追徴課税の相場を最新データで把握する
追徴課税の相場は法人550万円・個人229万円|業種別ランキングと自社リスクの計算法
税務調査で追徴されるのはいくらか。令和5事務年度の国税庁統計では法人平均550万円、個人229万円、相続税859万円。業種別の申告漏れ所得ワースト10、本税・加算税・延滞税の内訳計算、追徴額を減らすための4つの実務対策を掲載。令和5年度の最新統計、業種別の追徴傾向、税理士関与による軽減事例まで実務的にまとめました。
税務調査の通知が届いたとき、多くの経営者が真っ先に気になるのは「もし指摘を受けたら、いくら払うことになるのか」という点でしょう。
結論から言えば、国税庁の令和5事務年度(2023年7月〜2024年6月)の統計によると、法人の1件あたり平均追徴税額は約550万円、個人の実地調査では1件あたり平均229万円です。ただし業種や申告漏れの規模によって数十万円から数千万円まで幅があり、「平均値」だけで自社のリスクを判断するのは危険です。
本記事では、最新の国税庁統計データをもとに法人・個人別の追徴課税の相場を整理し、業種別の申告漏れランキング、加算税の種類と税率、4つのケースによる計算シミュレーション、追徴課税を減らすためにできること、払えない場合の対応策まで一通り説明します。
追徴課税とは——本税と附帯税の構造を理解する
税務調査で追徴課税が発生するとき、実際に納付するのは「本税」だけではありません。追徴税額は本税(不足していた税額そのもの)と「附帯税」の合計で構成されます。
附帯税は加算税と延滞税の2つに分かれます。加算税は申告の誤りや懈怠に対するペナルティ的な性格を持ち、延滞税は納期限を過ぎたことに対する利息的な性格を持ちます(国税通則法60条・65条〜68条)。
| 区分 | 種類 | 課される場面 |
|---|---|---|
| 本税 | 不足税額 | 申告額が実際より少なかった場合 |
| 加算税 | 過少申告加算税 | 修正申告・更正により追加納税が生じた場合 |
| 加算税 | 無申告加算税 | 期限内に申告しなかった場合 |
| 加算税 | 重加算税 | 故意の隠蔽・仮装があった場合 |
| 附帯税 | 延滞税 | 本来の納期限から実際の納付日までの期間に応じて発生 |
経営者が「追徴課税はいくらになるのか」と考えるとき、その金額はこれら全部の合計です。本税だけを想定していると、実際の納付額が1.4〜1.8倍に膨らんで驚くことになります。
追徴課税の相場——令和5事務年度の最新統計
国税庁が2024年11月・12月に公表した令和5事務年度(2023年7月〜2024年6月)の調査実績から、法人・個人それぞれの追徴課税の水準を見ていきます。
法人の追徴課税の相場
令和5事務年度の法人税等の調査事績は次のとおりです。
| 項目 | 数値 | 前年比 |
|---|---|---|
| 実地調査件数 | 5万9千件 | -5.4% |
| 申告漏れ所得金額(総額) | 9,741億円 | +24.9% |
| 追徴税額(法人税・消費税合計) | 3,197億円 | -0.9% |
| 1件あたり追徴税額 | 約550万円 | +4.9% |
| 海外取引に係る申告漏れ所得金額 | 2,870億円 | +27.0% |
調査件数は前年より減少したにもかかわらず、申告漏れ所得金額は約25%増えています。これは国税庁がAIを活用した調査先の選定を本格化し、不正の可能性が高い法人に絞り込んで調査を行った結果とされています。
中小企業にとって1件あたり550万円という平均値は決して軽い数字ではありません。年商1億円未満の小規模法人であれば平均を下回る傾向がある一方、売上規模が大きいほど否認額も膨らむため、平均値だけで安心するのは禁物です。
個人事業主の追徴課税の相場
個人の所得税に関する調査実績は次のとおりです。
| 項目 | 数値 | 前年比 |
|---|---|---|
| 実地調査件数 | 4万8千件 | +4.3% |
| 調査等件数(簡易な接触含む) | 60万5,077件 | -5.1% |
| 申告漏れ所得金額(総額) | 9,964億円 | +10.2% |
| 追徴税額(総額) | 1,398億円 | +2.2%(過去最高) |
| 実地調査1件あたり追徴税額(所得税・消費税合計) | 229万円 | — |
注目すべきは、追徴税額の総額1,398億円が過去最高を記録した点です。AIによる効率的な調査先選定が功を奏し、調査件数は減っても1件あたりの「当たり率」が上がっています。
対象者の属性で追徴額は大きく変わる
同じ個人の実地調査でも、対象者の属性によって1件あたり追徴税額には大きな差があります。富裕層を対象にした調査では1件あたり707万円、海外投資等に関する調査では649万円、暗号資産等では662万円と、全体平均の229万円を大きく上回っています(国税庁・令和5事務年度公表資料)。相続税の実地調査にいたっては1件あたり859万円で、所得税の調査を大きく上回ります。
税目別・対象別の追徴税額比較
以下の表で、令和5事務年度における税目・対象別の追徴税額をまとめて確認できます。
| 税目・対象 | 1件あたり追徴税額 | 総追徴税額 |
|---|---|---|
| 法人税・消費税(実地調査) | 550万円 | 3,197億円 |
| 所得税・消費税(実地調査) | 229万円 | 1,398億円(過去最高) |
| 所得税・富裕層対象 | 707万円 | — |
| 所得税・海外投資等対象 | 649万円 | — |
| 所得税・暗号資産等対象 | 662万円 | — |
| 相続税(実地調査) | 859万円 | 857億円(過去最高) |
(出典:国税庁「令和5事務年度 法人税等の調査事績の概要」「令和5事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」「令和5事務年度 相続税の調査等の状況」)
業種別の申告漏れランキングと追徴額
「どの業種が税務調査で狙われやすいか」は、国税庁が毎年公表する申告漏れ所得金額の業種別ランキングからある程度読み取れます。令和5事務年度のデータを表にまとめます。
個人事業主——申告漏れ所得金額が高い上位業種
| 順位 | 業種 | 1件あたり申告漏れ所得金額 | 1件あたり追徴税額 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 経営コンサルタント | 3,871万円 | 1,040万円 |
| 2位 | ホステス・ホスト | 3,654万円 | — |
| 3位 | コンテンツ配信 | 2,381万円 | — |
| 4位 | くず金卸売業 | — | — |
| 5位 | ブリーダー | — | — |
| 6位 | 焼き鳥 | — | — |
| 7位 | 太陽光発電 | 1,625万円 | 119万円 |
(出典:国税庁「令和5事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」)
1位の経営コンサルタントは1件あたりの追徴税額が1,040万円と、全体平均229万円の約4.5倍に達しています。コンテンツ配信やくず金卸売業など、ここ数年で急速に市場が広がった業種が上位に入るのも特徴的です。
法人——申告漏れ所得金額が高い上位業種
個人事業主のランキングは以前から公表されてきましたが、令和5事務年度では法人税調査においても業種別の申告漏れ所得金額が注目されています。
| 順位 | 業種 | 1件あたり申告漏れ所得金額 |
|---|---|---|
| 1位 | その他の化学工業製造 | 1億991万円 |
| 2位 | 化粧品小売 | 6,927万円 |
| 3位 | 物品賃貸 | 6,034万円 |
| 4位 | 精密機械器具卸売 | 5,777万円 |
| 5位 | 映画サービス | 4,401万円 |
(出典:国税庁「令和5事務年度 法人税等の調査事績の概要」)
飲食業が不正割合のトップを占める一方、申告漏れ所得金額では製造業・卸売業・サービス業も上位に入っています。「自社は飲食業ではないから安心」という発想は危険で、業種を問わず適正な申告管理が求められます。
法人——不正割合が高い上位業種
| 順位 | 業種 | 不正割合 |
|---|---|---|
| 1位 | バー・クラブ | 59.0% |
| 2位 | その他の飲食 | 42.3% |
| 3位 | 外国料理 | 38.8% |
(出典:国税庁「令和5事務年度 法人税等の調査事績の概要」)
現金商売が中心の飲食業が上位を占めています。売上の計上漏れが発生しやすい業種は、調査対象に選ばれやすく、かつ重加算税が課される確率も高くなります。
業種別の調査リスクについては税務調査の確率は業種で違う?業種別データと狙われやすい特徴で詳しく解説しています。
加算税の種類と税率
追徴課税のうち、本税以外で大きな割合を占めるのが加算税です。4種類ありますが、同一の税額に対して複数が同時に課されることはなく、最も重いものが適用されます。
過少申告加算税(国税通則法65条)
期限内に申告を行ったものの、申告額が本来の税額より少なかった場合に課されます。税務調査で否認された場合の大半がこの類型です。
- 基本税率:不足税額の10%
- 基準額超過部分の税率:15%(50万円または期限内申告税額のいずれか多い金額を超える部分)
調査前に自主的に修正申告を提出した場合は、過少申告加算税が課されません(国税通則法65条5項)。調査の事前通知後でも、調査官が具体的な調査に着手する前であれば5%に軽減されます。
無申告加算税(国税通則法66条)
申告期限内に申告書を提出しなかった場合に課されます。
- 基本税率:15%(税務調査後の場合)
- 50万円超300万円以下の部分:20%
- 300万円超の部分:30%
- 調査前の自主申告:5%(軽減措置)
無申告加算税は令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する税目から、300万円超の部分に30%の税率が新設されました。無申告のペナルティは年々重くなっています。
重加算税(国税通則法68条)
故意に事実を隠蔽・仮装したうえで過少申告・無申告が行われた場合に課される、最も重い加算税です。
- 過少申告に代わる重加算税:35%
- 無申告に代わる重加算税:40%
- 加重措置:過去5年以内に重加算税・無申告加算税を課されたことがある場合はさらに10%加算
何が「隠蔽・仮装」に当たるかについては重加算税の要件と予防策で詳しく解説しています。
加算税の比較表
| 加算税の種類 | 基本税率 | 超過部分 | 適用条件 |
|---|---|---|---|
| 過少申告加算税 | 10% | 15% | 期限内申告後に修正・更正 |
| 無申告加算税 | 15% | 20%(300万円超は30%) | 期限内に無申告 |
| 重加算税(過少) | 35% | — | 隠蔽・仮装あり・過少申告 |
| 重加算税(無申告) | 40% | — | 隠蔽・仮装あり・無申告 |
加算税の計算方法をさらに詳しく知りたい方は、延滞税・加算税の計算方法もご覧ください。
延滞税の計算方法
延滞税は、本来の納期限の翌日から実際に納付した日まで、日割りで計算されます(国税通則法60条)。利率は毎年変わる「特例基準割合」に連動しています。
| 期間 | 原則税率 | 実際の適用(特例基準割合を反映) |
|---|---|---|
| 納期限から2ヶ月以内 | 年7.3% | 特例基準割合+1%のいずれか低い方 |
| 納期限から2ヶ月超 | 年14.6% | 特例基準割合+7.3%のいずれか低い方 |
税務調査の対象期間は通常3〜5年ですが、無申告や仮装・隠蔽が認められた場合は7年遡及されることがあります(国税通則法70条4項)。遡及期間が長いほど延滞税の計算期間も伸び、追徴額全体に占める延滞税の割合が大きくなります。
延滞税は3年遡及で数十万円になることがある
本税100万円の申告漏れが3年分指摘された場合、3年前の分については延滞税の計算期間が長期にわたり、延滞税だけで数十万円に達することがあります。追徴課税の総額を見積もるときは、延滞税の計算期間を確認してください。
追徴課税の計算シミュレーション——4つのケースで試算する
具体的な計算例で、追徴課税の総額がどう変わるか確認しましょう。延滞税は特例基準割合として2ヶ月以内7.3%・2ヶ月超14.6%(原則税率)を使用した概算です。
ケース1:過少申告(通常の申告誤り)
条件:法人税の売上計上漏れ300万円。過少申告加算税が適用。延滞税の計算期間は2年(約24ヶ月)。
| 項目 | 計算式 | 金額 |
|---|---|---|
| 本税 | — | 300万円 |
| 過少申告加算税(50万円以下の部分) | 50万円 × 10% | 5万円 |
| 過少申告加算税(50万円超の部分) | 250万円 × 15% | 37.5万円 |
| 延滞税(2ヶ月以内・概算) | 300万円 × 7.3% × 2/12 | 約3.6万円 |
| 延滞税(2ヶ月超22ヶ月・概算) | 300万円 × 14.6% × 22/12 | 約80.3万円 |
| 合計 | — | 約426万円 |
本税300万円が約1.4倍の426万円になります。加算税より延滞税の負担が大きい点に注目してください。
ケース2:重加算税(隠蔽・仮装あり)
条件:同じ300万円の申告漏れだが、売上の意図的な除外が認定された場合。
| 項目 | 計算式 | 金額 |
|---|---|---|
| 本税 | — | 300万円 |
| 重加算税 | 300万円 × 35% | 105万円 |
| 延滞税(概算・ケース1と同一) | — | 約83.9万円 |
| 合計 | — | 約489万円 |
重加算税が適用されると、過少申告加算税の場合と比べて約63万円の上乗せです。さらに重加算税が課されると調査期間が7年に延長される可能性があり、延滞税もさらに増えます。
ケース3:無申告(個人事業主で期限内に申告しなかった場合)
条件:所得税の申告漏れ500万円。無申告のまま税務調査を受けた場合。延滞税は3年分として概算。
| 項目 | 計算式 | 金額 |
|---|---|---|
| 本税 | — | 500万円 |
| 無申告加算税(50万円以下の部分) | 50万円 × 15% | 7.5万円 |
| 無申告加算税(50万円超300万円以下) | 250万円 × 20% | 50万円 |
| 無申告加算税(300万円超の部分) | 200万円 × 30% | 60万円 |
| 延滞税(概算・3年分) | — | 約150万円 |
| 合計 | — | 約768万円 |
無申告の場合は本税の1.5倍以上になることも珍しくありません。特に令和6年から300万円超の部分に30%の税率が適用されるようになったため、無申告のリスクは以前より格段に大きくなっています。
ケース4:経営コンサルタント(業界上位の申告漏れ水準)
上記のランキングで示したとおり、経営コンサルタントの1件あたり追徴税額の平均は1,040万円です。この水準を前提に、内訳の目安を逆算してみましょう。
条件:申告漏れ所得金額3,871万円(業種平均)、過少申告加算税が適用、本税率を約26.9%として試算。
| 項目 | 概算 |
|---|---|
| 本税(申告漏れ × 税率) | 約1,041万円 |
| 過少申告加算税(推定) | 約120〜160万円 |
| 延滞税(推定・2〜3年分) | 約150〜250万円 |
| 合計(推定) | 約1,300〜1,450万円 |
平均追徴税額1,040万円というのは本税に近い水準ですが、実際には加算税・延滞税が加わるため、最終的な納付額は1,300万円を超えるケースが多いと考えられます。
計算はあくまで概算
実際の延滞税は日割り計算で、特例基準割合も適用されるため、上記の計算は概算です。正確な金額は税務署または顧問税理士に確認してください。計算方法の詳細は延滞税・加算税の計算方法で解説しています。
自社の追徴リスクを簡易的に見積もる方法
「うちの会社に税務調査が入ったら、いくらになるか」を大まかに把握しておくことは、経営者にとって有益です。以下の手順で概算を出せます。
まず、過去3期分の決算書から「否認されそうな金額」を洗い出します。典型的な否認項目は、期ずれ(売上計上時期のずれ)、交際費の限度額超過、外注費と給与の区分誤り、棚卸資産の過少計上です。1期あたりの否認見込額が出たら、調査で遡及される3年分を掛けます。
次に、否認額に対する追加税額を計算します。法人税の実効税率(中小企業は約23%〜34%程度)を掛けると本税の概算が出ます。ここに過少申告加算税10%〜15%と延滞税(1年分で約5%〜8%程度)を加算した金額が、追徴課税の概算値です。
たとえば1期あたりの否認見込額が200万円、3年分で600万円の場合、本税は約180万円(実効税率30%で概算)、過少申告加算税は約22万円、延滞税は約20万円で、合計約222万円の追徴が見込まれます。万が一重加算税が適用されれば、加算税だけで63万円に跳ね上がり、合計は約263万円になります。
この概算値を[資金繰り表](/shikin-choutatsu/shikin-guri-hyou-tsukurikata/)に反映しておけば、調査の通知が届いた際に慌てずに済みます。
業種別に見た追徴課税のリスクと傾向
すべての業種・法人に同じリスクがあるわけではありません。国税庁は毎年「重点調査業種」を設定しており、一般的に追徴額が大きくなりやすいのは次のような特徴を持つ業種です。
現金商売が中心の業種は、売上の計上漏れが物理的に発生しやすいため、調査の対象に選ばれやすく、不正割合も高くなります。飲食業(バー・クラブ、焼き鳥、外国料理など)が法人の不正割合ランキングの上位を独占しているのはこのためです。
海外取引がある業種も追徴額が大きくなる傾向があります。令和5事務年度では、海外取引に係る法人の申告漏れ所得金額が2,870億円(前年比+27%)に達しました。移転価格税制や外国税額控除の適用誤りは1件あたりの否認額が大きくなりやすい特徴があります。
近年はインターネットを通じた収入——コンテンツ配信、暗号資産取引、シェアリングエコノミー——に関する調査も強化されています。個人の暗号資産等に関する調査では、1件あたり追徴税額が662万円と全体平均の約2.9倍です。
法人については、飲食業・サービス業だけでなく、製造業や卸売業も高額の申告漏れが発生しています。令和5事務年度では「その他の化学工業製造」が1件あたり1億991万円の申告漏れを記録しており、B2B取引が多い業種でも否認リスクは相応に存在します。
そのほか不動産業・建設業(棚卸資産・工事進行基準の問題)、医療・介護業(自由診療部分の売上計上漏れ)、IT・コンサルティング業(外注費と給与の区分問題)も追徴額が大きくなりやすい業種として知られています。
税務調査が入りやすい時期と頻度も参考に、自社のリスクを定期的に見直すことが予防につながります。
追徴課税を減らすためにできること
追徴課税の金額は、調査への備えと対応次第で変わります。「相場」を知ったうえで、不必要な加重を避けるために実務上押さえておくべきポイントを整理します。
調査前の自主的な修正申告
最も効果的なのは、調査の事前通知(国税通則法74条の9)を受ける前に修正申告を提出することです。この段階で自主的に修正すれば、過少申告加算税はゼロになります。
事前通知を受けた後でも、調査官が具体的な調査に着手する前であれば、過少申告加算税は5%に軽減されます。「通知が来たらすぐに帳簿を見直す」という行動が、追徴額を直接的に減らす手段になります。
具体的な準備手順は税務調査の事前準備チェックリストにまとめています。
調査当日の事実確認と反論
調査当日は、指摘事項に対して事実と異なる点があれば、証憑や帳簿を根拠に明確に反論することが重要です。指摘内容をすべて受け入れてしまうと、本来否認されるべきでない取引まで修正申告に含まれるリスクがあります。
特に重加算税の認定については、「隠蔽・仮装」の事実がないのに安易に認めてしまうと、35%の重加算税が課されるだけでなく、調査期間が7年に延長される可能性もあります。調査当日の対応については税務調査の対応方法を参照してください。
修正申告前の法令確認と不服申立て
修正申告書を提出する前に、指摘された各項目について法令・通達の根拠を確認してください。修正申告は納税者が自主的に行うものであり、いったん提出すると原則として取り消せません。
不服がある場合は、修正申告ではなく更正処分を受けたうえで、再調査の請求(税務署長あて)または審査請求(国税不服審判所あて)を行う選択肢があります(国税通則法75条)。
日常的な帳簿管理の徹底
追徴課税を「事後に減らす」よりも、「発生させない」ことが最善です。日常の帳簿管理で次の点を意識するだけでも、調査での否認リスクは大幅に下がります。
- 売上の計上基準を統一し、期ずれを防ぐ
- 経費の証憑(領収書・請求書)を取引ごとに整理・保管する
- 交際費・福利厚生費など否認されやすい勘定科目の基準を社内で明文化する
- 期末在庫の棚卸しを正確に行い、記録を残す
- 関連当事者との取引条件を第三者と同等に設定する
個人事業主の場合の具体的な対策は税務調査と個人事業主でも解説しています。
追徴課税が払えない場合の対応策
税務調査の結果、想定を超える追徴課税が課された場合、一括納付が困難なケースもあります。しかし追徴税額を無視し続けると差し押さえに発展するため、早期に対処することが不可欠です。
納税の猶予制度(国税通則法46条)
災害・病気・廃業・休廃業など一定の事由に該当する場合、最大1年間、分割納付が認められます。猶予期間中は延滞税が軽減または免除される場合があります。
申請に必要な主な書類は、納税の猶予申請書、財産収支状況書(財産・負債・収入・支出の状況)、事由を証明する書類(病気の場合は診断書など)、担保に関する書類(原則として担保の提供が必要)です。
換価の猶予制度(国税徴収法151条)
差し押さえ・売却(換価)を猶予する制度です。納税意思があり、分割納付を継続できる見込みがある場合に、税務署長の裁量で認められます。認められると、差し押さえを受けても財産の売却が一定期間止まり、分割で納付できるようになります。
分割納付の相談
猶予制度の要件を満たさない場合でも、税務署に事情を説明して分割納付の可否を相談できます。法律上の明文規定はないものの、実務上は柔軟に対応してもらえるケースがあります。
いずれの場合も、自己判断で放置するのが最もリスクの高い選択です。追徴税額が未納のまま放置されると督促状が届き、最終的には預金・売掛金・不動産の差し押さえに至ります。特に預金口座が差し押さえられると資金繰りに直接影響するため、追徴課税が確定した時点で速やかに税務署または税理士へ相談してください。
自己破産しても税金は免責されない
個人の場合、自己破産しても税金(国税・地方税)は非免責債権であり、免責の対象になりません(破産法253条1項1号)。法人の場合は法人自体が消滅するため税務上の債務も消えますが、連帯保証人になっている個人(代表者など)への請求は続きます。
追徴課税の相場と対応のポイント
- 法人の1件あたり平均追徴税額は約550万円、個人の実地調査では平均229万円(令和5事務年度・過去最高水準)
- 相続税調査では1件あたり859万円と、所得税・法人税を上回る水準になっている
- 業種によって追徴額は大きく異なる。経営コンサルタントの追徴税額は1件あたり1,040万円で全体平均の約4.5倍
- 法人では製造業・卸売業も高額の申告漏れが発生しており、「飲食業だけが対象」ではない
- 追徴課税は本税+加算税+延滞税の合計。無申告の場合は本税の1.5倍以上になることも
- 調査前の自主修正で過少申告加算税はゼロに。事前通知後でも着手前なら5%に軽減される
- 払えない場合は放置せず、納税の猶予(国税通則法46条)または換価の猶予(国税徴収法151条)を速やかに申請する
本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談に代わるものではありません。実際の税務処理や調査対応については、顧問税理士または税務の専門家にご相談ください。
よくある質問
- Q. 税務調査で追徴課税される平均金額はいくらですか?
- A. 国税庁の令和5事務年度データによると、法人の1件あたり平均追徴税額は約550万円(法人税・消費税合計)、個人の実地調査では1件あたり229万円(所得税・消費税合計)です。富裕層に限ると1件あたり707万円、相続税調査では859万円に達します。ただしこれは全体の平均であり、業種や申告漏れの規模によって数十万円から数千万円まで幅があります。
- Q. 追徴課税の金額は業種によってどれくらい違いますか?
- A. 令和5事務年度の個人事業主データでは、1件あたりの申告漏れ所得金額が最も大きいのは経営コンサルタント(3,871万円・追徴税額1,040万円)で、ホステス・ホスト(3,654万円)、コンテンツ配信(2,381万円)と続きます。法人では不正割合が高い業種としてバー・クラブ(59.0%)、その他の飲食(42.3%)、外国料理(38.8%)が上位に入っています。
- Q. 過少申告加算税と重加算税の違いは何ですか?
- A. 過少申告加算税は申告額が本来の税額より少なかった場合に課され、原則10%(基準額超過部分は15%)です。重加算税は故意の隠蔽・仮装があった場合に課され、35%(無申告の場合は40%)と大幅に高くなります。どちらか一方しか課されず、重い方が適用されます。
- Q. 追徴課税が払えない場合はどうすればよいですか?
- A. 国税通則法46条に基づく「納税の猶予」を申請する方法があります。災害・病気・廃業などの事由がある場合は最大1年間、分割納付が認められます。また換価の猶予(国税徴収法151条)により、差し押さえを避けながら分割納付できる場合もあります。早めに所轄の税務署へ相談することが重要です。
- Q. 延滞税はいつから計算されますか?
- A. 延滞税は本来の納期限の翌日から計算されます(国税通則法60条)。納期限から2ヶ月以内は年7.3%(または特例基準割合+1%のいずれか低い方)、2ヶ月超は年14.6%(または特例基準割合+7.3%のいずれか低い方)が適用されます。追徴税額が大きいほど延滞税の負担も重くなるため、早期に納付するほど有利です。
- Q. 税務調査の追徴課税は交渉で減額できますか?
- A. 追徴課税の税額自体は法律に基づいて機械的に計算されるため、原則として減額交渉の余地はありません。ただし指摘された否認項目に事実誤認や法解釈の相違がある場合は、根拠を示して反論できます。不服がある場合は再調査の請求(税務署長あて)または審査請求(国税不服審判所あて)の制度があります。
- Q. 法人の申告漏れ所得が高い業種はどこですか?
- A. 令和5事務年度の法人税調査では、1件あたりの申告漏れ所得金額が高い業種として、その他の化学工業製造(1億991万円)、化粧品小売(6,927万円)、物品賃貸(6,034万円)、精密機械器具卸売(5,777万円)が上位に入っています。製造業・卸売業でも高額の申告漏れが発見されており、飲食業だけが狙われているわけではありません。
- Q. 相続税の税務調査での追徴課税の相場はいくらですか?
- A. 国税庁の令和5事務年度データによると、相続税の実地調査1件あたりの追徴税額は859万円で、追徴税額の総額は過去最高の857億円を記録しました。相続税調査は1件あたりの追徴額が所得税・法人税より高い傾向があります。