返済猶予の先にある出口戦略
コロナ融資の返済が厳しいときの対処法|借り換え・リスケの実務
ゼロゼロ融資の据置期間終了後に返済が難しくなった中小企業向けに、借換保証・リスケジュール・経営改善サポート保証など具体的な対処法を解説。2026年4月〜9月の返済最終ピークに備え、早期対応のポイントをまとめました。
コロナ禍で利用が急拡大した実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)。据置期間が終了し、元金の返済が始まった企業が増えています。東京商工リサーチによると、ゼロゼロ融資を利用した企業の倒産件数は2020年7月以降で累計2,280件に達しました(2026年2月時点)。
特に2026年4月から9月にかけて、コロナ借換保証を利用した企業の返済開始が最後のピークを迎えます。借換保証の利用企業のうち約8割は据置期間が2年以内であり、2024年前後に借り換えた企業が一斉に返済段階に入る時期です。
返済が厳しくなった場合でも、延滞する前に手を打てば選択肢は残されています。本記事では、コロナ融資の返済が困難になった中小企業が取れる具体的な対処法を整理します。
返済が厳しくなる原因を整理する
コロナ後の経営環境の変化
ゼロゼロ融資は据置期間中(最長5年)に元金の返済が不要だったため、借入時点では資金繰りが安定していました。しかし据置期間が終わって元金返済が始まると、毎月の返済額が一気に増加します。
この返済負担に加え、原材料費・エネルギー価格・人件費の上昇が収益を圧迫しています。コロナ禍からの売上回復が十分でない企業にとっては、増えた返済と増えたコストの二重の負担がのしかかっている状態です。
放置した場合のリスク
返済が滞ると、まず金融機関から督促が届きます。延滞が続くと「期限の利益の喪失」が通告され、残りの借入金全額を一括返済するよう求められます。
信用保証協会付き融資の場合、金融機関への返済が困難になると保証協会が代位弁済(金融機関に代わって返済)を行います。これ以降は保証協会に対して返済する立場になりますが、代位弁済の記録は新規融資の審査に長期間影響します。
延滞前の相談が最も重要
延滞してからではなく、返済が厳しくなりそうだと感じた段階で金融機関に相談してください。金融庁は金融機関に対し、事業者からの条件変更の相談に丁寧に対応するよう繰り返し要請しています。短期間で資金繰りを改善する具体策は資金繰り改善の即効対策10選を参照してください。
対処法1: リスケジュール(返済条件の変更)
リスケの仕組み
リスケジュール(リスケ)は、金融機関に対して返済条件の変更を申し出る方法です。返済額の減額、返済期限の延長、据置期間の設定などが含まれます。
リスケ自体は新たな融資ではなく、既存の借入条件を変更する手続きです。金融機関との協議で決まるため、法的手続きは不要です。ただし、リスケ中は原則として新規の融資を受けにくくなります。
リスケを申し出る際の準備
金融機関に相談する際には、現状の資金繰り表と、今後の改善計画を持参します。
- 直近6か月の資金繰り実績
- 今後12か月の資金繰り予測
- 返済条件変更後の返済シミュレーション
- 売上改善やコスト削減の具体策
「とにかく返済を猶予してほしい」だけでは金融機関の理解を得にくくなります。「いつまでに、どのように経営を改善し、正常返済に戻すか」を数字で示すことが交渉のポイントです。銀行交渉の進め方も参考にしてください。
対処法2: 借り換え保証制度の活用
コロナ借換保証の後継制度
コロナ借換保証は2024年6月末で申込受付が終了しましたが、類似の借り換え手段は残されています。
| 制度 | 保証割合 | 主な対象 |
|---|---|---|
| 小口零細企業保証 | 100% | 従業員20人以下(商業・サービスは5人以下) |
| 経営力強化保証 | 80% | 経営力強化計画を策定した中小企業 |
| 信用保証協会の一般保証 | 80% | 中小企業全般 |
借り換えにより、複数の借入を一本化して毎月の返済額を減らしたり、返済期間を延ばしたりできます。ただし、借り換えは借入総額が減るわけではなく、返済期間が延びる分だけ利息の総支払額が増える点には注意が必要です。
経営改善サポート保証
リスケ中であっても活用できるのが、経営改善サポート保証(経営改善・再生支援強化型)です。中小企業庁が取扱期限を2027年3月31日まで延長しています。
この制度の特徴は以下のとおりです。
- 信用保証協会の別枠で最大2億8,000万円まで保証
- 返済期間は最長15年
- 経営改善計画の策定と、金融機関への四半期ごとの進捗報告が条件
「リスケ中だから新規融資は無理」と諦める前に、この制度の利用可否を金融機関や保証協会に確認してください。経営改善計画の策定には、中小企業活性化協議会の無料支援も利用できます。
対処法3: 公的相談窓口の活用
相談先の一覧
コロナ融資の返済問題は、複数の公的機関で相談を受け付けています。
- 中小企業活性化協議会 — 全国47都道府県に設置。経営改善計画の策定支援を無料で実施。収益力改善支援から再生支援まで段階に応じた対応が可能
- よろず支援拠点 — 経営全般の相談窓口。資金繰りだけでなく、売上改善やコスト削減の助言も受けられる
- 日本弁護士連合会「ひまわりほっとダイヤル」 — 弁護士による無料相談。法的整理が視野に入る場合の初期相談に適する
- 金融機関の相談窓口 — 取引先の金融機関に直接相談。条件変更の申し出は窓口で受け付けている
相談は無料、早めが原則
中小企業活性化協議会やよろず支援拠点の相談は無料です。経営状態が悪化してから駆け込むよりも、資金繰りに不安を感じた段階で相談するほうが、取れる選択肢が多く残されています。
返済問題の出口戦略を考える
3つの段階で整理する
コロナ融資の返済問題は、企業の状況に応じて3つの段階で対処法が変わります。
軽度の段階であれば、リスケや借り換えで資金繰りを安定させ、本業の改善で正常返済に戻すことが現実的です。
中度の段階では、中小企業活性化協議会の支援を受けながら経営改善計画を策定し、事業の収益構造そのものを見直す必要があります。不採算事業の撤退、固定費の削減、販路の転換など、踏み込んだ改善策が求められます。
重度の段階、つまりリスケや経営改善では対処しきれない場合は、民事再生手続きによる法的整理や、廃業・事業譲渡の選択肢も検討する必要があります。廃業を選ぶ場合でも、経営者保証ガイドラインを活用すれば、一定の生活資産を手元に残せる場合があります。
リスケ慣れに注意する
返済猶予を何度も繰り返し、根本的な経営改善が進まない「リスケ慣れ」の状態に陥ると、金融機関との信頼関係が損なわれ、いざというときに支援を得にくくなります。
リスケはあくまで時間を確保するための手段であり、猶予期間中に売上改善やコスト構造の見直しを実行することが前提です。猶予期間の終了時に何が変わっているかを、具体的に計画してから申し出ることが重要です。
まとめ
コロナ融資返済対策のポイント
- 2026年4〜9月がコロナ借換保証の返済最終ピーク。早めの対応が選択肢を広げる
- 延滞する前に金融機関に相談する。リスケは資金繰り表と改善計画を持参して交渉
- コロナ借換保証は終了したが、小口零細企業保証・経営力強化保証での借り換えは可能
- リスケ中でも経営改善サポート保証(2027年3月末まで)で最大2億8,000万円の新規融資が利用できる
- 中小企業活性化協議会の無料支援を活用し、経営改善計画の策定に着手する
コロナ融資の返済や資金繰りについて具体的なご相談がある方は、無料相談からお問い合わせください。
よくある質問
- Q. ゼロゼロ融資の返済が厳しい場合、まず何をすべきですか?
- A. 取引金融機関に早めに相談してください。金融庁は金融機関に対し、事業者からの相談に丁寧に対応するよう要請しています。黙って延滞すると信用情報に傷がつきますが、事前にリスケジュール(返済条件の変更)を申し出れば、返済額の減額や据置期間の延長が認められる場合があります。
- Q. コロナ借換保証はまだ使えますか?
- A. コロナ借換保証は2024年6月末で申込受付が終了しました。ただし、100%保証の小口零細企業保証や80%保証の経営力強化保証など、別の保証制度を利用した借り換えは引き続き可能です。取引金融機関または信用保証協会に相談してください。
- Q. リスケジュール中でも新たな融資は受けられますか?
- A. 経営改善サポート保証(2027年3月末まで延長)を利用すれば、リスケ中でも信用保証協会の別枠で最大2億8,000万円までの新規融資が可能です。ただし、経営改善計画の策定と四半期ごとの進捗報告が条件です。
- Q. 返済を放置するとどうなりますか?
- A. 延滞が続くと期限の利益を喪失し、残債務の一括返済を求められます。信用保証協会付き融資の場合は代位弁済が行われ、以降は保証協会への返済になります。新規の融資審査にも長期間影響するため、延滞する前に金融機関へ相談することが重要です。