動産を活かした資金調達術
動産担保融資(ABL)の仕組みと活用条件
動産担保融資(ABL)の基本的な仕組み、対象となる担保資産、審査のポイントを解説。不動産を持たない中小企業が売掛金や在庫を活用して資金調達を行う方法をまとめました。
動産担保融資(ABL: Asset Based Lending)は、不動産以外の事業用資産(売掛金、在庫、機械設備など)を担保として融資を受ける手法です。不動産を十分に保有していない中小企業でも、事業活動で生み出される資産を活用して資金調達ができる点が大きな特徴です。
金融庁は「事業性評価」に基づく融資を推進しており、不動産担保や個人保証に過度に依存しない融資手法としてABLの普及を後押ししています。ABLは銀行融資の審査で担保不足を指摘された企業にとって、有力な代替手段となります。本記事では、ABLの基本的な仕組みと利用にあたっての実務上のポイントを解説します。
ABLの基本的な仕組み
ABLは、企業が保有する動産(売掛金、在庫、機械設備等)に担保権を設定し、その担保価値に基づいて融資枠を決定する仕組みです。担保権の設定方法は、売掛金については「債権譲渡登記」(動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律に基づく)、動産については「動産譲渡登記」を行います。
従来の不動産担保融資との違いは、担保資産が流動的(変動する)であることです。売掛金は毎月入金と発生を繰り返し、在庫は仕入と販売で増減します。そのため、ABLでは定期的なモニタリング(担保資産の報告)が融資条件として義務づけられます。一般的には毎月、売掛金の明細や在庫の棚卸報告を金融機関に提出します。
融資限度額は「担保資産の評価額 x 掛目(アドバンスレート)」で算出されます。掛目は資産の種類や流動性によって異なり、売掛金(優良先)は70%から80%程度、在庫(換金性の高いもの)は30%から50%程度、機械設備は20%から40%程度が一般的です。
ABLに適した企業の特徴
ABLの利用に適しているのは、不動産を十分に保有していないが、安定した売掛金や換金性のある在庫を持つ企業です。
製造業、卸売業、物流業など、売掛金や在庫が事業規模に比して大きい業種では、ABLによって従来よりも多くの融資枠を確保できる可能性があります。特に、大手企業向けの売掛金を多く保有する企業は、売掛先の信用力が評価されるため、自社の財務内容が多少弱くても有利な条件を引き出せることがあります。
一方、サービス業やIT業など、物的な在庫を持たず売掛金も少額な業種では、ABLの活用が難しい場合があります。担保に供する資産の量と質がABLの利用可否を左右します。
成長期にあって運転資金が増加している企業にとっても、ABLは有効な手段です。売上の拡大に伴って売掛金や在庫が増加すると、ABLの融資枠も自動的に拡大するため、成長に合わせた資金調達が可能になります。
ABL利用時の実務上の注意点
ABLには定期的なモニタリング報告の義務が伴います。毎月の売掛金明細や在庫報告を正確に作成・提出する必要があり、管理体制が整っていない企業にとっては事務負担が増加します。経理部門のリソースを考慮したうえで導入を検討してください。
担保資産の評価は金融機関によって異なるため、複数の金融機関に相談して条件を比較することが重要です。ABLの取扱実績が豊富な金融機関ほど、動産評価のノウハウが蓄積されており、適正な掛目を設定してもらえる傾向があります。
ABLの融資金利は、一般的な不動産担保融資やプロパー融資と比べてやや高めに設定されるケースが多くあります。ABLを含む各種調達手段のコスト比較は資金調達方法の比較ガイドで整理しています。これは、動産の管理・モニタリングにかかるコストが金利に反映されるためです。実質的な調達コスト(金利+手数料)を計算したうえで、他の調達手段との比較を行ってください。
債権譲渡登記と風評リスク
債権譲渡登記を行っても取引先に通知が届くことはありませんが、登記情報は誰でも閲覧可能です。風評リスクを懸念する場合は、金融機関と相談のうえ対応策を検討してください。
まとめ
要点
- ABLは不動産に依存しない資金調達手段として、売掛金や在庫を豊富に持つ中小企業に適している
- 定期的なモニタリング報告が必要となるため、社内の管理体制を整備したうえで利用を検討する
- 担保資産の質と量が融資条件に直結するため、売掛金の管理精度を高めることが有利な条件を引き出す鍵
ABLの導入検討や資金調達全般について専門家への相談をご希望の場合は、無料相談からお問い合わせください。
よくある質問
- Q. ABLではどのような資産を担保にできますか?
- A. 売掛金、在庫(原材料・仕掛品・製品)、機械設備、車両などが対象です。売掛金を担保とするケースが最も多く、在庫担保がそれに次ぎます。知的財産権を担保とするABLも一部の金融機関で取り扱いがあります。
- Q. ABLとファクタリングの違いは何ですか?
- A. ABLは売掛金を担保にして融資を受ける仕組みで、売掛金の所有権は企業に残ります。ファクタリングは売掛金を売却(譲渡)して資金化する取引で、売掛金の所有権が買い手に移転します。ABLはBS上「借入金」として計上され、ファクタリングは「売掛金の減少」として処理されます。
- Q. ABLの融資額はどの程度ですか?
- A. 担保資産の掛目(評価率)に基づいて融資限度額が決まります。売掛金であれば70%から80%程度、在庫であれば30%から50%程度が一般的な掛目です。対象となる担保資産の総額に掛目を乗じた金額が融資枠の上限の目安になります。
- Q. ABLの審査期間はどのくらいですか?
- A. 金融機関や担保資産の内容によって異なりますが、初回の審査には1ヶ月から3ヶ月程度かかることが一般的です。担保資産の評価(デューデリジェンス)に時間を要するため、通常の銀行融資よりも審査期間が長くなる傾向があります。