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清算の税務を正しく理解する

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会社清算の税金と残余財産分配|3つの税目と計算例で手順を整理

会社清算で法人税・みなし配当・消費税はいくらかかる?残余財産の分配手順から株主への課税、清算確定申告の期限まで、具体的な計算例付きで流れを整理しました。

会社を清算する決断をした後、経営者が最も頭を悩ませることの一つが税務処理です。清算中の法人税申告は通常時と異なるルールが適用され、残余財産の分配では株主側にも課税が生じます。申告を誤ると、後から税務署の指摘を受けて加算税や延滞税が発生するリスクもあります。

本記事では、会社清算時にかかる税金の種類と計算方法、申告スケジュール、残余財産の分配に伴うみなし配当課税の実務を解説します。清算手続きの全体像については会社清算の手続きと流れをあわせてご参照ください。

清算時の税負担 総額シミュレーション

まず全体像を把握するため、典型的なケース(資本金1,000万円、利益剰余金500万円、個人株主1名)で清算時にかかる税金の総額を試算します。

税金の種類対象計算根拠概算額
法人税(解散事業年度)法人解散日までの所得に対して(退職金で相殺可能)0〜数百万円
法人住民税(均等割)法人清算結了まで年7万円程度約7万円/年
消費税法人固定資産売却等の課税取引分取引額の10%
みなし配当に対する源泉徴収株主(分配額 - 資本金等) × 20.42%約102万円
株主の所得税(確定申告)株主みなし配当の総合課税(配当控除あり)所得税率による

このケースでは、法人側の税負担は役員退職慰労金と欠損金で圧縮可能ですが、株主側にみなし配当課税として少なくとも100万円程度の税負担が発生します。清算にかかる税金の総額は、残余財産の額と株主の他の所得によって大きく変動するため、解散決議前に税理士と試算しておくことが重要です。

残余財産の分配前に押さえる3つの税金

清算時に関係する主な税金は、法人税(と地方法人税・住民税・事業税)、消費税、そして株主側の所得税(みなし配当)です。残余財産を株主に分配する前に、法人側の納税をすべて完了させる必要があります。

法人税:事業年度が区切られ、申告が増える

会社が解散すると、事業年度がその日で強制的に区切られます。 法人税法14条1項1号が解散の日で、同項5号が残余財産の確定の日で事業年度を区切ると定めているためです。

この結果、通常の事業年度とは別に「清算事業年度」という課税期間が生じます。申告の機会は事業年度ごとに発生するため、清算期間が1年を超えると申告回数が増えます。

申告の種類対象期間申告期限
解散事業年度の確定申告前事業年度末の翌日〜解散日解散日の翌日から2か月以内
清算事業年度の確定申告解散日の翌日〜解散後1年ごと各清算事業年度終了後2か月以内
残余財産確定事業年度の申告最後の清算事業年度開始日〜残余財産確定日残余財産確定日の翌日から1か月以内。その間に最後の分配を行う場合はその前日

残余財産確定事業年度の申告期限が「1か月以内」と短い点は実務上の注意点です。しかも、その1か月以内に残余財産の最後の分配を行う場合は、その分配の日の前日が期限になります。通常の申告期限(2か月以内)より短いため、残余財産の確定日が決まったら速やかに申告準備を始める必要があります。

消費税:固定資産の売却も課税対象

清算作業では、会社の固定資産や棚卸資産を売却することになります。これらの売却は消費税法4条に基づく課税取引となるため、売却価格に応じた消費税が発生します。

清算中の課税期間(清算事業年度)に課税売上がある場合は、消費税の確定申告も必要です。申告期限は法人税と同じ「2か月以内」ですが、残余財産確定事業年度については「1か月以内(その間に最後の分配を行う場合はその前日)」になります。

簡易課税の選択は計画的に

清算開始前に課税方式の選択が有利かどうかを確認してください。清算年度の最初の課税期間が始まる前までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出すれば、仕入れ控除の計算が簡便になります。ただし、原則課税の方が有利なケースもあるため、税理士への相談が推奨されます。

法人住民税・法人事業税

法人税の申告と同時に、都道府県・市区町村への申告も必要です。清算中であっても均等割(最低7万円程度)は課税され続けます。会社が消滅するまでの間、均等割は発生し続ける点を念頭に置いて、清算をできる限りスムーズに進めることが費用節減につながります。

清算事業年度の法人税:欠損金の活用

清算時の法人税計算で効いてくるのが、欠損金の取り扱いです。通常の事業年度では繰越欠損金の控除に所得の50%という上限がありますが(中小法人等は所得の全額まで)、清算時にはこれに加えて「期限切れ欠損金」の損金算入が使えます。

期限切れ欠損金の損金算入

通常の繰越欠損金は最長10年間しか繰り越せません。しかし清算時には、10年超の「期限切れ欠損金」も損金算入が認められます。根拠は法人税法59条4項です。

条文が定めている適用の入口は、残余財産がないと見込まれるときという要件です。原文は「内国法人が解散した場合において、残余財産がないと見込まれるとき」となっています。損金に算入できる金額の上限や、後述する書類の添付要件は別に定められています。解散から何年以内に清算を終えなければならない、といった期限の要件はありません。

残余財産がないと見込まれるかどうかの判定は、国税庁が質疑応答事例で整理しています。法人税基本通達12-3-8が、事業年度終了の時に債務超過の状態にあれば該当すると示し、同12-3-9が、その債務超過かどうかは実態貸借対照表(資産・負債を時価ベースで作成した貸借対照表)で確認できるとしています。

同じ59条でも、第3項は再生手続開始の決定があった場合などの規定で、清算の場面とは別物です。引用するときは項番号まで確認してください。

そしてこの制度は書類の添付が前提です。59条6項は、確定申告書等に損金算入額の計算に関する明細を記載した書類と、残余財産がないと見込まれることを説明する書類などの添付がある場合に限り適用すると定めています。

同条7項には救済もあります。添付がなかったことについてやむを得ない事情があると税務署長が認めるときは適用できる、というものです。ただし認められるかどうかは税務署長の判断です。期限切れ欠損金で課税所得を消すつもりなら、書類を添えるところまでがセットだと考えてください。

黒字清算の場合には期限切れ欠損金の恩恵は受けられませんが、赤字が続いてきた会社が清算する場面では課税所得を圧縮できる制度です。

欠損金の繰戻還付

清算の場面で繰戻還付を使うとき、根拠となる条項は2つに分かれます。どちらを使うかで、対象になる欠損金の事業年度が変わります。

使う条項対象になる欠損金請求のタイミング
法人税法80条4項解散の日前1年以内に終了した事業年度、または解散の日が属する事業年度に生じた欠損金解散の日以後1年以内
法人税法80条1項清算事業年度・残余財産確定事業年度など、青色申告書を提出する事業年度に生じた欠損金その事業年度の確定申告書の提出と同時

80条4項は、解散という事実が生じたことをきっかけに、確定申告を待たずに繰戻還付を請求できるようにする準用規定です。一方、清算に入ったあとの各事業年度で出た欠損金は、通常どおり80条1項で前1年以内に開始した事業年度へ繰り戻します。

いずれも、還付を受ける事業年度から欠損事業年度まで連続して青色申告書を提出していることが前提です。なお同条5項は災害に関する別の規定なので混同しないでください。

たとえば解散事業年度に法人税を500万円支払っていて、清算確定申告で欠損金が300万円生じた場合、繰戻還付により法人税の一部が戻ってくる可能性があります。清算資金が乏しい状況では、この還付金が清算費用に充てられることもあります。

解散前の役員退職慰労金も節税に活用できる

解散決議と同時に役員退職慰労金を決議すれば、解散事業年度の損金として計上できます。損金にできるのは不相当に高額でない部分までです。法人税法施行令70条2号は、その判定要素として業務に従事した期間・退職の事情・同種で事業規模が類似する法人の支給状況などを挙げています。実務でよく使う功績倍率法(最終月額報酬 × 在任年数 × 功績倍率)は、この相当性を見積もるための裁判例・実務上の手法であって、条文が定めた計算式ではありません。

残余財産の分配とみなし配当課税

清算の最終段階で生じるのが「残余財産の分配」です。株主への分配金には、受け取る側に所得税が課税されます。このうち課税の中心となるのが「みなし配当」です。

みなし配当とは

会社が清算して残余財産を分配する際、その金額のうち株主が出資した金額(税務上の「払戻等対応資本金額等」)を超える部分は、会社が過去に稼いで蓄積した利益剰余金が株主に還元されたものとして、配当所得とみなされます(所得税法25条1項4号)。

計算式は次のとおりです。

みなし配当額 = 残余財産の分配額 − 払戻等対応資本金額等(残余財産の全部を分配する場合は、資本金等の額のうち持株数に対応する部分)

「払戻等対応資本金額等」の計算方法は、所得税法施行令61条2項4号が定めています。

残余財産の全部を分配する場合は資本金等の額の全額が対象になるため、実務上は資本金等の額を発行済株式数で割り、保有株式数を乗じた金額になります。一部分配の場合は資産負債の差額に対する分配額の割合を乗じるため、計算が変わります。

具体的な計算例

資本金1,000万円(税務上の資本金等の額も1,000万円)、利益剰余金500万円の会社を清算し、残余財産1,500万円を唯一の株主(個人)に全額分配したケースで考えます。

項目金額
残余財産の分配額1,500万円
払戻等対応資本金額等1,000万円
みなし配当額500万円
源泉徴収税額(20.42%)約102万円
実際の手取り額約1,398万円

みなし配当500万円は、株主個人の配当所得として総合課税の対象となります。他の所得と合算して確定申告が必要です。配当控除(課税総所得金額が1,000万円以下の部分は税額の10%、超過部分は5%)の適用も受けられます。

分配額は2つの性格に割れる株主が受け取る残余財産の分配額株式の譲渡対価みなし配当払戻等対応資本金額等取得費との差が譲渡損益非上場なら20.42%を源泉徴収出資に対応する部分までは配当ではなく、株式の対価として扱う
所得税法25条1項4号が、資本金等の額のうち対応する部分を超える金額を配当とみなす。境目になる払戻等対応資本金額等の計算は所得税法施行令61条2項4号

株式の譲渡損益

みなし配当を超える部分(残余財産の分配額からみなし配当額を引いた額)は、株式の譲渡対価として扱われ、株式取得費用との差額が「株式の譲渡損益」になります。

上記の例では、株式取得費用(≒ 取得した資本金1,000万円)と払戻等対応資本金額等1,000万円が一致するため、譲渡損益はゼロになります。ただし、増資や株式取得のタイミングによって取得費用と払戻等対応資本金額等にズレが生じるケースもあるため、個別に計算が必要です。

残余財産別 みなし配当税負担の早見表

資本金1,000万円・株主1名(個人)の前提で、残余財産が500万円〜3,000万円のケースを比較します。みなし配当は分配額から払戻等対応資本金額等を控除した残額、源泉税率は20.42%です(株主の総合課税側で配当控除があるため実効負担はこれより低下します)。

残余財産みなし配当源泉徴収額(20.42%)株主の手取り
500万円0円0円500万円
1,000万円0円0円1,000万円
1,500万円500万円約102万円約1,398万円
2,000万円1,000万円約204万円約1,796万円
2,500万円1,500万円約306万円約2,194万円
3,000万円2,000万円約408万円約2,592万円

資本金等の額を超えた部分にのみ源泉徴収が発生するため、利益剰余金が大きく蓄積している会社ほどみなし配当負担が増えます。清算前の役員退職慰労金の活用や中退共の活用で利益剰余金を圧縮しておくと、最終的な手取りを底上げできます。

株主構成別の税務上の留意点

株主構成主な論点影響
個人1名みなし配当の総合課税・配当控除給与所得との合算で累進課税
個人複数(同族)分配比率に応じた個人課税の按分株主間の合意・贈与認定リスク
個人+法人混在個人は総合課税、法人は受取配当益金不算入法人株主の持株比率で不算入率が変動
法人100%(完全子法人)完全子法人株式等として全額益金不算入みなし配当部分に法人税は生じない
海外株主含む租税条約に基づく軽減税率の適用可否源泉徴収時に届出書の事前提出が必要

株主構成によって源泉徴収・申告の手間が大きく変わります。清算スケジュールを組む前に、株主名簿の現状と株主側の課税関係を整理しておくのが実務の定石です。

法人株主の場合は取り扱いが異なる

株主が法人の場合、みなし配当は受取配当等として扱われ、法人税法23条により区分に応じた割合が益金に算入されません。 完全子法人株式等は全額、関連法人株式等は負債利子相当額を控除した残額、そのいずれにも非支配目的株式等にも当たらない株式等は50%、非支配目的株式等は20%が益金不算入です。清算する会社の株主が法人の場合は、株主法人側でも申告の影響が生じるため注意が必要です。

最後の申告だけ、期限が1か月に縮む解散事業年度事業年度の初日から解散の日まで(期限は翌日起算)2か月以内清算事業年度解散の翌日から1年ごと。終わるまで繰り返す2か月以内残余財産確定事業年度残余財産が確定した日で区切られる1か月以内最後の分配の日の前日が先に来るときは、その日が期限
法人税法74条2項が、残余財産確定事業年度についてだけ「二月以内」を「一月以内」と読み替える。その1か月以内に最後の分配を行う場合は、その前日が期限になる

清算申告のスケジュール管理

税務上のミスを防ぐには、申告期限を逆算したスケジュール管理が重要です。会社清算の税務申告は、複数の申告が連動して発生します。

1

株主総会で解散決議(解散日を決定)

この日で事業年度が区切られます。解散日の翌日から2か月以内に解散事業年度の確定申告が必要です。

2

解散事業年度の確定申告(解散日の翌日から2か月以内)

役員退職慰労金の損金算入、欠損金の繰越確認、消費税の精算を行います。

3

清算事業年度の確定申告(1年ごと)

残余財産が確定するまで、解散日の翌日から1年ごとに区切られた清算事業年度の申告が必要です。

4

残余財産の確定・分配

全債務の弁済が完了し残余財産が確定したら、株主への分配を行います。みなし配当が発生する場合は源泉徴収が必要です。

5

残余財産確定事業年度の清算確定申告(1か月以内)

残余財産確定日の翌日から1か月以内。ただし、その1か月以内に残余財産の最後の分配が行われる場合は、その分配の日の前日が期限になります。

6

清算結了登記・税務署への届出

申告納税が完了したら清算結了登記を行い、税務署・都道府県・市区町村に清算結了届出書を提出します。

申告遅延のリスク

清算申告の期限を守れなかった場合、無申告加算税(15%または20%)や延滞税が課される可能性があります。清算が長期化して申告回数が増えるほど管理が複雑になるため、解散決議の段階から税理士と連携しておくことを推奨します。

残余財産確定事業年度の申告期限は、通常の2か月から縮むぶん見落としやすい期限です。 期限は1か月以内で、その間に最後の分配を行うならその前日になります。

残余財産の確定が見えてきたら、その時点から申告書の準備を始めておくことがトラブルを防ぐポイントです。

残余財産がゼロ(債務超過)の場合

清算時に債務超過で残余財産がない場合は、特別な税務上の措置が適用されます。赤字続きで清算する会社ほど、この扱いを知っているかどうかで納税額が変わります。

「残余財産がないと見込まれる」状態では、前述の期限切れ欠損金の損金算入(法人税法59条4項)に加え、以下の取り扱いが生じます。

  • 債務免除を受けた場合、免除益と期限切れ欠損金が相殺され、法人税が発生しないケースが多い
  • 株主への分配がゼロであれば、みなし配当も発生しない
  • 株主への分配がゼロなら、株主側に譲渡収入も生じない

株主の譲渡損失について、通算できる範囲を誤解しないでください。 非上場会社の株式は租税特別措置法上の「一般株式等」にあたり、その譲渡所得等は同法37条の10第1項により他の所得と区分して課税されます。

同項は続けて、一般株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上生じた損失は生じなかったものとみなすと定めています。原文は「生じなかつたものとみなす」です。

つまり、同じ年に別の一般株式等を売って利益が出ていればその中で相殺できますが、給与所得や不動産の譲渡所得と通算することはできず、翌年以降への繰越しもできません。清算に伴う株式の損失を他の所得の節税に使う前提で計画を立てると、想定が崩れます。

中小企業の清算では、過剰債務の解消を経て残余財産がゼロになるパターンも少なくありません。債務超過のまま清算する場合は、特別清算(会社法510条以下)の手続きが必要になるケースもあるため、弁護士と税理士の双方に相談することを推奨します。

清算時の節税ポイント

役員退職慰労金の活用

解散決議と同時に役員退職慰労金を株主総会で決議すると、解散事業年度の損金として算入できます。不相当に高額でなければ損金として認められます(法人税法施行令70条2号)。金額の目安は実務上、功績倍率法で見積もります。最終月額報酬が50万円、在任20年、功績倍率3.0であれば、退職金の目安は3,000万円です。

ただし、退職金を支払うための現金が必要です。清算時は資産を現金化しながら退職金も捻出するという資金繰り管理が求められます。

欠損金の繰戻還付

欠損事業年度開始の日前1年以内に開始した事業年度で法人税を納付している場合、清算事業年度や残余財産確定事業年度で欠損金が生じれば繰戻還付の請求が可能です(法人税法80条1項。解散の事実に基づくものは同条4項)。清算中に発生した費用(弁護士・税理士費用、登記費用、資産処分費用など)が多ければ、欠損金も大きくなり還付額も増えます。

消費税の課税方式の選択

清算事業年度の課税仕入れが多い場合(固定資産の処分に伴い課税仕入れが少ない場合を除く)、原則課税を選択することで仕入れ税額控除を活用できます。一方で、課税売上のみが多く仕入れが少ない清算パターンでは、簡易課税制度を選択する方が納税額を減らせることもあります。

廃業・清算時の税務処理の全体像については廃業手続きガイドも参考になります。また、事業再生の税務(債務免除益・欠損金活用)については事業再生の税務で詳しく解説しています。

清算結了までの標準的な所要期間

解散決議から清算結了までは、一般的に3か月から1年程度を要します。主な所要期間の目安は次のとおりです。

工程所要期間の目安
解散決議〜解散登記約2週間
債権者への官報公告(2か月以上の申出期間が必要)2か月以上
資産の換金・債務の弁済1〜6か月
残余財産の確定・分配1〜2週間
清算確定申告残余財産確定の翌日から1か月以内(その間に最後の分配を行うならその前日)
清算結了登記約1〜2週間

債権者保護手続きの官報公告に最低2か月かかるため、どれだけスムーズに進めても3か月以上は必要です。不動産や有価証券の換金に時間がかかるケースでは、清算が1年以上に及ぶこともあります。その場合、清算事業年度が複数回発生し、法人税・住民税の申告回数が増える点に注意してください。

会社清算の税金・残余財産のポイント

  • 法人税の申告は「解散事業年度」と「残余財産確定事業年度」の2つが必ず生じ、清算が1年を超えるとその間の「清算事業年度」の申告が加わる
  • 残余財産確定申告の期限は1か月以内、その間に最後の分配を行うならその前日と短いため、確定が見えた時点から準備を開始する
  • 株主が受け取る残余財産のうち出資額を超える部分はみなし配当として課税される(所得税法25条1項4号)
  • 役員退職慰労金・欠損金繰戻還付・消費税課税方式の選択が主な節税手段
  • 申告遅延は無申告加算税・延滞税の原因になるため、税理士との連携が不可欠

残余財産規模別 株主課税の早見表

「みなし配当が結局いくらになるのか」を、ありがちな残余財産規模ごとに早見表でまとめました。前提は資本金1,000万円・個人株主1名・他の所得控除を考慮しないシンプルケースです。

残余財産払戻資本金みなし配当額源泉税(20.42%)株主の手取り(概算)
1,500万円1,000万円500万円約102万円約1,398万円
2,000万円1,000万円1,000万円約204万円約1,796万円
3,000万円1,000万円2,000万円約408万円約2,592万円
5,000万円1,000万円4,000万円約817万円約4,183万円
1億円1,000万円9,000万円約1,838万円約8,162万円

源泉徴収後の翌年の確定申告で、配当控除の適用により最終的な税負担は調整されます。非上場会社の配当は総合課税のみで、申告分離課税は選べません。みなし配当が大きくなるほど累進課税の影響が出るため、額の大きい清算では役員退職慰労金の活用などで実効税率を抑える設計が有効です。

節税アクションの効き目早見表

節税策想定効果実行可否のチェック
役員退職慰労金法人側で損金算入+本人は退職所得課税で軽減退職事実・株主総会決議・適正額の3点を満たすか
欠損金の繰戻還付欠損事業年度開始の日前1年以内に開始した事業年度に納めた法人税が還付対象になる還付を受ける事業年度から欠損事業年度まで連続して青色申告書を出しているか
簡易課税の選択清算事業年度の消費税負担を圧縮課税売上5,000万円以下、事前届出が間に合うか
残余財産分配の分割配当所得の累進課税を1年に集中させない清算手続きを2事業年度に分けられる規模か

廃業全体のスケジュール感や、残余財産分配前にやるべき18項目は廃業手続きガイドで全体像を確認できます。

株主構成別 残余財産分配の計算例

これまでの早見表は「個人株主1名」のシンプルケースでしたが、実際の中小企業では複数の個人株主・法人株主・親会社100%出資など株主構成が多様です。構成によって課税のしくみと総税負担額が変わるため、3つの典型ケースで計算過程を整理します。前提は資本金1,000万円・残余財産3,000万円とします。

ケースA: 個人株主2名で50:50

代表取締役と配偶者など、個人2名で50:50の構成の場合。みなし配当2,000万円は持株比率で按分されます。

株主持株比率払戻資本金みなし配当源泉税(20.42%)手取り(源泉控除後)
株主A(個人)50%500万円1,000万円約204万円約1,296万円
株主B(個人)50%500万円1,000万円約204万円約1,296万円
合計100%1,000万円2,000万円約408万円約2,592万円

各株主は翌年の確定申告でみなし配当を申告します。非上場会社の配当は総合課税で、上場株式等の配当のように申告分離課税を選ぶことはできません。 他の所得と合算して税率が決まるため、退職金を受け取る年など所得が膨らむ年と重なると負担が跳ね上がります。源泉徴収された20.42%は申告で精算します。

ケースB: 個人株主+法人株主の混在

個人代表取締役(60%)と関係会社(40%)が株主の場合。法人株主が受け取るみなし配当は受取配当等の益金不算入の対象になり、課税関係が個人株主と大きく異なります。関連法人株式等に当たるには持株比率だけでなく保有期間の要件も満たす必要があるため、比率だけで判断すると不算入額を読み違えます。

株主持株比率みなし配当課税扱い
個人代表(60%)60%1,200万円みなし配当として20.42%源泉徴収(約245万円)+ 翌年確定申告
関係会社(40%・保有期間が短く関連法人株式等に当たらない)40%800万円その他の株式等として50%が益金不算入
関係会社(40%・保有期間の要件を満たす)40%800万円関連法人株式等として、負債利子相当額を控除した残額が益金不算入

法人株主側では、源泉徴収された所得税が法人税の前払いとして所得税額控除(法人税法68条)の対象になります。関係会社が株式の保有比率や保有期間によって取扱いが変わるため、解散決議前に税理士と株主一覧を整理しておくことが重要です。

ケースC: 完全親会社(100%)への清算

100%親会社への清算は、税務上「適格現物分配」に該当する可能性があります。ここは根拠となる条文が2本に分かれており、受け取る資産の課税と、親会社が持っている子会社株式の扱いは別の規定で決まります

  • 受け取った資産は、法人税法62条の5第4項により益金に算入しません。分配する子会社の側も、同条第3項によって帳簿価額で譲渡したものとされます
  • 親会社が持つ子会社株式は、法人税法61条の2第17項が、完全支配関係のある法人の解散による残余財産の分配などで株式を有しないこととなった場合に譲渡対価の額を譲渡原価の額と同額とみなすと定めています。繰り延べではなく、譲渡損益がそもそも生じません
項目完全支配関係がない清算完全支配関係がある清算
親会社が受け取る資産受取配当等の益金不算入(法人税法23条・持株比率で割合が変わる)適格現物分配なら全額益金不算入(62条の5第4項)
親会社の子会社株式譲渡損益を認識譲渡対価=譲渡原価とみなし、譲渡損益は生じない(61条の2第17項)
適用要件特になし完全支配関係(100%出資)等

完全親子会社間の清算では、適格現物分配に該当すると親会社側の税負担が軽くなる場合があります。グループ法人税制の対象になるため、適用要件の判定は税理士に確認してください。

みなし配当の源泉徴収と支払調書の実務

会社清算で残余財産を分配する側(清算法人)には、株主に対する源泉徴収義務と支払調書の提出義務があります。手続きを誤ると不納付加算税や延滞税が発生するため、分配前に流れを把握しておくことが重要です。

源泉徴収の手順

  1. みなし配当額を計算する。残余財産分配額から「払戻等対応資本金額等」を控除した残額がみなし配当。残余財産の全部を分配する場合は資本金等の額の全額が対象になり、実務上は資本金等の額 × 持株比率で計算できる(所得税法施行令61条2項4号)
  2. 源泉徴収税額を計算する。みなし配当 × 20.42%
  3. 源泉徴収後の金額を株主に支払う。残余財産分配額から源泉税額を差し引いた金額が実際の分配額
  4. 源泉徴収税を納付する。支払(分配)月の翌月10日までに、税務署へ「所得税徴収高計算書(配当等の所得税徴収高計算書)」を添えて納付する(所得税法181条)

非上場会社のみなし配当の源泉徴収は20.42%で、分配する側に納付義務があります。 内訳は所得税法182条2号の20%に、復興特別所得税が上乗せされたものです。上乗せの根拠は東日本大震災復興財源確保法28条で、同条2項が所得税額の100分の2.1と定めています。

株主から預かって納めるものなので、分配額をそのまま振り込むと会社が不足分を負担することになります。上場会社や大口株主等で異なる税率が適用される場合は、税理士に確認してください。

支払調書の提出義務

清算法人は、みなし配当を支払った株主について「配当、剰余金の分配、金銭の分配又は基金利息の支払調書」を作成し、支払確定日から1か月以内に税務署へ提出します(所得税法225条1項2号)。

提出期限までに提出しなかった場合や、偽りの記載をした場合は、所得税法242条5号の罰則の対象になります(1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)。加算税ではなく罰則である点に注意してください。

支払調書には株主のマイナンバー、法人株主なら法人番号の記載が必要です。 解散決議前に株主からマイナンバーの提供を受けておくと、清算結了時のスケジュールが圧縮できます。

株主への通知書も忘れず交付

源泉徴収と同時に、株主には「みなし配当の通知書」を交付する義務があります(所得税法施行規則92条)。通知書には、みなし配当の金額・源泉徴収税額・支払日等を記載し、株主が翌年の確定申告で配当控除を受ける際の根拠資料になります。

会社清算における源泉徴収と支払調書の手続きは、通常の配当金支払時と基本的に同じですが、株主構成が複雑な場合や法人株主が含まれる場合は、源泉徴収の要否・税率・支払調書の作成枚数が変わります。清算開始時から税理士と連携して進めるのが安全です。


会社清算の税務は、通常の事業年度申告とは異なるルールが複数重なります。みなし配当課税は株主個人の確定申告にも影響するため、会社側と株主側の両面で税務を整理しておく必要があります。

申告スケジュールの管理・欠損金の活用・節税手法の選択など、判断を誤ると後から修正が難しいケースもあります。清算を決断した段階で、法人税・消費税・所得税(みなし配当)の全体像を把握したうえで税理士へ相談することを推奨します。


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本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務判断には必ず顧問税理士にご相談ください。法令の改正により内容が変わる場合があります。

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よくある質問

Q. 会社清算時に法人税の申告は何回必要ですか?
A. 最低2回です。解散の日で区切られる解散事業年度の確定申告と、残余財産が確定した事業年度の清算確定申告です。清算が1年を超えると、その間の清算事業年度ごとの申告が加わります。事業年度がこの3つに区切られる根拠は法人税法14条1項1号・5号です。
Q. みなし配当とはどのような課税ですか?
A. 会社清算時に株主が受け取る残余財産のうち、出資した金額(税務上の払戻等対応資本金額等)を超える部分が配当所得とみなされ課税されるしくみです(所得税法25条1項4号)。非上場会社の場合、源泉徴収税率は20.42%です(所得税法182条2号の20%に、復興財源確保法28条2項の復興特別所得税2.1%が上乗せ)。
Q. 残余財産確定申告の期限はいつですか?
A. 残余財産の最後の分配の日の前日、または残余財産が確定した日の翌日から1か月以内のどちらか早い日が期限です(法人税法74条2項)。通常の事業年度申告(2か月以内)より短い点に注意が必要です。
Q. 会社清算時に消費税の申告は必要ですか?
A. 必要です。清算事業年度に課税取引があれば消費税の確定申告が求められます。また、清算に伴う固定資産・棚卸資産の売却も消費税の課税取引となるため、売却価格に応じた消費税額が発生します(消費税法4条)。
Q. 欠損金の繰戻還付は清算時に使えますか?
A. 使えます。ただし根拠となる条項が2つに分かれます。解散という事実に基づくものは法人税法80条4項で、解散の日前1年以内に終了した事業年度または解散の日が属する事業年度に生じた欠損金が対象です。請求は解散の日以後1年以内に行います。清算事業年度や残余財産確定事業年度に生じた欠損金は、同条1項の通常の繰戻還付で、欠損事業年度開始の日前1年以内に開始した事業年度へ繰り戻します。いずれも連続して青色申告書を提出していることが前提です。

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