保証料を払って個人保証を外す
経営者保証免除の新制度|保証料上乗せで個人保証なしの融資が可能に
保証料率の上乗せで経営者保証を外せる信用保証制度を解説。対象要件5つ、上乗せ保証料の計算、国の保証料補助(2027年3月末まで段階的に縮小)、日本公庫の経営者保証免除特例との使い分けを整理します。
中小企業の融資において、経営者の個人保証(経営者保証)は長年の慣行として続いてきました。会社が返済できなくなった場合に経営者個人の資産で返済を求められるこの仕組みは、事業承継や新規創業の障壁になっていると指摘されてきました。
2024年3月、信用保証料率の上乗せにより経営者保証を提供しないことを選択できる新制度が始まりました。保証料を追加で支払う代わりに、経営者個人の保証を外せる仕組みです。さらに2027年3月末までは国が上乗せ保証料の一部を補助するため、実質的な負担は軽減されています。本記事では制度の仕組み、対象要件、活用のポイントを解説します。
制度の仕組み
保証料上乗せで経営者保証を不要に
この制度は、[信用保証協会](/shikin-choutatsu/shinyo-hosho-kyokai-katsuyo/)の保証付き融資を利用する際に、通常の信用保証料に一定の料率を上乗せすることで、経営者保証の提供を不要にするものです。
上乗せされる保証料率は、事業者の財務状況に応じて2段階に設定されています。
| 区分 | 上乗せ保証料率 | 判定基準 |
|---|---|---|
| 区分1 | 0.25% | 法人と経営者の資産分離が一定程度できている |
| 区分2 | 0.45% | 上記以外 |
法人と経営者の資産分離とは、会社の資産と経営者個人の資産が明確に区別されている状態を指します。役員貸付金や経営者個人の資産を会社で使用している状態がないことが、区分1に該当する目安です。
国による保証料補助
制度開始から3年間(2027年3月末まで)は、上乗せ保証料の一部を国が補助します。これにより、事業者の実質的な追加負担が軽減されています。
補助は時限措置
国の保証料補助は2027年3月末までの保証申込が対象です。補助期間中に利用を検討することで、コスト面の負担を抑えられます。
経営者保証ガイドラインとの違い
経営者保証を外す手段としては、従来から経営者保証ガイドラインがありました。新制度との違いを整理します。
| 項目 | 経営者保証ガイドライン | 保証料上乗せ制度 |
|---|---|---|
| 性質 | 金融機関との任意の交渉 | 制度的に選択可能 |
| 要件 | 3要件の充足が必要 | 保証料の上乗せで利用可能 |
| 追加コスト | なし | 保証料0.25%または0.45%上乗せ |
| 対象 | 全ての融資 | 信用保証協会付き融資 |
ガイドラインでは、法人と経営者の資産分離、財務基盤の強化、適時適切な情報開示という3つの要件を満たす必要がありました。これらの要件を十分に満たせない企業にとって、保証料の上乗せという形でコストを負担することで保証免除を「選べる」のが新制度の意義です。
一方、ガイドラインの要件を満たしている企業は、保証料の上乗せなしに経営者保証を外せる可能性があります。まずガイドラインに基づく交渉を試み、それが難しい場合に新制度を活用するという順序が合理的です。
対象要件と申込手順
利用できる企業
信用保証協会の保証付き融資を利用できる中小企業者であれば原則として利用可能です。新規の融資だけでなく、既存の保証付き融資を借り換える際にも適用できます。
ただし、以下に該当する場合は利用が制限される場合があります。
- 過去に信用保証で代位弁済が発生し、未済の求償権がある場合
- 反社会的勢力に該当する場合
- 信用保証協会が別途定める除外要件に該当する場合
申込の流れ
申込は取引金融機関を通じて行います。
通常の保証付き融資の申込時に、経営者保証を不要とする旨を金融機関に伝えてください。金融機関が信用保証協会に保証申込を行い、審査の結果、保証料率(上乗せ分を含む)が決定されます。
新規融資でも借り換えでも、基本的な流れは同じです。決算書、事業計画書、試算表など通常の保証審査で必要な書類に加えて、追加の書類を求められることがあります。
活用のポイント
事業承継の準備として
経営者保証は事業承継の大きな障壁です。後継者が個人保証を引き継ぐことへの抵抗感から、承継そのものが頓挫するケースがあります。
本制度を利用して既存融資の経営者保証を外しておけば、事業承継時に後継者が保証を引き受ける問題を回避できます。2026年5月に施行される企業価値担保権制度と組み合わせることで、経営者保証に頼らない資金調達の体制を構築できます。創業間もない企業には、経営者保証を不要とするスタートアップ創出促進保証制度も活用できます。
コストと安心のバランス
保証料の上乗せはコスト増になりますが、経営者個人の資産リスクがなくなるメリットは大きいといえます。保証料0.25%の上乗せであれば、借入残高3,000万円の融資で年間7.5万円の負担増です。
経営判断のリスクを取りやすくなる、事業承継の障壁が下がるといった効果も含めて、コストに見合う価値があるかを判断してください。
粉飾決算は例外
保証料上乗せ制度で経営者保証を外していても、粉飾決算が判明した場合は経営者個人に求償が行われる可能性があります。適正な財務報告が前提です。
まとめ
経営者保証免除制度のポイント
- 保証料0.25%または0.45%の上乗せで、経営者保証なしの融資を制度的に選択できる
- 2027年3月末まで国が上乗せ保証料の一部を補助。活用するなら補助期間中が有利
- ガイドラインの3要件を満たせない企業でも、コスト負担で保証免除を選べるのが新制度の意義
- 既存融資も借り換えの形で適用可能。事業承継の準備として活用価値が高い
- 企業価値担保権(2026年5月施行)との組み合わせで、経営者保証に頼らない資金調達体制を構築できる
経営者保証の免除や資金調達について具体的なご相談がある方は、無料相談からお問い合わせください。
よくある質問
- Q. 経営者保証を外すのに追加費用はいくらかかりますか?
- A. 通常の信用保証料に0.25%または0.45%が上乗せされます。上乗せ幅は事業者の財務状況(法人と経営者の資産分離の状況等)に基づいて決まります。2027年3月末までは国が上乗せ分の一部を補助するため、実質負担はさらに軽減されます。
- Q. すべての中小企業が利用できますか?
- A. 信用保証協会の保証付き融資を利用できる中小企業者であれば、原則として利用可能です。ただし、過去に信用保証で代位弁済が発生しているなど、一定の除外要件があります。詳細は取引金融機関または信用保証協会にご確認ください。
- Q. 経営者保証ガイドラインとの違いは何ですか?
- A. 経営者保証ガイドラインは金融機関との交渉で保証を外す「任意の取り組み」ですが、本制度は保証料を上乗せすることで制度的に経営者保証を不要にできる仕組みです。ガイドラインの要件を満たせなかった企業でも、保証料上乗せにより保証免除を選択できます。
- Q. 既存の借入に遡って適用できますか?
- A. 既存の保証付き融資について、借り換えの形で新制度を適用することは可能です。その場合は改めて保証申込が必要になります。取引金融機関を通じて信用保証協会に相談してください。