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不渡り発生、次の一手は

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後日手形・電子記録債権の未回収対策

手形債権や電子記録債権(でんさい)が不渡り・支払不能となった場合の対処法を解説。不渡処分制度、でんさいネットの支払不能処分、債権者が取るべき回収手段と会計処理のポイントをまとめました。

取引先からの支払いを手形や電子記録債権(でんさい)で受けている場合、支払期日に決済されないリスクが存在します。手形の不渡りやでんさいの支払不能は、債権者にとって資金繰りに直結する重大な問題です。

本記事では、手形債権と電子記録債権の未回収が発生した場合の対処法について、不渡処分制度の仕組みから債権者が取るべき具体的な回収手段、会計・税務上の処理まで解説します。

手形の不渡りと対応

不渡りの種類と処分制度

手形が支払期日に決済されないことを「不渡り」といいます。不渡りには「0号不渡り」「1号不渡り」「2号不渡り」の3種類があります。

0号不渡りは、形式的な不備(記載事項の誤りなど)や呈示期間経過後の呈示によるもので、信用に関わる不渡りとは区別されます。1号不渡りは、資金不足や取引なし(当座預金口座が存在しない)を理由とするもので、振出人の信用に関わる不渡りです。2号不渡りは、偽造・変造、詐取などを理由とするものです。

手形交換所の規則により、6か月以内に2回の1号不渡りを出した者は、銀行取引停止処分を受けます。この処分を受けると、当座預金取引と貸出取引が2年間停止されるため、事実上の倒産に至るケースが多いのが実態です。

不渡手形の回収手段

手形が不渡りとなった場合の回収手段は段階的に検討します。まずは振出人との直接交渉により、分割払いや担保提供による回収を試みます。

交渉で解決しない場合、手形訴訟を提起する方法があります。手形訴訟は民事訴訟法第350条以下に定められた特別な訴訟手続きで、書証のみによる審理が行われるため、通常訴訟よりも迅速に判決を得ることができます。裁判手続きの種類と使い分けもあわせて確認してください。

裏書人がいる場合は、遡求権の行使も検討します。手形法第43条に基づき、裏書人に対して手形金額、利息、費用の支払いを求めることが可能です。ただし、遡求権の行使には所定の期間内に拒絶証書を作成するか、または手形面上に「拒絶証書不要」の記載がある必要があります。

電子記録債権(でんさい)の支払不能と対応

でんさいネットの支払不能処分制度

全国銀行協会が運営する「でんさいネット」では、支払期日に債務者の決済口座から自動的に引き落としが行われます。口座残高が不足している場合、支払不能として処理されます。

でんさいネットの業務規程に基づき、6か月以内に2回の支払不能が発生した場合、当該利用者に対して2年間の利用停止処分が行われます。これは手形の不渡処分に相当する制度設計となっています。

支払不能発生時の債権者の対応

でんさいの支払不能が発生した場合、電子記録債権の効力自体は消滅しません。債権者は引き続き債務者に対する支払請求権を有しています。

まず、でんさいネットを通じた再請求を行います。それでも回収できない場合は、電子記録債権に基づく民事訴訟の提起や、債務者の財産に対する強制執行の申立てを検討します。

なお、電子記録債権は譲渡記録により第三者に譲渡されている場合があります。この場合、人的抗弁の切断(電子記録債権法第20条)の適用があるため、善意の譲受人に対して債務者は原因関係上の抗弁を対抗できない点に留意が必要です。

未回収手形・でんさいの会計処理

不渡手形への振替

手形が不渡りとなった場合、受取手形勘定から「不渡手形」勘定(または「破産更生債権等」)に振り替えます。BSの流動資産から投資その他の資産へ区分を変更することで、流動資産の過大表示を防ぎます。

貸倒引当金の計上と貸倒損失

不渡りの原因が債務者の資金不足である場合、回収可能性を個別に評価し、貸倒引当金の計上を検討します。法人税法上は、法人税基本通達9-6-1から9-6-3に定める要件に該当すれば、貸倒損失として損金算入が認められます。

具体的には、債務者が法的整理手続き(破産手続き、民事再生手続き等)に入った場合は通達9-6-1(法律上の貸倒れ)、債務者の資力喪失により全額が回収不能と明らかになった場合は通達9-6-2(事実上の貸倒れ)の適用を検討します。

手形廃止の潮流と今後の対応

近年、経済産業省と公正取引委員会は約束手形の利用廃止に向けた取り組みを推進しています。下請代金支払遅延等防止法(下請法)の運用基準においても、手形サイトの短縮化が求められており、60日を超える手形サイトは不当な下請代金の支払遅延として問題視される傾向が強まっています。

こうした手形廃止の潮流のなか、電子記録債権(でんさい)への移行が進んでいます。でんさいは手形と同様の決済機能を持ちつつ、紛失・盗難のリスクがなく、分割譲渡が可能で、印紙税が不要というメリットがあります。現在手形で決済を行っている取引先がある場合は、でんさいへの切り替えを検討する価値があります。

ファクタリング売掛債権の譲渡による資金化)も、手形割引に代わる資金調達手段として利用が拡大しています。償還請求権なし(ノンリコース)のファクタリングを利用すれば、債務者の信用リスクをファクタリング会社に移転できるため、手形の不渡りリスクを負わずに債権の早期資金化が可能です。

未回収リスクの予防策

手形やでんさいの未回収リスクを軽減するためには、受取時点での与信管理が重要です。手形の振出人やでんさいの債務者の信用力を事前に確認し、信用力の低い先からの手形受取りは回避するか、取引条件を現金決済に変更する交渉を行います。

信用調査会社の評点や、自社の取引実績に基づくスコアリングを活用し、取引先ごとに受入れ可能な手形・でんさいの上限額を設定する運用も有効です。特定の取引先に対する手形・でんさいの残高が過度に集中している場合は、倒産時の影響が大きくなるため、残高の分散を意識した管理が求められます。

まとめ

回収可能性が低いと判断した時点で、未収債権の買取(売却)の活用も並行検討してください。回収を粘るほどに価値は目減りするため、整理判断は早いほど有利です。

手形・電子記録債権の未回収対策

  • 不渡りや支払不能が発生したら直接交渉を優先し、困難な場合は手形訴訟や強制執行に段階的に移行する
  • でんさいの支払不能でも電子記録債権の効力は消滅せず、法的に請求権を行使できる
  • BS上の適切な区分変更と貸倒引当金・貸倒損失の計上を速やかに検討する

手形・でんさいの不渡り対応や差押え手続きについて確認事項がある場合は、無料相談からお問い合わせください。

よくある質問

Q. 電子記録債権(でんさい)の支払不能処分とは何ですか?
A. でんさいネットにおいて、支払期日に債務者の口座残高が不足し支払いが行われなかった場合、支払不能として処理されます。6か月以内に2回の支払不能が発生すると、当該債務者はでんさいネットの利用が2年間停止される取引停止処分を受けます。これは手形の不渡処分に相当する制度です。
Q. 手形が不渡りになった場合、どのように回収すればよいですか?
A. 手形の不渡りが発生した場合、まず振出人に対する直接の請求を行います。約束手形の場合、振出人に対する手形金請求権のほか、裏書人がいれば遡求権を行使して裏書人に対しても請求できます(手形法第43条)。任意の交渉で回収できない場合は、手形訴訟(民事訴訟法第350条以下)の提起を検討します。
Q. 電子記録債権は手形と比べてどのようなメリットがありますか?
A. 電子記録債権は、紛失・盗難のリスクがない、分割譲渡が可能、印紙税が不要(2026年3月現在の取扱い)、ペーパーレスで管理コストが低い、といったメリットがあります。全国銀行協会が運営する『でんさいネット』が主要なプラットフォームです。
Q. 電子記録債権の消滅時効は何年ですか?
A. 電子記録債権の消滅時効は3年です(電子記録債権法第23条)。手形の時効(約束手形の振出人に対する権利は3年、裏書人に対する遡求権は1年)とは別の法律で規定されています。時効期間内に訴訟提起などの措置を講じないと、債権が消滅します。

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