銀行はここを見ている
銀行が見るBS|融資審査で重視されるポイント
銀行の融資審査でBSのどこが見られるかを解説。自己資本比率、債務償還年数、不良資産の有無など、金融機関が重視する指標と改善策をまとめました。自己資本比率30%以上の業種別目安、債務償還年数10年以内の判定基準、不良資産の見つけ方、決算書から銀行が抽出する5つの数字、改善計画書の作り方まで融資審査対策として整理しました。
「決算書を提出してください」と金融機関から求められたとき、損益計算書(PL)の利益には自信があるのに融資条件が厳しくなった、という経験をお持ちの経営者は少なくないかもしれません。金融機関の融資審査では、PLの利益以上に貸借対照表(BS)の内容が重視されるケースが多いのが実情です。
本記事では、銀行がBSのどこをどのように見ているのかを具体的に解説し、融資審査で評価されるBSに近づけるための改善ポイントを整理します。
銀行がBSを重視する理由
PLが黒字でも融資が通らないケース
PLで利益が出ていても、BSに不良資産が蓄積している場合、金融機関は実質的な返済能力を低く見積もります。帳簿上の数字だけでなく「実態BS」での評価が基本となるため、BS改善への取り組みが融資条件を左右します。
PLは一定期間の経営成績を示す「フロー」の情報ですが、BSはある時点の財産と債務の全体像を示す「ストック」の情報です。PLで利益が出ていても、BSに不良資産が蓄積していれば、実質的な返済能力は帳簿上の数字よりも低くなります。
金融機関は融資した資金が確実に返済されるかを判断する必要があるため、会社の体力を映し出すBSを重点的に分析します。特に、金融庁が「金融検査マニュアル」で示していた「実態BS」の考え方は、マニュアル廃止後も金融機関の実務に根づいています。実態BSとは、帳簿上のBSから不良資産や含み損を控除し、含み益を加算した実質的な財政状態のことです。
ケーススタディ:実態BSで評価が逆転した製造業B社
製造業B社は総資産2億円、帳簿上の純資産は3,000万円で、自己資本比率は15%でした。一見すると債務超過ではなく、融資審査上も大きな問題はないように見えます。しかし、BSの内訳を精査すると、役員貸付金が2,500万円、回収見込みのない売掛金が1,200万円、販売不能な不良在庫が800万円計上されていました。
これらの不良資産を控除した実態純資産は、3,000万円 - 2,500万円 - 1,200万円 - 800万円 = マイナス1,500万円となり、実態では1,500万円の債務超過と判定されました。当然ながら、金融機関からの新規融資は困難な状況に陥りました。
B社はここから改善に着手しました。まず、役員貸付金については役員報酬からの天引きにより2年計画で全額返済するスケジュールを策定しました。回収不能な売掛金1,200万円は貸倒損失として損金処理し、不良在庫800万円は評価減を実施しました。短期的にはPL上で約2,000万円の損失が発生しましたが、BSから不良資産が一掃されたことで実態BSと帳簿上BSの乖離が大幅に縮小しました。2期後には実態自己資本比率が12%まで回復し、金融機関との融資交渉において条件が改善されています。
銀行が見る主要な指標
自己資本比率
自己資本比率(純資産÷総資産×100)は、財務の安定性を示す最も基本的な指標です。中小企業庁の経営指標では、全業種平均で40%前後が目安とされていますが、業種によって大きな差があります。製造業は設備投資が大きいため比較的高い水準が求められ、小売業やサービス業は資産規模が小さいため低めでも許容される傾向にあります。
自己資本比率の評価目安
金融機関の一般的な評価基準として、30%以上であれば良好、20%前後であれば注意、10%を下回ると要注意と判断されることが多いとされています。
債務償還年数
債務償還年数は、有利子負債を営業キャッシュフロー(簡便的には経常利益+減価償却費)で割った数値で、借入金の返済に何年かかるかを示します。一般的に10年以内が望ましいとされ、20年を超えると返済能力に懸念があるとみなされます。
この指標は、BSの借入金残高とPLの収益力を組み合わせて算出するため、BSの改善(有利子負債の圧縮)とPLの改善(利益の増加)の両面からアプローチが可能です。
流動比率と当座比率
流動比率(流動資産÷流動負債×100)は短期の支払い能力を示す指標で、200%以上が理想、120%以上が最低限の目安とされています。当座比率(当座資産÷流動負債×100)は、流動資産から在庫を除いた、より厳密な短期支払い能力の指標です。100%以上が望ましいとされます。
銀行が懸念するBS項目
役員貸付金・仮払金
役員貸付金は融資審査の大きなマイナス要因
役員貸付金の残高が大きい場合、金融機関は「融資した資金が私的に流用されている」と判断する傾向があります。融資の減額要因や審査上のマイナス評価に直結するため、早期の解消計画が必要です。
役員貸付金は、会社から役員個人への資金の流出を意味し、金融機関は「融資した資金が事業に使われず私的に流用されている可能性」を疑います。金額が大きい場合は、融資の減額要因や審査上の大きなマイナス要素となります。仮払金や立替金の残高が長期にわたって残っている場合も同様に、資金使途の不透明さが問題視されます。
滞留売掛金・不良在庫
売掛金の回転期間(売掛金÷月商)が業界平均を大幅に上回っている場合、回収不能な売掛金が含まれている可能性が疑われます。棚卸資産についても、回転期間が長期化している場合は不良在庫の存在が懸念されます。
金融機関はこれらの資産を「実質的な価値がない」と判断し、実態BSでは資産から控除して評価します。その結果、帳簿上は資産超過でも、実態では債務超過と判定されるケースもあります。
繰延資産・無形資産
創立費、開業費、開発費などの繰延資産は、支出済みの費用を資産として計上しているものであり、換金性がありません。金融機関の実態評価ではゼロとみなされることが一般的です。ソフトウェアなどの無形固定資産も、実態に即した評価が行われます。
融資審査で評価されるBSを作るために
不良資産の整理が最も直接的な改善策です。回収不能な売掛金は貸倒処理し、価値のない在庫は評価減または廃棄処分を行い、役員貸付金は計画的に回収します。回収が難しい不良債権については、[サービサーへの売却(不良債権売却の手順)](/mishuukin/furyou-saiken-baikyaku-tejun/)という方法もあります。短期的にはPLにマイナスの影響が出ますが、BSの健全性が向上することで、金融機関からの評価は中長期的に改善します。
借入金の構成についても見直しが重要です。短期借入金への依存度が高い場合は、長期借入金への借り換えや、自己資金の充実によって財務構造を安定させることが望まれます。
まとめ
この記事のポイント
- 銀行の融資審査ではPLの利益以上にBSの内容が重視され、「実態BS」での評価が基本となる
- 自己資本比率、債務償還年数、不良資産の有無が主な評価指標であり、帳簿上BSとの乖離が大きいと融資条件が厳しくなる
- 不良資産の整理と借入金構成の適正化を計画的に進めることが、融資条件の改善への近道である
BS改善の全体像や未収金買取によるBS正常化について詳しく知りたい方、または自社のBSを見直したい方は無料相談をご利用ください。
自己資本比率・債務償還年数を計算する
自社の最新BSを用いて、自己資本比率と債務償還年数を算出し、金融機関の評価基準と比較する
不良資産の残高を洗い出す
役員貸付金・仮払金・滞留売掛金・不良在庫の残高をリストアップし、実態価値との乖離額を把握する
実態BSを作成する
帳簿上BSから不良資産を控除した実態BSを作成し、実態自己資本比率と帳簿上の数字との差を確認する
よくある質問
- Q. 銀行はBSのどの項目を最も重視しますか?
- A. 自己資本比率(純資産÷総資産)と実態純資産額が最も重視されます。自己資本比率は財務の安定性を示す基本指標であり、実態純資産は帳簿上の純資産から不良資産や含み損を控除した実質的な資本力を表します。金融庁の「金融検査マニュアル」(現在は廃止されているものの実務では参照が続いている)でも、実態BSの把握が求められていました。
- Q. 債務超過でも融資は受けられますか?
- A. 帳簿上の債務超過であっても、実態ベースで資産超過であれば融資が可能な場合があります。含み益のある不動産や、時価が帳簿価額を上回る有価証券がある場合は、実態BSを作成して金融機関に説明することが重要です。ただし、実態でも債務超過の場合は新規融資は困難であり、経営改善計画の策定が求められます。
- Q. 融資審査で不利になるBSの特徴はありますか?
- A. 仮払金・立替金・貸付金(特に役員貸付金)の残高が大きい、棚卸資産の回転期間が異常に長い、売掛金の滞留が見られる、繰延資産の計上額が大きいといった特徴があると、資産の実在性や回収可能性に疑義があるとして審査上不利に働きます。
- Q. 実態BSはどのように作成すればよいですか?
- A. 帳簿上のBSをもとに、各資産科目の実態価値を評価して修正します。売掛金は回収可能性を精査して回収不能分を控除し、棚卸資産は販売可能性を評価して不良在庫分を控除します。有価証券や不動産は時価に置き換え、含み損益を反映します。役員貸付金や仮払金は回収見込みのない分を控除します。作成にあたっては税理士や公認会計士の助言を受けることが推奨されます。
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