個人保証なしで借りる時代へ
経営者保証なし融資の広がり|保証免除の条件
経営者保証に依存しない融資慣行の現状と、保証免除を実現するための条件を解説。経営者保証ガイドラインの内容や、金融機関との交渉で押さえるべきポイントをまとめました。
中小企業の融資において、経営者個人が連帯保証人になる慣行は長年にわたって定着してきました。しかし、この慣行は経営者のリスクテイクを阻害し、事業承継の障壁にもなっているとして、近年は「経営者保証に依存しない融資」の普及が進んでいます。
2014年2月に適用が開始された「経営者保証に関するガイドライン」(日本商工会議所・全国銀行協会共同策定)を皮切りに、2023年4月には信用保証協会でも経営者保証を不要とする保証制度が創設されるなど、制度面の整備が加速しています。本記事では、経営者保証なし融資の現状と、保証免除を実現するための条件を解説します。
経営者保証ガイドラインの3要件
経営者保証ガイドラインでは、金融機関が経営者保証なしの融資を検討する際の判断基準として、3つの要件を示しています。
第一に「法人と経営者の関係の明確な区分・分離」です。法人の事業活動に必要な資産が経営者個人の資産と混同されていないことが求められます。具体的には、社有車を私的利用していないか、法人口座から経営者個人の支出が行われていないか、役員借入金・役員貸付金が適正に管理されているかなどが確認されます。
第二に「財務基盤の強化」です。法人のみの資産・収益力で返済が可能であること、つまり経営者の個人保証に頼らなくても融資の回収が見込めるだけの財務体質を備えていることが求められます。銀行融資の審査基準で解説しているとおり、自己資本比率や債務償還年数が判断材料となります。自己資本比率や債務償還年数などの指標が判断材料になります。
第三に「財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示」です。税理士や公認会計士による関与のもとで決算書が作成されていること、金融機関に対して定期的に試算表や資金繰り表を提出していることなど、情報開示の姿勢が評価されます。
保証免除の実現に向けた実務的な取り組み
ガイドラインの3要件を満たすためには、具体的な財務改善と社内管理体制の整備が必要です。
法人と個人の区分・分離については、まず役員貸付金の解消が最優先です。役員貸付金が残っている場合、金融機関は「法人と個人の資産が未分離」と判断する可能性が高く、保証免除の交渉が難航します。役員貸付金の返済計画を策定し、計画的に解消を進めてください。
財務基盤の強化については、自己資本比率の改善と借入金の適正化が柱になります。利益の内部留保による資本の積み上げ、不要資産の売却によるBSのスリム化、借換による返済条件の最適化など、中長期的な取り組みが求められます。
情報開示の充実については、月次で試算表を作成し金融機関に提出する体制を構築することが基本です。年に1回の決算報告だけでなく、四半期ごとの業績報告や、経営計画の進捗報告を自主的に行う企業は、金融機関からの信頼を得やすい傾向にあります。
信用保証協会の経営者保証免除制度
2023年4月から、信用保証協会において経営者保証を不要とする新たな保証制度「経営者保証免除対応確認制度」が開始されました。信用保証協会の保証制度全般については別記事で詳しく解説しています。
この制度では、所定の確認書類を提出し、法人と経営者の一体性が解消されていると認められた場合に、経営者保証なしでの保証付き融資が可能になります。従来はガイドラインに基づく金融機関の個別判断に委ねられていましたが、保証協会としての制度化により、より明確な基準のもとで保証免除が判断されるようになりました。
保証料率の変動に注意
保証料率は経営者保証ありの場合と比べて上乗せされる場合があります。保証免除による経営者個人のリスク軽減と、保証料率の上昇による資金調達コストの増加のバランスを考慮して判断してください。
金融機関との交渉で押さえるべきポイント
経営者保証の免除を金融機関に申し出る際は、ガイドラインの3要件を満たしていることを客観的な資料で示すことが重要です。
具体的には、役員貸付金・借入金の残高がゼロであること(または解消計画があること)を示す資料、自己資本比率や債務償還年数の推移を示す資料、月次試算表の提出実績、税理士・公認会計士の関与状況を示す書面などを準備して交渉に臨みます。
交渉のタイミングとしては、新規融資の申込み時や既存融資の借換時が適切です。決算内容が改善した直後であれば、より説得力のある交渉ができます。金融機関も経営者保証の解除に向けた社内ルールを整備しつつありますので、率直に相談することが重要です。
まとめ
要点
- 経営者保証なし融資は着実に普及が進んでおり、ガイドラインの3要件を満たせば保証免除を実現できる可能性がある
- 法人と個人の資産分離・財務基盤の強化・情報開示の充実に継続的に取り組むことが保証免除への確実な道筋
- 事業承継時には「特則」を活用して前経営者と後継者の二重保証を回避し、円滑な承継を実現する
経営者保証の解除や融資条件の見直しについて専門家への相談をご希望の場合は、無料相談からお問い合わせください。
よくある質問
- Q. 経営者保証ガイドラインとは何ですか?
- A. 2014年2月に適用開始された自主的なルールで、経営者保証に依存しない融資慣行の確立を目指すものです。法人と経営者の資産の分離、財務基盤の強化、経営の透明性確保の3要件を満たす企業に対して、金融機関は経営者保証なしの融資を検討するとされています。
- Q. 既に個人保証を提供している融資から保証を外すことはできますか?
- A. 既存融資の保証解除も交渉可能です。ガイドラインでは、経営者保証の見直しについても言及されており、要件を満たした企業が保証解除を申し出た場合、金融機関は誠実に対応することが求められています。借換の際に保証なしに切り替える方法もあります。
- Q. 経営者保証なし融資は実際にどの程度普及していますか?
- A. 金融庁の「民間金融機関における経営者保証に関するガイドラインの活用実績」によると、新規融資に占める経営者保証なし融資の割合は年々上昇しており、2024年度上半期には約4割に達しています。ただし、金融機関や地域によって対応にはばらつきがあります。
- Q. 事業承継の際に経営者保証はどうなりますか?
- A. 経営者保証ガイドラインの「特則」により、前経営者と後継者の二重保証を原則求めないとされています。後継者が保証を引き継がない形での事業承継も可能ですが、金融機関との個別交渉が必要です。