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無料で使える公的支援の活用

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事業承継・引継ぎ支援センター|活用法と相談

事業承継・引継ぎ支援センターの概要と活用法を解説。無料相談の流れ、支援内容、M&A仲介会社との違い、実際の活用事例を中小企業の経営者向けにまとめました。

中小企業の経営者が事業承継を検討する際、最初の相談先として知っておきたいのが「事業承継・引継ぎ支援センター」です。中小企業庁の委託事業として全国47都道府県に設置されており、後継者不在に悩む企業と事業の買い手をつなぐマッチング支援を無料で提供しています。

2021年度から名称が「事業引継ぎ支援センター」と「事業承継ネットワーク」を統合して現在の形となり、事業承継全般に関する相談窓口として機能が拡充されました。本記事では、センターの具体的な支援内容と、活用する際のポイントを解説します。

事業承継・引継ぎ支援センターとは

設置の背景と目的

中小企業庁の調査によれば、日本国内の中小企業約358万社のうち、経営者が70歳を超えている企業は約245万社に上り、そのうち約127万社は後継者が未定とされています。放置すれば廃業が相次ぎ、雇用や地域経済に深刻な影響が及ぶことが懸念されます。

こうした事態に対応するため、国は事業承継・引継ぎ支援センターを設置し、後継者不在の中小企業に対してM&A(第三者承継)を含む事業承継の支援を行っています。運営は各地の商工会議所、産業支援機関、金融機関などに委託されています。

支援の概要

センターが提供する支援は大きく3つの柱で構成されます。

第一に「事業承継診断」があります。自社の事業承継の現状を整理し、親族内承継、従業員承継、第三者承継(M&A)のいずれが適しているかを検討する初期段階の支援です。

第二に「マッチング支援」です。後継者不在企業と、事業を引き継ぎたい企業・個人をつなぐ支援です。センター独自のデータベースに加え、民間のM&Aプラットフォームとも連携してマッチングを行います。

第三に「専門家派遣」です。M&Aの手続きに必要な企業評価、契約書作成、デューデリジェンス支援などの専門的業務について、登録専門家(税理士、弁護士、中小企業診断士等)を派遣する制度です。

センターの利用方法

相談の流れ

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利用の流れは、まず電話やウェブサイトから予約を行い、最寄りのセンターを訪問して相談員に事業概要と承継の課題を説明するところから始まります。

初回相談では、事業の現状、後継者の有無、経営者の意向、財務状況などをヒアリングしたうえで、今後の進め方について助言を受けます。M&Aが適切と判断された場合は、企業概要書(ノンネームシート)の作成に進み、マッチング活動が開始されます。

マッチングから成約まで

マッチングが成立した後は、売り手と買い手の間でトップ面談、条件交渉、デューデリジェンス、最終契約の締結へと進みます。センターはこの一連のプロセスにおいて、中立的な立場で助言を行います。

ただし、センター自体がM&A仲介を行うわけではありません。専門的な手続きが必要な場合は、登録された民間のM&A支援機関(仲介会社やFA)に取り次ぐ形をとります。この場合、民間の支援機関に対する報酬は依頼者の負担となりますが、センターへの支払いは発生しません。

M&A仲介会社との違い

費用面の比較

M&A仲介会社を利用する場合、着手金(50万〜200万円)、月額報酬(30万〜50万円)、成功報酬(取引額の1%〜5%)などの費用が発生します。一方、事業承継・引継ぎ支援センターの相談・マッチング支援は無料であり、小規模な案件でもコストを気にせず利用できる利点があります。

対応できる案件の規模

M&A仲介会社は、一定以上の売上規模(年商数千万円〜数億円以上)の案件を対象とする傾向があります。事業承継・引継ぎ支援センターは売上規模の下限を設けていないため、年商数百万円の個人事業でも支援の対象となります。

小規模な事業の引継ぎにおいては、センターを通じて個人の起業希望者とのマッチングが成立するケースもあり、廃業による地域の事業空白化を防ぐ役割を果たしています。

対応スピード

M&A仲介会社は、独自のネットワークとデータベースを活用して迅速にマッチングを進めることが強みです。一方、センターは公的機関としての手続きを経るため、マッチングの開始から成約までに時間を要するケースもあります。急ぎでM&Aを進めたい場合は、センターと民間の仲介会社を併用する選択肢も検討する価値があります。

活用のポイント

早めの相談が重要

事業承継は準備に時間がかかります。経営者の年齢や健康状態に不安が出てからでは交渉力が低下し、有利な条件での承継が難しくなります。60歳前後の段階で一度相談しておくことを推奨します。

事前準備で支援効果を高める

センターに相談する前に、直近3期分の決算書、会社の事業概要、株主構成、従業員数、主要取引先などの情報を整理しておくと、相談がスムーズに進みます。

特に決算書は企業評価の基礎資料となるため、正確な内容が反映されていることが重要です。

他の支援策との組み合わせ

事業承継税制(贈与税・相続税の納税猶予制度)や、事業承継・引継ぎ補助金の活用も並行して検討すると、承継に伴う費用負担を軽減できます。センターの相談員はこうした関連制度についても助言を行っており、総合的な承継プランの策定を支援します。

まとめ

要点

  • 事業承継・引継ぎ支援センターは全国47都道府県に設置された公的支援機関で、相談・マッチング支援が無料で利用できる
  • 年商規模の下限がなく小規模案件にも対応可能で、M&A仲介会社との併用も選択肢として有効
  • 事業承継税制や事業承継・引継ぎ補助金など関連制度の活用についても総合的な助言が受けられる

M&Aの具体的な手続きや流れについては中小企業のM&A手続きガイドで詳しく解説しています。アドバイザーの選び方はM&Aアドバイザーの選び方も参考にしてください。

事業承継の方向性やセンターの活用方法についてのご相談は、無料相談からどうぞ。

よくある質問

Q. 事業承継・引継ぎ支援センターの相談は無料ですか?
A. はい、相談は無料です。各都道府県に設置されており、事業承継に関する論点を中小企業診断士や税理士などの専門家に相談できます。センターを通じてM&Aが成約した場合でも、センターへの手数料は発生しません。ただし、民間の仲介会社やアドバイザーに業務を委託した場合は、その報酬が別途発生します。
Q. どのような企業が利用できますか?
A. 中小企業基本法に定義される中小企業であれば利用可能です。個人事業主も対象に含まれます。業種や地域による制限は特にありません。後継者が見つからない企業だけでなく、事業を買いたい側からの相談も受け付けています。
Q. M&A仲介会社と事業承継・引継ぎ支援センターのどちらを使うべきですか?
A. 案件の規模や状況によって判断が異なります。年商1億円未満の小規模案件ではセンターの支援が適しているケースが多く、年商数億円以上の案件ではM&A仲介会社の方がマッチング精度やスピードで優れる場合があります。両方に相談して比較検討するのが現実的な選択です。
Q. 事業承継・引継ぎ支援センターの相談内容は外部に漏れませんか?
A. センターの相談は秘密厳守が徹底されています。相談内容が従業員や取引先に漏れることはありません。センターの職員および関与する専門家には守秘義務が課されており、安心して相談できる体制が整備されています。

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