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コスト削減の進め方|固定費・変動費の見直しポイント

中小企業のコスト削減を固定費と変動費に分けて解説。人件費、家賃、通信費、仕入原価など費目ごとの見直し方法と、コスト削減を進める際の注意点をまとめました。聖域なき見直しの実務手順、優先順位の判断軸、効果検証のための数値管理、現場の協力を得るためのコミュニケーション設計まで実例つきで解説。

業績が伸び悩む局面でまず検討されるのがコスト削減です。しかし、やみくもにコストを削ると事業の競争力を損なうリスクがあります。効果的なコスト削減を実現するには、費用を固定費と変動費に分類し、それぞれの性質に合った見直し方法を選択することが重要です。

本記事では、中小企業が実務で取り組めるコスト削減の進め方を、固定費と変動費に分けて解説します。

コスト構造を把握する

コスト削減に着手する前に、自社のコスト構造を正確に把握することが出発点です。損益計算書の各費目を固定費と変動費に分類し、売上高に対する比率を算出します。

同業他社の平均値と比較して突出項目を見つける

中小企業庁の「中小企業の経営指標」で業種別の費用比率が確認できます。平均値を大幅に上回っている費目は、削減余地がある可能性が高い項目です。

費目ごとの比率を同業他社の平均値(中小企業庁「中小企業の経営指標」などで確認可能)と比較し、突出している項目がないかを確認します。平均値を大幅に上回っている費目は、削減の余地がある可能性が高い項目です。

固定費の見直しポイント

地代家賃

賃貸契約の更新時期に家賃の引き下げ交渉を行うのが基本です。近隣の相場と比較して割高になっていないかを調べ、根拠を示して交渉します。テレワークの導入でオフィス面積を縮小できる場合は、移転やフロア削減も選択肢になります。

保険料

法人向けの保険(火災保険、賠償責任保険、役員保険など)は、定期的に補償内容と保険金額を見直します。補償の重複がないか、過大な保険金額になっていないかをチェックし、複数の保険会社から見積もりを取って比較します。

通信費・サブスクリプション費用

法人契約の携帯電話やインターネット回線は、プランの見直しや契約先の変更で大幅に削減できることがあります。業務で利用しているクラウドサービスやサブスクリプション型のソフトウェアは、利用状況を棚卸しして、使われていないものは解約します。

リース料

リース契約の満了時に再リースへ切り替えると、リース料は大幅に低下するのが一般的です。また、リース物件の入替え時に複数のリース会社から見積もりを取ることで、有利な条件を引き出せる場合があります。

光熱費

事務所・店舗・工場の電気料金とガス料金は、見直しが後回しにされやすい費目です。2016年の電力自由化以降、大手電力会社から新電力への切り替えが選択肢として定着しており、使用量が多い事業所ほど切り替えによる削減幅が大きくなります。現在の契約が自由化前の旧プランのままになっているケースも少なくないため、一度確認する価値があります。電気・ガスの契約内容や切り替え手続きの詳細は電気ガス開通ナビでも解説されています。

変動費の見直しポイント

仕入原価

仕入先との価格交渉、仕入先の複数化による競争環境の構築、発注ロットの見直し(まとめ買いによるボリュームディスカウント)が基本的なアプローチです。ただし、過度な値下げ要求は取引関係の悪化につながるため、長期的なパートナーシップを重視した交渉が求められます。

外注費

外注業務の内容を精査し、内製化できる業務がないかを検討します。逆に、固定費化している業務を外注に切り替えることで、売上変動に応じたコスト調整が可能になる場合もあります。外注先の見直しや相見積もりの実施も定期的に行うべきです。

物流費

配送ルートの最適化、共同配送の活用、配送頻度の見直しなどが削減策として挙げられます。荷物のサイズや重量に応じた最適な配送サービスの選択も、細かいながら積み重ねると大きな効果を生みます。

顧客価値に直結するコストの削減は慎重に

商品品質を維持するための原材料費やサービス品質を保つための人員配置など、顧客への提供価値に直結するコストを安易に削ると、売上減少や顧客離れを招くリスクがあります。間接費から優先的に着手してください。

コスト削減を進める際の注意点

コスト削減は短期的な利益改善に有効ですが、顧客への提供価値に直結するコストを削ると、売上の減少や顧客離れにつながるリスクがあります。削減の優先順位は、顧客への影響が小さい間接費から着手し、直接費の削減は慎重に検討することが原則です。

また、一度削減した費用が元に戻らないよう、削減後のコスト水準を維持する仕組み(予算管理、承認ルールの見直し、定期的なコスト比較)を整えることも重要です。

コスト削減の効果を定着させる仕組み

コスト削減を一時的な取り組みに終わらせず、効果を持続させるには仕組み化が不可欠です。

予算管理の厳格化はその第一歩です。費目ごとに月次の予算枠を設定し、実績との対比を毎月確認する運用を導入します。予算を超過した場合は原因を分析し、翌月以降の支出に反映させるPDCAサイクルを回すことで、コスト水準の逆戻りを防止できます。

承認ルールの見直しも有効です。一定金額以上の支出には上長の承認を必須とし、「なぜその支出が必要なのか」を申請者に説明させる仕組みを設けます。これにより、惰性的に続いている不要な支出に歯止めがかかります。

定期的な費目の棚卸しも推奨されます。半期に一度、全ての費目を洗い出し、利用頻度の低いサブスクリプションや契約内容が実態に合わなくなったサービスを見直します。この棚卸しを経営者自身が主導することで、コスト意識を組織全体に浸透させる効果が期待できます。

公的制度の活用によるコスト負担の軽減

コスト削減の一環として、公的な支援制度を活用する方法もあります。IT導入補助金を利用した業務効率化ツールの導入、業務改善助成金を活用した設備投資による生産性向上は、初期投資の負担を抑えつつコスト構造を改善できる手段です。

中小企業庁が提供する経営力向上計画の認定を受ければ、固定資産税の軽減措置(一定の設備に対する固定資産税の課税標準の特例)を受けられるケースもあります。こうした制度を組み合わせることで、コスト削減の効果を一層高めることが可能です。

まとめ

この記事のポイント

  • 固定費と変動費に分類し、金額の大きい費目から優先的に見直す
  • 顧客価値に直結しない間接費から着手し、直接費の削減は慎重に判断する
  • 予算管理の厳格化と承認ルールの整備で、削減効果の持続を仕組み化する
  • IT導入補助金や業務改善助成金など公的制度も活用してコスト構造を改善する

コスト削減と並行して、収益構造の改善にも取り組むことで経営基盤はさらに強化されます。利益改善の具体的な方法資金繰り表の作り方も参考にしてください。

コスト構造の見直しや財務改善に関するご相談は、無料相談からお問い合わせください。

よくある質問

Q. 固定費と変動費の違いは何ですか?
A. 固定費は売上の増減にかかわらず一定額が発生する費用で、家賃、正社員の給与、保険料、リース料などが該当します。変動費は売上に連動して増減する費用で、原材料費、外注費、販売手数料、物流費などが該当します。コスト削減は両方にアプローチすることが効果的です。
Q. コスト削減で最初に手をつけるべき費目はどこですか?
A. まず金額の大きい費目から着手するのが効率的です。多くの中小企業では人件費、家賃、仕入原価がコストの大部分を占めています。ただし、人件費の削減は従業員のモチベーションに影響するため、まずは家賃交渉や仕入条件の見直しなど、従業員に直接影響しない費目から始めることが重要です。
Q. コスト削減と品質低下のバランスはどう取るべきですか?
A. 顧客に提供する価値に直結するコスト(商品の品質を維持するための原材料費、サービス品質を保つための人員配置など)は安易に削減すべきではありません。削減対象は、顧客への提供価値に直接影響しない間接費や、業務プロセスの非効率から生じている無駄なコストを優先的に検討します。
Q. コスト削減の効果を持続させるにはどうすればよいですか?
A. 一時的な削減で終わらせないためには仕組み化が重要です。費目ごとの月次予算管理と実績対比の運用を導入し、一定金額以上の支出に上長の承認ルールを設けます。半期に一度、全費目の棚卸しを行い、利用頻度の低いサブスクリプションや実態に合わなくなった契約を見直す習慣をつけることで、コスト水準の逆戻りを防止できます。

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