税務署から「調査に伺いたい」という連絡が来たとき、何から手をつければいいかわからない経営者は少なくありません。通知から調査日まで通常2〜3週間。この期間をどう使うかが、調査結果に大きく影響します。
本記事では、事前通知を受けてから調査当日までに確認・準備すべき項目をチェックリスト形式で整理します。調査当日の対応については税務調査の対応ガイドも参考にしてください。
通知を受けたらまず行う3つのこと
1. 顧問税理士に連絡する
事前通知を受けたら、その日のうちに顧問税理士に連絡してください。税理士は税務代理人として調査官とのやり取りを代行できます(税理士法第2条)。通知の内容(調査日時・対象税目・対象期間)をそのまま伝え、立会いのスケジュールを確保してもらいます。
顧問税理士がいない場合は、調査専門のサービスや税理士紹介サービスを早急に探してください。調査日まで時間が限られているため、動き出しが早いほど準備の質が上がります。
2. 日程の確認と調整
通知された調査日が準備に十分な時間を確保できるか確認します。準備が間に合わない場合は、合理的な理由を添えて調査日の変更を申し出ることができます(国税通則法第74条の9第4項)。ただし、何度も変更を繰り返すと調査官の心証が悪くなるため、1回の変更にとどめるのが現実的です。
3. 調査の概要を把握する
事前通知では、調査対象税目(法人税・消費税など)と調査対象期間が伝えられます。これをもとに、どの年度・どの科目が対象になるかを絞り込み、準備の優先順位を決めます。
帳簿・書類の準備チェックリスト
帳簿類
- 総勘定元帳(調査対象期間分)
- 仕訳帳
- 現金出納帳
- 預金通帳(全口座分)
- 売上帳・売掛帳
- 仕入帳・買掛帳
- 固定資産台帳
- 給与台帳・源泉徴収簿
- 株主総会・取締役会議事録
電子帳簿保存法に基づいてデータで保存している場合は、調査官のダウンロード要求に対応できる環境を確認しておきます。調査官が電帳法のどの部分を重点的にチェックするかは税務調査と電子帳簿保存法|調査官が見る6つのチェックポイントで解説しています。
証憑書類
- 請求書(発行・受領両方)
- 領収書(調査対象期間分)
- 契約書(主要な取引先との契約)
- 銀行振込明細(証憑が紛失している取引の補完)
- 出張・交際費の支払証明(精算書・領収書)
- 棚卸資産の実地棚卸記録
証憑が不足している取引があれば、この時点で取引先に再発行を依頼するか、支払い事実を証明できる他の書類(振込明細・発注書等)を揃えておきます。
証憑がないからといって廃棄はNG
調査前に証憑を整理しようとして、誤って必要な書類を廃棄するケースがあります。廃棄・隠蔽と見なされると重加算税(35〜40%)の対象となるリスクがあります。証憑が見当たらない場合は、廃棄せず「紛失」として税理士に報告してください。
税理士との事前打ち合わせで確認すること
リスクポイントの洗い出し
調査対象期間の申告内容のうち、指摘される可能性がある項目を税理士と一緒に確認します。よく指摘される項目としては次のものがあります。
- 交際費と会議費・福利厚生費の区分
- 役員報酬・役員退職金の相当性(不相当に高額な場合は損金不算入)
- 売上の計上時期(期をまたぐ取引での計上ズレ)
- 棚卸資産の計上漏れ・評価誤り
- 貸倒損失の計上要件(法人税法施行令第96条)
- 減価償却の計算方法・耐用年数の適用
指摘リスクが高い項目については、処理の根拠(法令・通達・社内ルール等)を事前に整理しておくと当日の対応がスムーズです。否認された場合の対処法は税務調査で否認された場合の対処法で解説しています。
回答方針の確認
調査官から質問を受けた場合の回答方針を、税理士と事前にすり合わせておきます。「税理士を通じて回答する」「わからないことは確認してから答える」といった基本姿勢を共有しておくことで、当日の不用意な発言を防げます。
調査当日の環境準備
- 調査官が作業できる会議室・スペースの確保(テーブル・電源)
- 社長室・役員室など機密書類が目につく場所を避ける
- 提示が想定される帳簿・書類を会議室にまとめておく
- 経理担当者・税理士の連絡先を手元に用意
調査当日に急ぎ準備しない
当日の朝に慌てて書類を整理すると、書類の順番が変わる・書き込みが入るなど不審に思われる可能性があります。準備は前日までに完了させ、当日は落ち着いた状態で臨んでください。
まとめ
この記事のポイント
- 事前通知を受けたらその日のうちに税理士に連絡し、立会いの手配を行う
- 帳簿・証憑は対象期間分をもれなく整備。不足分は取引先に再発行を依頼
- 税理士との事前打ち合わせでリスクポイントと回答方針を確認しておく
- 調査当日の作業スペース・書類の配置は前日までに準備を完了させる