万円を引き当てる場合。

借方金額貸方金額
貸倒引当金500,000円貸倒引当金戻入額500,000円
貸倒引当金繰入額600,000円貸倒引当金600,000円

会計で差額補充法を採り、差額の10万円だけを繰り入れている場合でも、税務では前期繰入額の全額を益金に、当期の繰入限度額を損金に算入して計算します。会計と税務で金額が食い違うため、申告書の別表で繰入額と戻入額をそれぞれ明示します。

貸倒損失の計上要件

貸倒引当金はあくまで「見積もり」ですが、回収不能が確定した段階で「貸倒損失」として確定的な費用計上を行います。法人税法上、貸倒損失の損金算入が認められるのは、3つの類型に分かれています。

類型通達対象損金算入
法律上の貸倒れ9-6-1全ての金銭債権強制(義務)
事実上の貸倒れ9-6-2全ての金銭債権任意
形式上の貸倒れ9-6-3売掛債権のみ(貸付金は対象外)任意(備忘価額を残す)

法律上の貸倒れ(法人税基本通達9-6-1)

法律の規定や当事者間の合意により、債権の全部または一部が消滅した場合に貸倒損失を計上します。通達は4つの号を挙げています。

事由
(1)更生計画認可の決定または再生計画認可の決定により切り捨てられた金額
(2)特別清算に係る協定の認可の決定により切り捨てられた金額
(3)法令の規定による整理手続によらない関係者の協議決定で、次のいずれかにより切り捨てられた金額
イ 債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の負債整理を定めているもの
ロ 行政機関または金融機関その他の第三者のあっせんによる当事者間の協議により締結された契約で、その内容がイに準ずるもの
(4)債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができないと認められる場合において、債務者に対し書面により明らかにされた債務免除額

(3)は「整理手続によらない」場合の規定です。 法的整理は(1)(2)でカバーされるため、(3)は私的整理の受け皿になります。中小企業活性化協議会のあっせんによる合意は(3)ロに当たり得ます。私的整理で切り捨てられた金額を(1)や(2)で説明しようとすると、根拠が合いません。

(4)は書面による債権放棄です。要件と手続きは債権放棄の手続きで詳しく整理しています。

損金算入は強制

この類型は、切捨て・放棄された金額を貸倒損失として損金算入する義務があります(任意ではなく強制)。

事実上の貸倒れ(法人税基本通達9-6-2)

債務者の資産状況、支払能力等からみて金銭債権の全額が回収できないことが明らかになった場合に、貸倒損失として損金算入できます。

ポイント:

  • 担保物がある場合は、担保処分後でなければ適用できない
  • 保証人がいる場合は、保証人からの回収もできないことが要件
  • 一部でも回収できる見込みがあるなら、この規定は使えない(回収不能な部分だけを計上する取扱いではない)
  • 形式的な基準はなく、個別の事実認定が必要

税務調査での否認リスク

税務調査では、「回収できないことが明らか」と判断した根拠の記録が求められます。信用調査報告書、内容証明の不達記録、債務者の破産情報などの証拠書類を保管しておくことが重要です。

形式上の貸倒れ(法人税基本通達9-6-3)

一定の形式的な要件を満たした場合に、売掛債権(貸付金等を除く)の額から備忘価額を控除した残額を貸倒損失として損金算入できます。

要件(いずれかに該当):

  1. 継続的な取引を行っていた債務者との取引停止後1年以上経過した場合(最後の弁済期または最後の弁済のいずれか遅い方から起算)
  2. 同一地域の債務者に対する売掛債権の総額が取立費用に満たない場合で、督促しても弁済がないとき

形式基準(9-6-3)の適用制限

  • 適用対象は「売掛債権」(売掛金・受取手形等)に限定される
  • 貸付金・未収入金には適用されない(9-6-1または9-6-2で判断する必要がある)
  • 備忘価額を残す(通達は金額を定めておらず、実務では1円とすることが多い)
  • 不動産取引のように不定期の取引で生じた債権は「継続的取引」に該当しない場合がある

仕訳例:貸倒損失の計上

取引先B社に対する売掛金80万円が法律上の貸倒れ(通達9-6-1)に該当した場合。貸倒引当金30万円を設定済み。

借方金額貸方金額
貸倒引当金30万円売掛金80万円
貸倒損失50万円

税務上の取扱い

会計上の貸倒損失と税務上の損金算入の違い

会計上は企業の判断で貸倒損失を計上できますが、法人税法上の損金算入には上記の通達要件を満たす必要があります。会計上は費用計上したが税務上は損金不算入となるケースでは、法人税の申告書で加算調整(別表四で加算)を行います。

会計と税務の差異が生じやすい代表的なケースを整理します。

状況会計処理税務上の取扱い
回収見込みが薄いが、法的整理・事実上の回収不能の要件を満たさない貸倒損失を計上できる損金不算入(引当金での対応にとどまる)
グループ会社に対する債権を放棄した貸倒損失を計上寄附金と認定されるリスクがある
1年以上取引停止の売掛債権を償却した貸倒損失を計上通達9-6-3の要件を満たせば損金算入可

消費税の取扱い:貸倒れに係る消費税の控除

課税売上に係る売掛金等が貸倒れとなった場合、その貸倒れに係る消費税額を控除することができます(消費税法第39条)。

控除の要件は4つあります。

  • 課税資産の譲渡等に係る売掛金等であること(免税事業者だった期間の売上に係る債権は対象外)
  • 更生計画認可の決定による切捨てなど、政令で定める事実が生じていること
  • 貸倒れが発生した課税期間の申告で控除すること
  • 貸倒れの事実が生じたことを証する書類を保存していること(消費税法第39条第2項)

控除する金額は、領収できなくなった税込価額に110分の7.8(軽減税率対象は108分の6.24)を乗じて計算します。

仕入税額控除とは別枠。売上側の消費税を減らす

消費税法第39条第1項は、課税標準額に対する消費税額から控除すると定めています。仕入税額控除の枠組みではありません。また同条第2項により、貸倒れの事実が生じたことを証する書類を保存していない場合は第1項が適用されません。法人税のために揃えた資料が使えることも多いものの、消費税として求められる保存要件を満たしているかは別に確認してください。放棄した後に一部でも回収できたときは、その税込価額に係る消費税額を回収した課税期間の消費税額に加算します(同条第3項)。

寄附金認定を避けるためのポイント

関連会社やグループ会社に対する債権放棄は、法人税法上寄附金と認定されるリスクがあります(法人税法第37条)。

寄附金認定を避けるためには、次の4つの点を押さえてください。

1

経済的合理性を証明する

回収に要するコストが債権額を上回る場合など、放棄が合理的であることを文書化する

2

第三者間取引であることを示す

グループ間取引の場合は、独立当事者間取引と同等の条件であることを立証する

3

整理と再建のどちらの場面かを特定する

子会社等を解散・譲渡等で整理する場面は法人税基本通達9-4-1、業績不振の子会社等を再建する場面は9-4-2。合理的な再建計画が要るのは9-4-2で、9-4-1では求められない

4

証拠書類を整備する

債務者の財務状況を示す資料、回収努力の記録、放棄の意思決定に関する議事録を保管する

実務上の判断フローチャート

未収金の会計処理は、次の順序で検討します。

1

支払期日を経過しているか確認

経過していなければ通常の債権管理を継続する

2

回収懸念の有無を判断

回収懸念があれば貸倒引当金の個別設定を検討する

3

法律上の貸倒れ事由に該当するか

該当すれば通達9-6-1で損金算入(強制)

4

全額回収不能が明らかか

明らかであれば通達9-6-2で損金算入

5

形式基準に該当するか

継続的取引の売掛債権で取引停止後1年以上であれば通達9-6-3で損金算入

6

いずれにも該当しない場合

引当金での対応にとどめ、時効管理を行いつつ状況の変化を待つ

いずれの段階でも、判断の根拠となる証拠書類を保管しておくことが税務調査対策の基本です。

決算前に確認する4点

未収金は本業以外の取引で生じるため、日常の売掛管理から漏れやすい勘定です。決算で次の4点を確認します。

計上漏れがないか。期末までに引渡しや役務提供が終わっているのに、請求書を出していないという理由で計上していない取引がないかを確認します。発生主義では、請求したかどうかではなく債権が発生したかどうかで判断します。 固定資産の売却や保険金など単発の取引は、通常の請求フローに乗らないため特に漏れます。

二重計上がないか。未収入金を計上した取引について、入金時にもう一度収益を立てていないかを確認します。入金時の仕訳は未収入金の消し込みだけです。

相手先別の残高が実態と合っているか。総勘定元帳の残高だけ見ていると、相手ごとの滞留に気づけません。相手先別の残高一覧を作り、入金予定日を過ぎているものを洗い出します。この段階で相殺できる買掛金がないかも確認します。

流動・固定の区分が正しいか。前述の一年基準で、1年以内に回収されないことが明らかな債権を投資その他の資産へ振り替えます。

なお、回収可能性に懸念のある債権を見つけたら、その決算で引当金を設定できるかを検討します。決算をまたいでから気づくと、その期の損金算入の機会を失います。

貸倒処理した後に回収できたとき

貸倒損失として処理した債権が、その後に一部でも回収できることがあります。相手が事業を再開した、保証人から回収できた、といった場合です。

このときは、回収した金額を回収した事業年度の益金に算入します。過去の申告を修正するのではありません。会計では償却債権取立益として処理します。

消費税も同じ考え方で、貸倒れに係る消費税額の控除を受けた後に税込価額の全部または一部を領収したときは、その税込価額に係る消費税額を、領収した日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額に加算します(消費税法第39条第3項)。控除しっぱなしにはできません。

回収の可能性が残っているうちは、貸倒処理をしたからといって請求権まで放棄したことにはなりません。税務上の貸倒れと、民法上の債権の消滅は別の話です。 通達9-6-2や9-6-3で貸倒損失を計上した債権は法的には存在し続けるため、時効の管理は続ける必要があります。債権を消滅させたい場合は、書面による債務免除(9-6-1(4))という別の手続きになります。

まとめ

未収金の会計処理ポイント

  • 計上・分類・引当・損失計上・税務処理と段階的に対応が変わるため、各段階の判断基準を整理しておく
  • 同じ相手に買掛金があるなら相殺を先に検討する。相手の資力が悪化してからでは破産法上の制限がかかる
  • 個別評価の繰入限度額は事由で3通りに分かれる。申立ての段階なら50%、債務超過が続いて見込みのない部分があるならその金額
  • 法定繰入率の業種区分は日常の呼び方とずれる。飲食店業は卸売・小売で10/1000、修理業は製造業で8/1000
  • 損金算入は法人税基本通達9-6-1〜9-6-3のいずれかに該当する必要があり、9-6-3は売掛債権のみが対象
  • 証拠書類の保存は心構えではなく適用要件。引当金は施行令96条2項、消費税の貸倒れ控除は消費税法39条2項が明文で定めている

出典

(いずれも2026年8月29日に内容を確認しています。個別の会計処理・税務処理は取引の実態で変わるため、実務にあたっては顧問税理士にご確認ください。)

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よくある質問

Q. 未収金と売掛金は会計処理が異なりますか?
A. 勘定科目は異なります。売掛金は本業(営業活動)から生じた債権、未収入金(未収金)は本業以外から生じた債権です。ただし、貸倒引当金の設定方法や貸倒損失の計上要件については、基本的に同じ考え方が適用されます。
Q. 貸倒引当金はいくらまで設定できますか?
A. 法人税法上、個別評価金銭債権(回収懸念のある特定の債権)の繰入限度額は、事由によって3通りに分かれます。更生計画認可の決定等により弁済が猶予・賦払となった場合は5年以内に弁済される予定の金額以外、債務超過が相当期間続いて取立ての見込みがない部分がある場合はその金額、更生手続開始などの申立てがあった場合は調整後の債権額の50%です(法人税法施行令第96条第1項)。一括評価金銭債権(一般の売掛債権)は貸倒実績率で算定しますが、中小企業者等は業種別の法定繰入率を使えます。
Q. 何年経てば貸倒損失として処理できますか?
A. 期間だけでは判断できません。法人税基本通達9-6-1(法律上の貸倒れ)は法的整理の確定、9-6-2(事実上の貸倒れ)は回収不能の明確化、9-6-3(形式上の貸倒れ)は取引停止後1年以上の経過が要件です。形式基準の1年は継続的取引に係る売掛債権が対象で、貸付金等には適用されない点に注意してください。
Q. 税務調査で貸倒損失が否認されるのはどんな場合ですか?
A. 主な否認理由は、回収不能の事実認定が不十分なケース(債務者に資力が残っている、回収努力を行った記録がない等)と、形式基準の適用対象外の債権に適用しているケース(継続的取引の売掛債権以外に9-6-3を適用している等)です。証拠書類の整備と適用要件の正確な理解が重要です。

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