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税務調査の時期と頻度を把握する

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税務調査はいつ来る?時期と頻度を法人・個人別に解説

税務調査が来やすい時期は7〜11月が最も多く、法人は3〜10年に1回、個人事業主は5〜10年に1回が目安です。調査対象になりやすい条件や国税庁の統計データをもとに、時期・頻度の実態を解説します。調査頻度を下げる申告品質の保ち方、税理士関与による違い、業種別の調査リスク傾向まで実務目線で整理しました。

税務調査はいつ来るのだろう」——経営者や個人事業主なら一度は気になる疑問です。実際には、税務調査には来やすい時期があり、法人か個人かによっても傾向が異なります。時期と頻度の実態を知っておくことは、事前準備のタイミングを計るうえでも重要です。

本記事では、税務調査が集中しやすい時期・シーズン、法人と個人事業主それぞれの調査頻度の目安、調査対象に選ばれやすい条件を、国税庁の統計データも交えながら解説します。

税務調査のシーズンはいつか

7〜11月が最繁忙期

税務調査の実地調査が最も多い時期は、7月から11月です。この時期に集中する最大の理由は、日本の法人の多くが3月末決算だからです。

3月決算の法人は、通常5月末が法人税の申告期限です。申告が完了した後、税務署は6〜7月にかけて内容を確認し、調査対象を選定します。その結果、7月以降に調査官が動き始める流れになります。なかでも9月は調査のピークとされており、7月の人事異動で着任した調査官が担当件数をこなし始める時期と重なります。

9月前後が最も多い理由

国税局・税務署では毎年7月に定期人事異動があります。新たな担当者が配置され、引き継ぎが完了した9月頃から本格的に調査活動が本格化するため、9〜11月の件数が増える傾向があります。

3月以外の決算月を持つ法人は、決算月から2〜3ヶ月後が申告時期となるため、調査の時期もずれる形になります。決算月が8月の法人であれば10月申告となり、翌年1〜3月頃に調査が入るケースもあります。

確定申告期(2〜3月)は実地調査が減る

2月から3月は個人の確定申告期間です。この時期、税務署は確定申告の受付・処理業務に人員を集中させるため、実地調査の件数は著しく少なくなります。経営者や個人事業主の立場からすると、2〜3月は「調査が来にくい時期」といえます。

ただし、実地調査が減るだけで、税務署からの問い合わせや文書照会が増える時期でもあります。申告内容に疑義がある場合は、確定申告後の4〜5月に電話や文書で確認が入ることがあります。

個人事業主への調査は4〜5月と9月前後

個人事業主への実地調査が増える時期は大きく2つあります。一つは4〜5月、もう一つは9月前後です。

4〜5月の動きは、前年3月に提出された確定申告書の内容精査が終わり、疑義のある申告者への接触が始まるためです。9月前後は、法人調査と同様に調査官の体制が整う時期にあたります。年度のうち実地調査が最も活発なのは秋口(9〜11月)で、個人・法人ともに共通しています。

法人と個人事業主の調査頻度の違い

法人の調査頻度:3〜10年に1回が目安

法人税務調査は、一般的に3〜10年に1回程度の頻度で実施されるとされています。頻度の幅が広いのは、企業の規模・業種・過去の調査歴によって差があるためです。

国税庁の令和4事務年度(2022年)の実績データによれば、法人税実地調査件数は約6.2万件で、法人数全体に対する調査割合は約2〜3%程度です。単純計算では、全法人が平均して33〜50年に1回しか調査を受けない計算になりますが、実際には調査が集中しやすい層と、ほとんど調査を受けない中小零細とに分かれています。

中小企業で赤字が続いている法人、売上1億円未満の小規模法人は、調査頻度が相対的に低い傾向があります。一方、黒字で一定規模以上の法人、過去の調査で問題があった法人は頻度が高まります。

調査対象の選定基準は非公表

税務署が具体的にどのような基準で調査対象を選定しているかは公表されていません。ただし、一般的には申告内容の異常値、同業他社との比較、前回調査からの経過年数、業種特性などが判断要素になるとされています(根拠: 国税通則法第74条の2〜74条の6に基づく調査権限)。

個人事業主の調査頻度:5〜10年に1回が目安

個人事業主への実地調査は、法人に比べて頻度が低い傾向があります。目安は5〜10年に1回です。

国税庁の統計では、個人事業主への実地調査件数は年間約3万件前後で推移しています(令和3事務年度は約3.1万件)。一方、確定申告者数は約2,000万人以上に上るため、確率的には年間0.1〜0.5%程度です。ただし、これはサラリーマンも含む全確定申告者の数字であり、事業所得のある申告者に絞れば確率は高くなります。

個人への調査確率を業種別でみると、現金商売が多い飲食業・建設業・サービス業は選定されやすく、反対に給与所得・不動産所得が中心で証憑が明確な場合は選定されにくいといわれています。

調査対象になりやすい条件

法人で注意すべき特徴

税務署が調査対象を選定する際に着目しやすいとされる特徴として、実務上以下のような点がよく挙げられます。

  • 前回の実地調査から5年以上経過している
  • 売上や利益が前年比で大きく増減している
  • 消費税の還付申告を継続している(設備投資や輸出業など)
  • 役員報酬・役員退職金の額が相当性に疑問が生じやすい水準にある
  • 同業他社と比較して経費率・交際費率が突出している

売上が前年比で急増した場合、計上漏れや期ズレが疑われることがあります。逆に、利益が急減した場合は過大経費や架空損失が疑われるケースもあります。いずれも「変化が大きい年の翌年以降」は選定リスクが上がるという認識を持っておくとよいでしょう。

個人事業主で注意すべき特徴

個人事業主のなかで調査対象に選ばれやすい傾向があるのは、次のような属性です。

  • 飲食・建設・美容・不動産仲介など現金取引が多い業種
  • 顧問税理士がついておらず自己申告している
  • 売上が1,000万円前後(消費税の課税事業者の境界線近辺)
  • 開業から数年が経過し、一度も調査を受けていない

売上1,000万円という数字が出てくるのは、この水準が消費税の課税事業者・免税事業者の分岐点だからです。前年の売上が1,000万円をわずかに下回る申告が続いている場合、税務署が売上の除外を疑うケースがあります(消費税法第9条)。

また、顧問税理士がいない申告者は、税務知識の不足による誤申告のリスクが高いと判断されることも、選定確率に影響するとされています。

長期間調査がないこと自体がリスク要因になり得る

「一度も税務調査を受けていない」「10年以上調査が来ていない」という状況は、必ずしも安全を意味しません。前回調査から長期間が経過していることそのものが、調査対象の選定要因になり得るとされています。定期的に申告内容を顧問税理士とレビューしておくことが重要です。

国税庁の統計データからわかること

法人税調査の実態

国税庁が公表している「令和4事務年度 法人税等の調査事績」によれば、法人税実地調査(特別・一般)の件数は62,000件で、このうち不正計算のあった件数は25,200件、不正申告割合は40.6%でした。調査1件あたりの追徴税額(本税)の平均は約282万円です。

注目すべきは、実地調査以外に「簡易な接触」と呼ばれる書面・電話での確認が年間約40〜50万件行われている点です。これは実地調査件数の約7〜8倍にあたり、実際には調査の入り口となる書面照会が広く行われていることがわかります。

所得税(個人)調査の実態

同事務年度の所得税(個人)実地調査は31,000件で、不正計算件数は11,700件(不正申告割合38%)、1件あたりの追徴税額平均は約140万円でした。

業種別では、不動産業・飲食業・建設業での不正申告が多く、金額ベースでは不動産業での追徴税額が突出しています。個人の所得隠しの多くは現金収入の除外によるものとされており、これが現金商売の業種が選定されやすい理由と一致しています。

調査件数全体が減少傾向にあるのも実態です。コロナ禍以降、実地調査件数はいわゆる「コロナ前」の水準(法人約10万件、個人約7万件)の半分程度にとどまっており、調査の効率化・重点化が進んでいます。税務署は件数を減らしながらも、一件当たりの追徴金額は維持・向上させており、より精度の高い対象選定を行うようになっています。

来る前にやっておくべき準備

税務調査の時期・頻度の傾向を把握したうえで、日ごろからできる準備があります。

帳簿書類の整備は継続的に行うことが重要です。調査では過去3〜5年分の帳簿・証憑が確認されることが多く(国税通則法第74条の2)、その場で証拠が揃っていれば対応はスムーズになります。「通知が来てから準備する」では間に合わないケースもあるため、日常の記帳と証憑保管の徹底が基本です。

顧問税理士との定期レビューも有効な対策です。毎期の決算申告時に、税務上のリスクポイント(期ズレ、役員報酬、棚卸計上など)を確認しておくことで、指摘を受けにくい申告内容が維持できます。

実際に通知が来た後の対応については、税務調査の事前準備チェックリストで詳しく解説しています。通知を受けてから何を準備すべきか、帳簿・証憑の整備ポイントをチェックリスト形式でまとめています。

調査当日の対応については税務調査の対応方法、税理士への立会い依頼については税務調査の立会いは誰に頼む?も参考にしてください。

この記事のポイント

  • 税務調査の実地調査は7〜11月(特に9月前後)に集中する。確定申告期の2〜3月は件数が大幅に減る
  • 法人の調査頻度は3〜10年に1回、個人事業主は5〜10年に1回が目安。ただし規模・業種・過去の調査歴で差が出る
  • 長期間調査がない、売上が急変した、現金商売である、顧問税理士がいないといった特徴がある場合は調査対象として選定されやすい
  • 国税庁統計では法人の不正申告割合は約40%で、調査に入れば高い確率で問題が発見されている。日常の帳簿整備と顧問税理士との定期レビューが最大の対策となる

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よくある質問

Q. 税務調査が最も多い時期はいつですか?
A. 法人調査は7〜11月に集中します。多くの法人が3月決算のため、申告が終わった7月以降に調査が始まるケースが目立ちます。9月が特にピークとされており、個人事業主も同様に9月前後に調査が入りやすい傾向があります。
Q. 税務調査の頻度はどのくらいですか?
A. 法人は一般的に3〜10年に1回程度です。個人事業主はそれより間隔が広く、5〜10年に1回が目安とされています。ただし、過去の調査で問題が発覚した場合や売上規模が大きい企業は頻度が上がる傾向があります。
Q. 確定申告の時期(2〜3月)は税務調査が来ないのですか?
A. 確定申告期間の2〜3月は税務署が申告受付業務に集中するため、実地調査の件数は大幅に減ります。4〜5月は申告内容の精査時期で個人への接触が増えます。この時期は電話照会などの簡易な接触が増えることはあります。
Q. 税務調査が来やすい会社の特徴を教えてください。
A. 前回の調査から長期間が経過している、売上や利益が急激に変動している、同業他社に比べて経費率が高い、消費税の還付申告を繰り返している、といった特徴がある法人は調査対象として選ばれやすいとされています。
Q. 個人で税務調査が来る確率はどのくらいですか?
A. 国税庁の統計では、個人事業主への実地調査は年間約3万件前後で、確定申告者全体に占める割合は約0.5〜1%程度です。ただし、現金商売・高所得・売上1,000万円前後の個人は平均より選定されやすい傾向があります。

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