期末の未収金、翌期にどう引き継ぐ?
未収金を年度またぎで処理する仕訳例|決算時・翌期入金時・売掛金との違い
未収金が決算期をまたぐ場合の仕訳を、決算時・翌期入金時の具体例で解説。発生主義に基づく収益計上、売掛金との違い、企業会計原則・法人税法第22条の根拠、貸倒れに転じた場合の対応、消費税の扱い、よくあるミスまで実務目線で整理しました。
決算期末に未回収のまま残った売上代金や貸付金の利息。「入金がないのだから、来期に計上すればよいのでは?」と考える経営者は少なくありません。しかし、その処理を誤ると税務調査で収益の繰延べを指摘され、追徴課税につながるおそれがあります。
未収金が決算期をまたぐケースは、ほぼすべての中小企業で発生します。本記事では、企業会計原則と法人税法の規定を根拠に、年度またぎの未収金に関する仕訳処理を期末・翌期・回収不能時の3段階に分けて整理します。
年度またぎで未収金が発生する場面
決算期末の時点で代金を受け取っていないケースは、大きく3つのパターンに分かれます。
1つ目は、本業以外の取引から生じる未収入金です。不動産や固定資産の売却代金、保険金の請求など、営業活動以外の取引ですでに引渡しや役務の提供が終わっている債権が該当します。貸付金の利息のように期間の経過に応じて発生するものは未収収益で扱うのが原則で、両者の線引きは後述します。未収入金の勘定科目の分類と売掛金との違いを正しく理解しておくことが、正確な仕訳の前提になります。たとえば3月決算法人が2月に事務所を売却し、代金の受取りが4月になる場合、3月末時点で未収入金として計上する必要があります。
2つ目は、本業の売上にかかわる売掛金です。商品の納品やサービスの提供が完了しているにもかかわらず、取引先の支払いサイトの関係で入金が翌期にずれ込むケースが代表的です。月末締め翌月末払いの取引先であれば、3月分の売上は4月末に入金されるため、決算日時点では売掛金として残ります。
3つ目は、期末に発生した返還インセンティブや割戻しに対応する債権です。年間取引量に応じたリベートが翌期に精算される場合、期末時点で合理的に見積もれる金額を未収入金として計上します。
いずれのパターンでも共通するのは、「入金の有無にかかわらず、経済的事実が発生した期に収益を認識する」という発生主義の原則です。
企業会計原則 第二 損益計算書原則 一Aは、冒頭で次のように定めています(同項はこのあと、未実現収益を原則として当期の損益計算に計上しないこと、前払費用・前受収益・未払費用・未収収益の扱いへと続きます)。
すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない。
いわゆる発生主義の原則で、現金の受渡し時期ではなく、経済的事実の発生時期を基準にする考え方です。
発生主義と現金主義の違いが仕訳に与える影響
年度またぎの仕訳で誤りが多い根本原因は、発生主義と現金主義の混同にあります。両者の違いを理解しておくことが正確な処理の前提です。
発生主義では、役務の提供が完了した時点、または資産の引渡しが行われた時点で収益を計上します。入金があったかどうかは問いません。一方、現金主義では、実際に現金を受け取った時点で収益を認識します。家計簿と同じ考え方です。
法人税法第22条第2項は、内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、収益の額を益金の額に算入すると定めています。同条第4項は、その収益の額を一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算するとしており、企業会計原則の発生主義がここで税法につながります。
さらに法人税法第22条の2第1項は、資産の販売等に係る収益の額を「目的物の引渡し又は役務の提供の日の属する事業年度」の益金に算入すると規定しています。つまり、法人税の申告でも発生主義が原則です。
「回収できるか不安だから今期は計上しない」は条文で否定されている
法人税法第22条の2第5項は、益金に算入する価額について次のように定めています。
前項の引渡しの時における価額又は通常得べき対価の額は、同項の資産の販売等につき次に掲げる事実が生ずる可能性がある場合においても、その可能性がないものとした場合における価額とする。 一 当該資産の販売等の対価の額に係る金銭債権の貸倒れ 二 当該資産の販売等(資産の販売又は譲渡に限る。)に係る資産の買戻し
つまり回収懸念を理由に収益の計上額を減らすことはできません。回収リスクを決算に反映させたいなら、収益の側ではなく貸倒引当金または貸倒損失で処理します。年度またぎで最も起きやすい「取れるかどうか分からないから、入金を待って翌期に計上しよう」という判断は、条文の上で成り立ちません。
現金主義で処理してしまうと、期末に未収となっている収益が翌期に計上され、当期の所得が過少になります。これは収益の繰延べと見なされ、税務調査での否認リスクが高まります。過少申告加算税や延滞税が課される可能性もあるため、中小企業であっても発生主義による処理を徹底してください。過少申告加算税は原則10%で、増差税額のうち期限内申告税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分は15%になります(国税通則法第65条第1項・第2項)。「50万円を超えたら一律15%」ではありません。なお調査通知の前に自主的に修正申告した場合は課されません(同条第6項)。
現金主義が認められる例外
青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者で、不動産所得または事業所得を生ずべき業務を行う小規模事業者は、収入した金額と支出した費用の額で所得を計算できます(所得税法第67条第1項)。
その「小規模事業者」の要件は施行令に置かれており、その年の前々年分の不動産所得の金額と事業所得の金額の合計が300万円以下であることとされています(所得税法施行令第195条第1項第1号)。この300万円は、事業専従者給与・事業専従者控除の特例(所得税法第57条)を適用しないで計算した金額で判定します。手取りの所得金額そのままではありません。
手続きは「現金主義による所得計算の特例を受けることの届出書」の提出です。青色申告承認と混同しないでください。なお過去にこの特例の適用を受け、その後やめた人が再び適用を受ける場合は、税務署長の承認が必要です(同条同項第2号)。法人にはこの特例がありません。
発生主義と現金主義の比較
| 項目 | 発生主義 | 現金主義 |
|---|---|---|
| 収益の認識時点 | 役務提供完了・資産引渡し時 | 入金時 |
| 法人税法上の扱い | 原則(法人税法第22条の2) | 法人には不適用 |
| メリット | 期間損益が正確に把握できる | 処理が簡便 |
| デメリット | 未収金の管理が必要 | 期間損益にズレが生じる |
| 年度またぎへの影響 | 当期に収益を正しく計上 | 入金が翌期なら翌期に計上(誤り) |
期末決算整理仕訳の具体的な手順
決算期末における未収金の仕訳処理を、ステップごとに確認します。
未回収債権の洗い出し
売掛金台帳や補助元帳から、決算日時点で入金されていない債権をリストアップします。売掛金だけでなく、保険金や資産売却代金といった本業以外の未収項目、貸付金の未収利息(未収収益)も忘れず確認してください。
計上漏れの確認と追加仕訳
期中に発生したにもかかわらず計上されていない未収金がないか確認します。特に期末月に発生した取引は計上が漏れやすいため、契約書や請求書の日付と照合します。
長期未収金への振替判断
貸借対照表日の翌日から1年以内に入金期限が到来しない未収入金は、投資その他の資産へ区分します。営業取引から生じた債権でも、破産債権など1年以内の回収が明らかに見込めないものは同様です(企業会計原則注解16)。流動比率に影響するため決算整理で判断します。
貸倒引当金の見積もりと設定
回収に懸念のある未収金については、個別に貸倒引当金を設定します。中小法人は法定繰入率による一括評価も適用できます。
翌期への繰越確認
決算整理仕訳の結果、BSに計上される未収入金・売掛金の残高が補助元帳の明細と一致するか確認します。翌期首の処理(洗替法の場合は引当金の戻入れ)も準備します。
期末仕訳の例
3月決算法人が、3月15日にコンサルティングサービスを提供し、請求書を発行した。代金50万円の支払期日は4月30日。3月末時点で未入金。
期末(3月31日)の仕訳:
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 500,000円 | 売上高 | 500,000円 |
この仕訳により、サービス提供が完了した3月の収益として売上が計上されます。代金が翌期の4月に入金されても、収益の認識は当期3月です。
もうひとつ、本業以外の未収金の例です。3月25日に保有する社用車を80万円で売却し、引渡しも完了。代金は4月15日に振込予定。車両の帳簿価額は50万円。免税事業者を前提とし、消費税は考慮していません(課税事業者の場合は後述のとおり仮受消費税が加わります)。
期末(3月31日)の仕訳:
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 未収入金 | 800,000円 | 車両運搬具 | 500,000円 |
| 固定資産売却益 | 300,000円 |
資産の引渡しが3月中に完了しているため、売却益30万円は当期の益金に算入します。入金が4月であっても当期の決算に反映する点がポイントです。
翌期の入金処理と二重計上の防止
翌期に入金があった際の仕訳は単純ですが、実務では二重計上の誤りが発生しやすい場面です。
前期末に売掛金50万円を計上済みのケースで、翌期4月30日に入金された場合:
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 500,000円 | 売掛金 | 500,000円 |
これは売掛金の消し込みです。翌期の売上として「借方:普通預金/貸方:売上高」と仕訳してしまうと、前期に計上した収益と合わせて二重計上になります。会計ソフトで売上伝票から入金処理を行う場合は、新たな売上伝票を起こすのではなく、入金消込機能を使用してください。
二重計上が起きやすいパターン
経理担当者が交代した直後や、期首に大量の入金がある時期に発生しやすい誤りです。前期末の未収金リストを翌期首に経理部門内で共有し、消込対象であることを明示しておくことで防止できます。
未収金が一部のみ回収された場合
取引先から50万円のうち30万円だけ入金され、残り20万円は翌月に支払うと通知があった場合:
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 300,000円 | 売掛金 | 300,000円 |
残額20万円は売掛金として残し、入金時に再度消し込みます。分割入金が発生した場合は補助元帳の残高と入金額の照合を取引先ごとに行い、消込漏れを防いでください。
未収金の分割払い対応については別記事で詳しく解説しています。
年度をまたいで回収不能になった場合の処理
前期に計上した未収金が、翌期以降に回収の見込みがなくなるケースも珍しくありません。取引先の倒産、長期の支払い遅延、連絡途絶などが原因です。
回収不能が確定した場合は、貸倒損失として費用計上します。ただし、法人税法上の損金算入が認められるには、法人税基本通達9-6-1から9-6-3のいずれかの要件を満たす必要があります。
| 区分 | 通達 | 主な要件 | 決算での費用計上 |
|---|---|---|---|
| 法律上の貸倒れ | 9-6-1 | 更生計画・再生計画の認可決定、特別清算の協定認可、関係者の協議決定、債務超過が相当期間続いた場合の書面による債務免除により債権が切り捨てられた | 不要(当然に損金算入) |
| 事実上の貸倒れ | 9-6-2 | 債務者の資産状況・支払能力から全額が回収不能であることが明らか。担保物があるときは処分後 | 必須(損金経理要件) |
| 形式上の貸倒れ | 9-6-3 | 継続的取引先の売掛債権(貸付金は対象外)について、(1)取引停止から1年以上経過(担保物がある場合を除く)、または(2)同一地域の債務者に対する売掛債権の総額が取立費用に満たず督促しても弁済がない。備忘価額を残す | 必須(損金経理要件) |
年度をまたいだ場合に注意すべき点が2つあります。
1つ目は計上する事業年度の判定です。法律上の貸倒れはその事実が発生した日の属する事業年度、事実上の貸倒れは回収不能が明らかになった事業年度、形式上の貸倒れは要件を満たした事業年度に計上します。
2つ目は9-6-2と9-6-3が損金経理要件である点です。要件を満たしていても、その事業年度の決算で費用計上していなければ、あとから申告調整で損金にすることはできません。年度をまたぐと「気づいたときには前期の決算が確定していた」という状況になりやすいので、決算作業の中で判定を済ませてください。
取引先の破産は9-6-1ではない
9-6-1に列挙されているのは更生計画・再生計画の認可決定、特別清算の協定認可、関係者の協議決定、書面による債務免除で、破産手続は含まれていません。法人の破産では、配当されない部分の債権を法的に消滅させる手続きがないためです。
残余財産のない破産法人について破産手続終結(または廃止)の決定があった場合は、法人格の消滅により債権も消滅したものとして、その事業年度に損金算入します。終結決定の前でも、破産管財人から配当0円の証明を受けるなど配当がないことが明らかになった場合は、その事業年度に9-6-2で損金経理できます。破産手続開始決定が出ただけの時点で全額を貸倒処理すると、計上時期の誤りになります(国税庁 質疑応答事例)。
いずれの類型でも、回収不能に至った経緯を証明する書類(内容証明郵便の控え、信用調査報告書、破産手続開始決定の通知書など)を保存しておくことが重要です。税務調査では、貸倒損失の計上根拠と時期の妥当性が問われます。
回収見込みが低くなった未収金は、サービサー(債権回収会社)への売却という選択肢もあります。帳簿から不良債権を外しつつ、額面の一部でも現金化できる方法です。詳しくは未収金買取の仕組みと活用場面をご確認ください。
貸倒損失の仕訳例
前期に計上した売掛金100万円について、破産管財人から配当がゼロである旨の通知を受け、回収不能が明らかになった場合(事実上の貸倒れ・9-6-2)。損金経理が要件なので、その事業年度の決算で費用計上します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 貸倒損失 | 1,000,000円 | 売掛金 | 1,000,000円 |
貸倒引当金を設定済みであれば、まず引当金を取り崩し、不足分を貸倒損失として計上します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 貸倒引当金 | 500,000円 | 売掛金 | 1,000,000円 |
| 貸倒損失 | 500,000円 |
未収金の貸倒れに関連する会計処理の全体像は未収金の会計処理まとめで解説しています。
期末処理でよくある誤りと対策
年度またぎの未収金に関して、実務で発生しやすい誤りを整理します。
1つ目は、収益の計上時期の誤りです。入金がないことを理由に、期末の未収金を翌期の売上として計上するケースが該当します。前述のとおり、法人税法第22条の2は引渡基準を原則としており、入金時期は収益の認識に影響しません。税務調査における期ずれ売上計上で否認される典型的なパターンです。
2つ目は、未収金と未払金の混同です。未収金(未収入金)は「受け取る権利」であり資産科目、未払金は「支払う義務」であり負債科目です。決算整理で両者を取り違えると、BSの資産・負債が反対に計上されます。勘定科目の借方・貸方を確認してから仕訳を起こしてください。
3つ目は、長期に滞留した債権の区分漏れです。
企業会計原則注解16は、正常な営業循環から生じた債権を原則として流動資産とし、破産債権・再生債権など1年以内に回収されないことが明らかなものは投資その他の資産に区分するとしています。本業以外の未収入金は、貸借対照表日の翌日から1年以内に入金期限が到来するかどうか(1年基準)で区分します。
「支払期日から1年が過ぎたら機械的に固定資産へ移す」という基準ではありません。 回収見込みと入金期限で判断します。滞留債権を流動資産に残したままだと流動比率が実態より高く見え、金融機関の融資審査で信用力の判断を誤らせる原因になります。
4つ目は、貸倒引当金の計上漏れまたは過大計上です。回収に懸念がある未収金に対して引当金を設定しないと、BS上の資産が過大評価されます。一方、根拠なく過大な引当金を設定すると、税務上の損金算入限度額を超えた部分は否認されます。
5つ目は、消費税の処理誤りです。未収金を計上する際の消費税の課税売上計上時期は、原則として資産の譲渡等の時期(発生時)です。入金時に消費税を計上すると、課税期間がずれてしまいます。
課税事業者が事業用資産を売却した場合も、その売却は課税売上げです。上の社用車の例で税抜経理・税率10%なら、売却代金80万円に対する仮受消費税8万円が加わり、未収入金は88万円になります。所得税・法人税では譲渡損益だけを見ればよいのに対し、消費税では売却代金の総額が課税標準に入る点が違います。
未収金と未収収益を年度またぎで取り違えない
年度またぎで実際に迷うのが、未収金(未収入金)と未収収益の使い分けです。どちらも「まだ受け取っていない収益」を表しますが、性質が違います。
| 未収金(未収入金) | 未収収益 | |
|---|---|---|
| 対象 | すでに役務の提供や資産の引渡しが完了した取引の代金 | 継続的な役務提供のうち、当期に対応する分をまだ受け取っていないもの |
| 例 | 固定資産の売却代金、保険金、本業以外の収入 | 貸付金の受取利息、賃貸料のうち期間対応分 |
| 会計上の位置づけ | 債権 | 経過勘定(見越収益) |
| 翌期首の処理 | そのまま残高として繰り越す | 再振替仕訳で戻す方法もある |
判定の軸は「取引が完了しているかどうか」です。 完了していれば未収金、期間の経過に応じて発生し続けているものなら未収収益になります。企業会計原則注解5は、未収収益を継続的な役務提供のうち既に提供した分に対する未収の対価と位置づけ、未収金と区別しています。
貸付金の利息は原則として未収収益です。ただし支払期日が到来して確定債権になったあとは、未収入金へ振り替えて回収管理に乗せる運用もあります。どちらで処理するかで金額は変わりませんが、翌期首の再振替の有無が変わるため、社内で扱いを統一しておくと引き継ぎで迷いません。
前期の計上漏れを見つけたときの手続き
年度またぎの未収金は、翌期以降に「前期に計上すべきだった収益が漏れていた」と判明することがあります。処理は、その結果として税額がどちらに動くかで分かれます。
| 漏れの内容 | 税額 | 手続き |
|---|---|---|
| 収益の計上漏れ(売上が増える) | 増える | 修正申告。調査通知の前に自主的に行えば過少申告加算税は課されない |
| 収益の過大計上・費用の計上漏れ | 減る | 更正の請求(原則として法定申告期限から5年以内) |
法人税で翌期へ繰り越す欠損金額が過少だった場合の更正の請求は、5年ではなく10年以内です(国税通則法第23条第1項第2号かっこ書き)。
貸倒損失は更正の請求で後から損金にできるとは限らない
9-6-2(事実上の貸倒れ)と9-6-3(形式上の貸倒れ)は損金経理が要件です。その事業年度の決算で費用計上していなければ、あとから更正の請求をしても損金にはなりません。「更正の請求という受け皿があるから決算では見送ろう」という判断は成り立たない、ということです。一方、9-6-1(法律上の貸倒れ)は損金経理が要件ではないため、計上漏れを後から是正できる余地があります。
修正申告と更正の請求は方向が逆で、期限の考え方も違います。更正の請求の起算日や必要書類は更正の請求のやり方と期限で整理しています。
翌期の帳簿で調整して済ませないでください。 前期の収益を当期に付け替えると、両期とも所得が誤った状態になり、税務調査では前期の期ずれとして指摘されます。
税務調査で期ずれ売上が指摘される典型パターン
年度またぎの未収金で最も多い指摘が、収益の計上時期のずれ、いわゆる期ずれです。税務調査では決算期の前後1か月の取引が重点的に確認されます。指摘されやすい場面を整理します。
1つ目は、期末月に納品・役務提供が完了した取引を、請求書の発行月や入金月に合わせて翌期の売上にしているケースです。引渡基準では納品完了の3月に計上すべき売上を、請求書を4月に発行したからと4月の売上にすると、当期の益金が過少になります。
2つ目は、検収基準を採用している場合に、検収日の管理が曖昧で計上時期が後ろにずれるケースです。検収基準自体は認められますが、社内で一貫して運用し、検収日を客観的に示せる記録が必要です。
3つ目は、工事やシステム開発などの長期案件で、進行状況に応じた収益認識が漏れるケースです。期末時点の出来高に対応する収益を計上していないと、繰延べと判断されることがあります。
調査で期ずれを指摘されると、当期の益金が増えて追徴課税が生じ、過少申告加算税や延滞税が加算される場合があります。納品書・検収書・契約書の日付を揃え、計上時期の根拠を示せるようにしておくことが備えになります。期ずれの詳しい論点は税務調査における期ずれ売上計上で解説しています。
期ずれは「いつかは課税される」性質
期ずれ売上は、当期に計上しなくても翌期には計上されるため、最終的な税負担の総額は変わらないケースが大半です。それでも調査で指摘されるのは、計上時期のずれによって特定年度の所得が操作されたとみなされるためです。意図的でなくても加算税の対象になり得る点に注意してください。
前受金・仮受金と未収金を取り違えないための整理
決算整理では、未収金と方向が逆の科目を取り違える誤りも起こります。未収金は「これから受け取る権利」ですが、前受金や仮受金は「先に受け取ったお金」であり、性質が反対です。
| 科目 | 性質 | 計上される場面 | BS区分 |
|---|---|---|---|
| 未収入金・売掛金 | 受け取る権利(資産) | 納品済みだが入金前 | 資産 |
| 前受金 | 先に受け取った代金(負債) | 入金済みだが納品前 | 負債 |
| 仮受金 | 内容未確定の入金(負債) | 入金はあったが原因が不明 | 負債 |
たとえば、3月に商品を納品し代金が4月入金なら未収金(資産)ですが、3月に手付金を受け取り納品が4月なら前受金(負債)です。同じ年度またぎでも、納品と入金のどちらが先かで計上する科目が真逆になります。期末に内容不明の入金がある場合は、いったん仮受金で受けておき、原因が判明した時点で適切な科目へ振り替えます。
この区分を誤ると、貸借対照表の資産と負債が反対に計上され、財務分析の前提が崩れます。勘定科目ごとの分類は未収入金と売掛金の違いもあわせて確認してください。
年度またぎ仕訳の実務チェックリスト
- 期末の未回収債権を網羅的にリストアップし、計上漏れがないか確認する
- 収益は発生主義で計上し、入金がなくても当期の収益に含める(法人税法第22条の2)
- 翌期の入金は売掛金・未収入金の消込処理で行い、売上の二重計上を防ぐ
- 支払期日から1年超の未収金は長期未収入金に振り替え、BSの流動・固定区分を正しく保つ
- 回収不能が確定した債権は、法人税基本通達9-6-1〜3の要件を確認したうえで貸倒損失を計上する
- 処理根拠となる契約書・請求書・督促記録・信用調査報告書を保存しておく
年度またぎの未収金は、発生主義の原則に従って処理すれば複雑ではありません。期末に計上し、翌期に消し込み、回収不能なら貸倒損失に計上する。この3つのステップを正確に実行できれば、税務調査で期ずれを指摘されるリスクは大幅に低減します。
自社の未収金に回収困難なものが含まれている場合は、貸倒損失の処理方法や未収金買取の活用もあわせて検討してください。回収が長期化している債権は、未収債権の買取査定・無料相談で売却可否や概算条件を確認できます。期末決算の前に未収金の状態を棚卸しすることで、BSの健全性を維持しながら、税務上のリスクも適切にコントロールできます。
出典
- e-Gov法令検索「法人税法」第22条第2項・第4項、第22条の2第1項・第5項
- e-Gov法令検索「所得税法」第67条/「所得税法施行令」第195条(小規模事業者の現金主義による所得計算の特例と300万円要件)
- 国税庁「法人税基本通達 第9章第6節第1款 金銭債権の貸倒れ」9-6-1・9-6-2・9-6-3
- 国税庁 質疑応答事例「破産手続の廃止決定等があった場合の貸倒損失」
- e-Gov法令検索「国税通則法」第23条第1項(更正の請求の期限)、第65条(過少申告加算税)
- 国税庁「No.9205 延滞税について」
- 国税庁「No.6165 前受金や前払金などがあるとき」「No.6355 課税売上げと課税仕入れ」(消費税の資産の譲渡等の時期)
- 企業会計基準委員会「企業会計原則・同注解」第二 損益計算書原則 一A、注解5(未収収益)、注解16(流動資産・固定資産の区分)
(いずれも2026年8月27日に内容を確認しています。個別の会計処理・税務処理は取引の実態で変わるため、実務にあたっては顧問税理士にご確認ください。)
回収が止まった未収金を、売却対象として確認する
長期滞留している売掛金・未収金は、買取で整理できる場合があります。債権の種類、件数、滞留期間をもとに概算可否を確認します。
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よくある質問
- Q. 未収金の計上は入金時ではなく発生時が正しいですか?
- A. はい。企業会計原則と法人税法第22条の2に基づき、役務提供完了または資産引渡しの時点で収益を計上します。入金の有無は計上時期に影響しません。
- Q. 年度またぎの未収金を翌期に入金処理する仕訳は?
- A. 翌期に入金されたら「借方:普通預金/貸方:未収入金」で消し込みます。前期に収益計上済みのため、翌期に売上を二重計上しないよう注意してください。
- Q. 現金主義で処理すると税務上どんな問題がありますか?
- A. 決算期末の未収金を計上しないと、収益の繰延べとして税務調査で否認される可能性があります。追徴課税や過少申告加算税の対象になり得ます。
- Q. 年度をまたいだ未収金が回収不能になった場合はどうしますか?
- A. 法人税基本通達9-6-1から9-6-3の要件を満たせば、貸倒損失として損金算入できます。回収不能の事実を証明する書類の保存が必要です。