雇用保険の手続きガイド|加入から離職票まで
雇用保険の加入手続き、被保険者資格の取得届・喪失届、離職票の作成方法を解説。パート・アルバイトの加入要件や手続き期限、電子申請の方法など、中小企業の実務担当者が押さえるべきポイントをまとめます。
雇用保険は、労働者が失業した場合の生活安定や再就職支援を目的とした公的保険制度です。雇用保険法に基づき、一定の要件を満たす労働者を雇用する事業主には、被保険者の資格取得届や資格喪失届の提出が義務付けられています。手続きの遅延や誤りは、従業員が失業給付を受けられなくなるなど重大な不利益を招く可能性があります。本記事では、雇用保険の加入から離職票の交付までの手続きを、中小企業の実務担当者向けに解説します。
雇用保険の適用事業と被保険者
適用事業所の要件
雇用保険法第5条により、労働者を1人でも雇用する事業は、原則として雇用保険の適用事業となります。法人・個人を問わず、農林水産業の一部を除き強制適用です。事業を開始した日から10日以内に、管轄のハローワークに適用事業所設置届を提出する必要があります。
被保険者の範囲
雇用保険の被保険者となる要件は、1週間の所定労働時間が20時間以上であること、31日以上の雇用見込みがあることの2点です(雇用保険法第6条)。正社員だけでなく、パートタイマー、アルバイト、契約社員であっても、これらの要件を満たせば被保険者となります。
適用除外となるのは、65歳以上で新たに雇用される者のうちマルチジョブホルダー制度の対象とならない者、昼間学生(定時制や通信制の学生を除く)、季節的事業に4か月以内の期間で雇用される者などです。ただし、65歳以上の被保険者(高年齢被保険者)については、2017年の法改正により適用範囲が拡大されています。
資格取得届の手続き
届出の内容と期限
新たに雇い入れた労働者が被保険者に該当する場合、雇用保険被保険者資格取得届を管轄のハローワークに提出します。届出期限は、被保険者となった日の属する月の翌月10日までです(雇用保険法施行規則第6条)。
届出書には、被保険者の氏名、生年月日、性別、被保険者番号(前職がある場合)、雇用形態、賃金額、就職日、1週間の所定労働時間などを記載します。被保険者番号が不明の場合は、前職の事業所名などの情報をもとにハローワークで検索してもらえます。
パート・アルバイトの取得届
パートタイマーやアルバイトの場合、雇用契約書や労働条件通知書で所定労働時間と雇用見込み期間を確認し、被保険者要件を満たすかどうかを判断します。シフト制の場合は、実際の勤務実態ではなく、雇用契約上の所定労働時間で判断します。
所定労働時間が週20時間未満で契約していたが、実態として恒常的に20時間以上勤務しているケースでは、実態に基づき被保険者資格を取得させる必要がある場合があります。このような場合はハローワークに相談してください。
資格喪失届と離職票の手続き
資格喪失届の提出
従業員が退職した場合、雇用保険被保険者資格喪失届を提出します。届出期限は、被保険者でなくなった日の翌日から起算して10日以内です。退職日の翌日が資格喪失日となります。
離職証明書の作成
退職者が失業等給付(基本手当)の受給を希望する場合、資格喪失届と併せて雇用保険被保険者離職証明書(3枚複写)を提出する必要があります。離職証明書には、退職前の賃金支払状況(離職日以前の賃金締切日ごとの賃金額と勤務日数)と離職理由を記載します。
賃金の記載は、離職日から遡って最大12か月分(場合によってはそれ以上)が必要です。賃金台帳や出勤簿を参照しながら正確に記入してください。賃金には基本給のほか、通勤手当、残業手当、住宅手当なども含まれます。ただし、臨時に支払われるもの(慶弔見舞金など)は含みません。
離職理由の記載
離職理由は、失業等給付の給付日数や給付制限期間に直接影響するため、正確な記載が重要です。自己都合退職、会社都合退職(解雇・退職勧奨)、契約期間満了、定年退職など、離職理由に応じた番号を選択します。
離職理由について事業主と退職者の見解が異なる場合、退職者が離職証明書の記載内容に異議がある旨をハローワークに申し出ることができます。最終的な離職理由はハローワークが判断します。
離職票の交付
ハローワークに離職証明書を提出すると、離職票-1と離職票-2が交付されます。事業主はこれらを速やかに退職者に送付する義務があります。退職者はこの離職票をもってハローワークに求職の申込みを行い、失業等給付の受給手続きを開始します。
離職票の送付が遅れると、退職者の失業等給付の受給開始が遅延し、退職者に不利益が生じます。退職が決まった時点で手続きの準備を進め、退職日後速やかに届出を行ってください。
電子申請の活用
雇用保険の各種届出は、e-Gov電子申請システムやハローワークインターネットサービスを利用してオンラインで行うことができます。電子申請を利用することで、窓口への訪問が不要になり、24時間いつでも届出が可能です。
中小企業でも電子申請は利用可能であり、社会保険労務士に届出を委託している場合は、社会保険労務士がe-Govを通じて電子申請を代行してくれるケースもあります。
まとめ
- 雇用保険の被保険者要件は週20時間以上の所定労働時間と31日以上の雇用見込みであり、パート・アルバイトも対象となる
- 資格取得届は翌月10日まで、資格喪失届と離職証明書は離職日翌日から10日以内の提出が義務付けられている
- 離職理由は失業等給付の内容に直結するため正確な記載が不可欠であり、退職者への離職票の速やかな交付も重要である
よくある質問
- Q. 雇用保険に加入させる義務がある従業員の条件は何ですか?
- A. 1週間の所定労働時間が20時間以上であり、31日以上の雇用見込みがある労働者は、原則として雇用保険の被保険者となります(雇用保険法第6条)。パートやアルバイトであっても、これらの要件を満たせば加入させる義務があります。なお、昼間学生は原則として適用除外です。
- Q. 雇用保険の加入手続きの期限はいつですか?
- A. 被保険者資格取得届は、被保険者となった日の属する月の翌月10日までに管轄のハローワークに提出する必要があります(雇用保険法施行規則第6条)。届出が遅延すると、遡及手続きが必要となり、事務負担が増加します。
- Q. 離職票はいつまでに交付する必要がありますか?
- A. 被保険者資格喪失届と離職証明書は、被保険者でなくなった日の翌日から起算して10日以内にハローワークに提出する義務があります。退職者が失業給付を受けるために必要な書類であるため、速やかな手続きが求められます。
- Q. 雇用保険の届出は電子申請でもできますか?
- A. はい。雇用保険の各種届出はe-Gov電子申請システムを利用してオンラインで行うことができます。2020年4月からは、特定の法人(資本金等が1億円超の法人など)について電子申請が義務化されています。中小企業でもe-Govやハローワークインターネットサービスを利用した電子申請が推奨されています。