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出資(エクイティ)の仕組み|株式発行による資金調達

株式発行による資金調達(エクイティファイナンス)の基本的な仕組みと、融資との違いを解説。中小企業やスタートアップが出資を受ける際のメリット・デメリットと実務上の注意点をまとめました。

資金調達の方法は大きく「デット(負債)」と「エクイティ(資本)」の2つに分かれます。銀行融資に代表されるデットファイナンスに対し、株式を発行して投資家から資金を募るエクイティファイナンスは、返済義務がないという特徴を持つ資金調達手法です。

中小企業の多くは銀行融資を中心に資金調達を行っていますが、成長期の企業やBS上の自己資本を厚くしたい企業にとっては、出資による資金調達が有効な選択肢になる場合があります。本記事では、出資の基本的な仕組みとメリット・デメリット、実務上の留意点を解説します。

エクイティファイナンスの基本的な仕組み

エクイティファイナンスとは、会社が新たに株式を発行し、その対価として投資家から資金を受け入れる調達方法です。会社法第199条に基づく「募集株式の発行」の手続きによって実行されます。

調達した資金はBSの「資本金」または「資本準備金」に計上され、返済義務はありません。投資家は株主として議決権を持ち、配当を受け取る権利や残余財産の分配請求権を取得します。

株式の発行価額は、原則として公正な価額で設定する必要があります。時価よりも著しく低い価額で発行すると「有利発行」に該当し、株主総会の特別決議(会社法第199条第3項、第309条第2項第5号)が必要になるほか、既存株主から差止請求を受ける可能性があります。

中小企業の場合、株式の時価算定には「類似業種比準方式」「純資産価額方式」「配当還元方式」などが用いられます。非上場会社の株式には市場価格がないため、税理士や公認会計士と相談しながら適正な発行価額を決定することが重要です。

出資を受けるメリットとデメリット

出資による資金調達の最大のメリットは、返済義務がないことです。融資であれば毎月の返済と利息の支払いが発生しますが、出資で得た資金は自由に事業投資に充当できます。キャッシュフローの負担が軽減されるため、成長投資に集中しやすくなります。

自己資本の増加によってBSが改善される効果もあります。自己資本比率が上がることで、金融機関からの信用力が向上し、融資条件が改善される可能性があります。つまり、出資を受けた結果として、融資も受けやすくなるという好循環が期待できます。

一方、デメリットとして最も大きいのは経営権の希薄化です。新株を発行すれば既存株主の持株比率が下がり、経営の自由度が制約される可能性があります。投資家が取締役の派遣を求めたり、重要事項について拒否権(株主間契約で定められるいわゆる「ベト条項」)を持つケースもあります。

また、出資を受けた場合のコストは表面上見えにくいものの、長期的には融資より高くつくことがあります。エクイティとデットの中間的な手段としてベンチャーデットを活用する選択肢も広がっています。投資家が期待するリターン(IRR)は年率20%から30%以上に設定されることが多く、将来的にIPOやM&Aでのイグジット時に大きな対価を支払うことになります。

出資の種類と投資家のタイプ

中小企業が出資を受ける場合、主な投資家の類型として、ベンチャーキャピタル(VC)、エンジェル投資家、事業会社(CVC含む)、公的ファンドがあります。

VCは投資ファンドとして複数の企業に出資し、IPOやM&Aによるイグジットで収益を得ることを目的としています。投資金額は数千万円から数十億円と幅広く、経営支援を含むハンズオン型の投資を行うファンドも増えています。

エンジェル投資家は、個人の資産で創業間もない企業に投資する個人投資家です。投資金額は数百万円から数千万円が中心で、自身の事業経験やネットワークを活かした経営支援を提供するケースが多くあります。エンジェル税制(租税特別措置法第41条の19)により、投資家側に税制上の優遇措置があります。

事業会社やCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)は、自社の事業とのシナジーを目的として出資するケースが多く、販路提供や技術連携といった事業面のメリットが期待できます。

出資を受ける際の実務上の注意点

出資を受ける際に最も重要なのが「バリュエーション企業価値評価)」の交渉です。バリュエーションが低すぎると多くの株式を渡すことになり、高すぎると次回のラウンドで「ダウンラウンド」になるリスクがあります。

株主間契約(SHA)の内容も慎重に検討すべき事項です。投資契約には、優先株式の設計(残余財産の優先分配権、みなし清算条項など)、取締役の指名権、事前承認事項、反希薄化条項(アンチダイリューション)、ドラッグアロング条項(売却強制権)など、経営の自由度に大きく影響する条項が含まれることがあります。

投資契約は必ず弁護士のレビューを

弁護士のレビューを受けずに投資契約を締結することは避けてください。みなし清算条項やドラッグアロング条項は、将来の経営判断に重大な制約を課す可能性があるため、内容を十分に理解したうえで合意する必要があります。

まとめ

要点

  • エクイティファイナンスは返済義務がなく自己資本を強化できるが、経営権の希薄化や投資契約上の制約が伴う
  • 融資とは性質が根本的に異なるため、自社の成長段階や経営方針に照らして適切な調達手段を見極める
  • 希薄化の影響を事前にシミュレーションし、経営の自由度と資金調達のバランスを検討する

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よくある質問

Q. 出資と融資の最も大きな違いは何ですか?
A. 出資は返済義務がない代わりに、株式の持分を投資家に渡す資金調達方法です。融資は元本と利息を返済する義務がありますが、経営権への影響はありません。出資を受けると資本が増加しBSが強化されますが、経営に関する投資家の関与が生じます。
Q. 中小企業でもベンチャーキャピタルから出資を受けられますか?
A. 事業の成長性が高く、IPOやM&Aによるイグジットが見込める場合は、中小企業であっても出資を受けられる可能性があります。ただし、VCは高い成長率を求めるため、全ての中小企業に適した調達手段とは限りません。
Q. 出資を受けると経営権を失いますか?
A. 出資比率によります。議決権の過半数(50%超)を維持していれば普通決議を、3分の2以上を維持していれば特別決議を単独で可決できます。出資を受ける際は、持株比率の希薄化と経営権のバランスを慎重に検討する必要があります。
Q. 出資と融資のどちらを選ぶべきですか?
A. 事業の成長段階と経営方針によって異なります。安定した収益があり返済原資を確保できる場合は融資が適しています。急成長を目指し大規模な資金投入が必要な場合は出資が有効です。両者を組み合わせて活用するケースも多く見られます。

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