業種別の追加保証枠を使う
セーフティネット保証5号の申請方法と認定要件|対象業種・売上5%減基準・市区町村申請の手順
セーフティネット保証5号の対象業種一覧、認定要件(売上5%以上の減少基準)、市区町村への5号認定申請から信用保証協会の別枠保証(最大2.8億円)で融資を受けるまでの手順を実務ステップで整理しました。
売上が減少して資金繰りが厳しくなったとき、すでに保証付き融資の枠を使い切っている企業は追加の融資を受けにくい状況に陥ります。こうした事態に対応するために設けられているのが、セーフティネット保証制度です。
セーフティネット保証5号は、全国的に業況が悪化している業種に属する中小企業を対象に、通常の保証限度額とは別枠で信用保証を行う制度です。中小企業信用保険法第2条第5項第5号に基づき、中小企業庁が四半期ごとに指定業種を更新しています。本記事では、対象業種の確認方法、3つの認定要件(イ・ロ・ハ)、市区町村への認定申請から信用保証協会の保証付き融資を受けるまでの手順を、公的情報をもとに実務ベースで解説します。
セーフティネット保証5号の制度概要
5号保証の位置づけ
セーフティネット保証制度は1号から8号まであり、それぞれ対象とする事由が異なります。5号は「全国的に業況が悪化している業種」を対象とする制度で、特定の取引先の倒産や災害といった個別事情ではなく、業種全体の不振を理由に保証を受けられる点が特徴です。
通常の保証限度額(一般保証枠: 普通保証2億円・無担保保証8,000万円)とは別枠で、同額の保証を追加で利用できます。つまり、一般保証枠を使い切っている企業でも、5号認定を受ければ別枠で普通保証2億円・無担保保証8,000万円の保証付き融資を申し込めます。
保証割合は80%です。中小企業信用保険法に基づく一般的な責任共有制度のもとで、信用保証協会が80%を保証し、金融機関が20%のリスクを負担します。なお、5号の保証割合は平成30年4月1日に100%から80%へ変更されており、過去の100%保証を前提にした情報には注意が必要です。信用保証協会の活用ガイドで保証制度全体の仕組みを解説しているので、保証付き融資になじみのない方はあわせてご確認ください。
責任共有制度とは
責任共有制度は、信用保証協会と金融機関が貸し倒れリスクを分担する仕組みです。保証割合80%の融資では、万一返済が滞った場合、信用保証協会が80%、金融機関が20%を負担します。金融機関にもリスクが残るため、認定を受けても金融機関の与信審査は通常どおり行われます。
1号から8号までの違い
セーフティネット保証は、何が原因で経営が不安定になっているかによって号が分かれています。自社の状況がどの号に当てはまるかを把握しておくと、5号以外の制度との併用も検討しやすくなります。
| 号 | 対象となる主な事由 | 保証割合 |
|---|---|---|
| 1号 | 大型倒産(連鎖倒産防止) | 100% |
| 2号 | 取引先企業のリストラ等による事業活動の制限 | 100% |
| 3号 | 突発的災害(事故等) | 100% |
| 4号 | 突発的災害(自然災害等) | 100% |
| 5号 | 業況の悪化している業種(全国的) | 80% |
| 6号 | 取引金融機関の破綻 | 100% |
| 7号 | 金融機関の経営合理化に伴う金融取引の調整 | 80% |
| 8号 | 整理回収機構への債権譲渡 | 80% |
5号と混同しやすいのが4号です。4号は地震や台風などの自然災害を理由とし、保証割合は100%、認定要件は売上高が前年同期比20%以上の減少です。これに対して5号は業種全体の不振を理由とし、保証割合は80%、売上高要件は5%以上の減少と、より幅広い企業が対象になります。両者の違いは記事後半の併用の項目でも整理します。
対象業種の確認方法
5号の指定業種は、中小企業庁が四半期ごとに見直しを行い、官報で告示します。指定業種リストは中小企業庁のWebサイト(「セーフティネット保証5号の対象業種」ページ)で公開されており、日本標準産業分類の細分類番号で記載されています。令和7年4月1日以降は、日本標準産業分類(令和5年改定版)の細分類を基準として指定が行われています。
自社がどの業種番号に該当するかは、総務省の「日本標準産業分類」で確認できます。会社の登記簿に記載された事業目的ではなく、実際に営んでいる事業の内容で判定します。複数の事業を営んでいる場合は、売上高構成比の最も高い事業の業種番号で判断するのが一般的です。
指定業種は四半期ごとに見直され、官報告示で更新されます。指定期間(たとえば7月1日から9月30日まで)ごとに対象業種が入れ替わり、期の途中でも追加・削除されることがあります。前期に対象だった業種が今期は外れている場合もあるため、申請前には必ず申請時点で有効な最新の指定業種リストを確認してください。
業種番号がわからない場合
市区町村の商工担当課や商工会議所の窓口に相談すると、自社の業種番号を特定する手助けをしてもらえます。認定申請の窓口と同じ場所であることが多いため、業種番号の確認と申請を一度の訪問で済ませることもできます。
兼業(指定業種と非指定業種の併業)の取り扱い
指定業種と指定業種以外の事業を兼業している場合は、特別な要件で判定します。具体的には、直近3か月における指定事業の売上高等が企業全体の売上高等の5%以上を占めていることが前提となり、そのうえで企業全体と指定事業それぞれの売上高等が認定要件を満たす必要があります。指定事業の比率が小さい場合は、企業全体ではなく指定事業に着目した算定が求められるため、申請前に窓口で兼業の判定方法を確認しておくと安心です。
認定要件(イ・ロ・ハの3類型)
3つの認定類型
セーフティネット保証5号の認定には、イ(売上高要件)、ロ(原油高要件)、ハ(利益率要件)の3つの類型があります。いずれも前提として、指定業種に属する事業を行っていることが必要です。多くの中小企業が利用するのはイの類型ですが、原油・原材料の高騰や利益率の悪化が課題になっている企業は、ロやハでの申請も選択肢になります。
| 類型 | 着目する指標 | 主な要件 |
|---|---|---|
| イ(売上高要件) | 売上高等 | 最近3か月間の売上高等が前年同期比で5%以上減少 |
| ロ(原油高要件) | 原油等の仕入価格 | 製品等原価に占める原油等の割合が20%以上で、仕入価格が20%以上上昇しているのに価格転嫁できていない |
| ハ(利益率要件) | 売上高営業利益率 | 最近3か月間の月平均売上高営業利益率が前年同期比で20%以上減少 |
イの認定要件は「最近3か月間の売上高等が前年同期比で5%以上減少していること」です。申請時点での直近3か月と前年同期の3か月を比較し、売上高が5%以上落ちていれば要件を満たします。3類型のなかで最も判定がわかりやすく、利用件数も多い類型です。
ロの認定要件は、製品等原価のうち原油等が占める割合が20%以上であり、その原油等の仕入価格が20%以上上昇しているにもかかわらず、製品価格等に十分転嫁できていないことです。エネルギーや原材料のコスト上昇が利益を圧迫している企業向けの類型です。
ハの認定要件は「最近3か月間の月平均売上高営業利益率が前年同期比で20%以上減少していること」です。売上高そのものは大きく落ちていなくても、コスト増などで利益率が悪化している企業は、イではなくハで要件を満たせる場合があります。売上高営業利益率は「営業利益 ÷ 売上高 × 100」で計算します。
どの類型で申請すべきか
売上自体が前年同期比で5%以上落ちているならイ、原油・原材料の高騰で価格転嫁が追いつかないならロ、売上は維持できていても利益率が悪化しているならハ、という整理が目安になります。複数の要件を満たす場合は、計算しやすく証憑をそろえやすい類型を選ぶと申請がスムーズです。
創業者・業歴の浅い企業の特例
前年同期との比較を行うイの要件は、前年同期に事業を行っていない創業間もない企業には、そのままでは適用できません。そのため創業者向けに、業歴に応じた別の算定方法が用意されています。たとえば、最近3か月の売上高を直近の数か月平均や創業時の状況と比較する方式などです。具体的にどの様式を使うかは業歴によって分かれるため、認定申請書の様式を確認するか、市区町村の窓口で自社に合う算定パターンを確認してください。
売上高減少の計算例
たとえば飲食業(指定業種に該当する場合)を営む企業で、直近3か月(2026年1月~3月)の売上高合計が900万円、前年同期(2025年1月~3月)の売上高合計が1,000万円だった場合、減少率は10%で要件を満たします。
減少率の計算式は「(前年同期売上高 - 直近3か月売上高)÷ 前年同期売上高 × 100」です。この例では「(1,000万円 - 900万円)÷ 1,000万円 × 100 = 10%」となります。
減少率の計算では、消費税の扱いをそろえることも大切です。税抜・税込のどちらで集計するかを直近3か月と前年同期で統一しておかないと、見かけ上の減少率がずれてしまいます。会計ソフトの月次推移表を使う場合は、出力条件をそろえてから比較してください。
認定申請の手順
申請先は事業所所在地の市区町村
認定申請は、信用保証協会や金融機関ではなく、原則として事業所の所在地を管轄する市区町村(特別区を含む)の商工担当課に行います。法人の場合は登記上の住所地または事業実体のある事業所の所在地、個人事業主の場合は事業実体のある事業所の所在地が窓口の基準です。複数の市区町村に事業所がある場合は、どの窓口に申請すべきかを事前に確認しておくと迷いません。
窓口申請と電子申請
申請方法には、市区町村の窓口に書類を持参する窓口申請のほか、自治体によっては郵送申請や電子申請に対応している場合があります。電子申請は、自治体が用意する電子申請システムやGビズIDなどを利用する形が一般的です。来庁の手間を省けますが、対応状況や予約の要否は自治体ごとに異なります。窓口の混雑時には予約制をとっている自治体もあるため、申請前に管轄市区町村のWebサイトで受付方法を確認してください。
申請から融資実行までの流れ
対象業種の確認
中小企業庁のWebサイトで最新の指定業種リストを確認し、自社の業種番号が含まれているかを確認します。
認定申請書の作成
市区町村が用意する認定申請書に、売上高の比較データ(直近3か月 vs 前年同期)を記入します。必要書類をそろえます。
市区町村の窓口に申請
事業所の所在地を管轄する市区町村の商工担当課に認定申請書を提出します。審査期間は概ね即日から数日です。
認定書の交付
認定要件を満たしていれば、市区町村長名の認定書が交付されます。有効期限は認定日から30日間です。
金融機関に融資申込み
認定書を持参して金融機関(銀行・信用金庫等)に保証付き融資を申し込みます。金融機関の与信審査と保証協会の保証審査が行われます。
保証承諾・融資実行
保証協会が保証を承諾すると、金融機関から融資が実行されます。
必要書類
認定申請時に必要な書類は市区町村によって多少異なりますが、一般的に以下が求められます。
認定申請書(市区町村所定の様式・通常2部)、売上高の減少を証明する書類(月次試算表・売上台帳・確定申告書の写しなど)、法人の場合は登記簿謄本(履歴事項全部証明書)、事業実態を確認できる書類(許認可証・営業証明書など)です。様式は申請する類型(イ・ロ・ハ)や業歴によって分かれているため、自社の状況に合った様式を選んで作成します。
売上高の証明は月次の試算表が最も確実です。会計ソフトから出力した月次推移表を印刷して持参すれば、窓口でスムーズに処理されます。指定業種と非指定業種を兼業している場合は、事業ごとに売上を区分した資料を求められることがあります。
標準処理期間
認定書が交付されるまでの標準処理期間は、自治体や時期によって幅がありますが、窓口での書類確認に不備がなければ即日から数日程度が目安です。記載内容や添付書類に不足があると差し戻しになり、その分だけ交付が遅れます。売上の集計期間や減少率の計算式を申請前に確認し、証憑をそろえてから窓口に向かうと、やり直しを避けられます。
認定書の有効期限に注意
認定書の有効期限は認定日から30日間です。認定を受けてから金融機関に申し込むまでに時間がかかると、有効期限切れで再申請が必要になります。認定申請と並行して金融機関との事前相談を進めておくと、スケジュールに余裕が生まれます。
5号保証の活用ポイントと注意点
一般保証枠との使い分け
セーフティネット保証5号で調達した融資は、一般保証枠とは別の勘定で管理されます。一般保証枠が残っている場合は、まず一般保証枠を使い切ってからセーフティネット保証を利用するか、両方を組み合わせて調達額を最大化するか、金融機関と相談して決めるのが現実的です。
別枠であることの最大のメリットは、一般保証枠の利用可能額に影響しないことです。一般保証枠で8,000万円の融資を受けている企業でも、5号認定を受ければ追加で8,000万円(無担保)の保証付き融資を申し込める計算になります。
4号との違いと併用
5号と4号は別枠の保証制度なので、両方の要件を満たす場合は併用できます。たとえば、自然災害の影響で4号認定を受けた企業が、さらに業種全体の業況悪化で5号認定も受けることが可能です。それぞれの別枠保証を使い分けることで、調達の幅が広がります。
両者は要件と保証割合が異なります。4号は地震・台風などの自然災害を理由とし、売上高が前年同期比で20%以上減少していることが要件で、保証割合は100%です。5号は業種全体の不振を理由とし、売上高要件は5%以上の減少と緩やかですが、保証割合は80%にとどまります。どちらの認定を狙うかは、自社の置かれた状況と、対象業種・指定地域に該当するかどうかで判断します。
ただし、過度な借入は返済負担の増大につながります。資金繰り改善の即効性のある対策で紹介している資金繰り改善策も検討し、借入以外の手段と組み合わせた総合的な対策を立ててください。
よくある失敗と注意点
5号の申請では、制度の理解不足から手戻りが生じることがあります。次の点に注意すると、無駄なやり直しを避けられます。
申請でつまずきやすいポイント
- 申請時点で自社の業種が指定から外れていた(四半期ごとに対象業種が入れ替わるため、前期の情報のまま申請してしまう)
- 業種番号を登記上の事業目的で判断し、実際の事業内容と一致していなかった
- 税抜・税込の集計をそろえず、売上の減少率がずれていた
- 認定書を取得したまま30日を過ぎ、有効期限切れで再申請になった
- 認定を受ければ必ず融資が下りると考え、金融機関の審査対策をしていなかった
特に多いのが、認定とその後の融資審査を切り離して考えていなかったケースです。認定は申請の入口にすぎず、金融機関と信用保証協会の審査はそのあとに控えています。認定申請と並行して、融資の使い道や返済計画を準備しておくことが大切です。
審査のポイント
5号認定はあくまで保証の前提条件であり、認定を受けたからといって自動的に融資が実行されるわけではありません。金融機関の与信審査と信用保証協会の保証審査を通過する必要があります。
審査で重視されるのは、返済能力の見通しです。売上が減少している状態で追加融資を受ける以上、「この融資で何をして、どう回復するのか」を説明できる事業計画が求められます。資金使途が運転資金であっても、キャッシュフローの改善見通しを示す月次の資金繰り表を用意しておくと、審査がスムーズに進みます。銀行融資の基本では融資審査で見られるポイントを解説しています。
まとめ
この記事のポイント
- セーフティネット保証5号は、業況悪化業種に属する中小企業が通常の保証枠とは別枠(普通保証2億円・無担保保証8,000万円)で保証付き融資を受けられる制度で、保証割合は80%
- 認定要件はイ(売上高5%以上減少)・ロ(原油高)・ハ(売上高営業利益率20%以上減少)の3類型
- 指定業種は四半期ごとに見直されるため、申請時点の最新リストを必ず確認する
- 認定申請は事業所所在地の市区町村に行い、認定書の有効期限は認定日から30日間
- 認定は融資実行の保証ではなく、金融機関と保証協会の審査を通過する必要がある
売上が落ちている局面では、早めに資金を確保しておくことが事業継続の生命線になります。セーフティネット保証5号は、対象業種に該当すれば比較的利用しやすい制度です。まずは自社の業種が指定リストに含まれているかを確認し、該当する場合は速やかに市区町村の窓口に相談してください。
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よくある質問
- Q. セーフティネット保証5号の保証割合は何%ですか?
- A. 保証割合は80%です。融資額の80%を信用保証協会が保証し、残り20%は金融機関がリスクを負います(責任共有制度)。100%保証の1号から4号とはこの点が異なります。
- Q. 認定を受けたら必ず融資を受けられますか?
- A. 認定は保証の前提条件にすぎず、融資実行を保証するものではありません。認定を受けたうえで、金融機関の与信審査と信用保証協会の保証審査を通過する必要があります。
- Q. 対象業種の一覧はどこで確認できますか?
- A. 中小企業庁のWebサイトで四半期ごとに更新される指定業種リストを確認できます。業種は日本標準産業分類の細分類番号で指定されるため、自社の業種番号を確認したうえで照合してください。
- Q. セーフティネット保証5号と4号は併用できますか?
- A. 併用できます。4号(突発的災害)と5号(業況悪化業種)はそれぞれ別枠の保証制度です。両方の要件を満たす場合は、それぞれの保証枠を使って融資を受けることが可能です。
- Q. 認定書の有効期限はありますか?
- A. 認定書の有効期限は認定日から30日間です。この期間内に金融機関または信用保証協会に保証付き融資を申し込む必要があります。期限を過ぎた場合は再度認定申請が必要です。