勤怠管理は労務管理の基盤であり、正確な労働時間の記録は残業代の適正支払い、36協定の遵守、有給休暇の管理に直結します。しかし、中小企業ではタイムカードやエクセルによる手作業の管理が依然として多く、集計ミスや法令違反のリスクを抱えているケースが少なくありません。2019年の労働安全衛生法改正(第66条の8の3)により、客観的な方法による労働時間の把握が全事業場に義務化されたことも踏まえ、本記事では中小企業が勤怠管理システムを導入する際の選び方と実務上のポイントを解説します。

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勤怠管理システムが必要とされる背景

労働基準法は使用者に対し、労働者の労働時間を適正に把握する義務を課しています。厚生労働省が2017年に策定した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では、タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として、始業・終業時刻を確認・記録することが求められています。

手書きの出勤簿や自己申告のみによる管理は、このガイドラインが求める「客観的な記録」に該当しないため、労働基準監督署の調査で指摘を受ける可能性があります。また、2020年4月から中小企業にも適用された時間外労働の上限規制(労働基準法第36条第6項)により、月45時間・年360時間の上限を超える時間外労働の管理がこれまで以上に厳格化されています。

紙のタイムカードやエクセルでは、リアルタイムでの残業時間の累計把握が困難です。月末に集計してみたら上限を超えていたという事態は、是正勧告の対象となるだけでなく、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金という刑事罰のリスクを伴います。

中小企業における典型的な課題

中小企業の勤怠管理でよく見られる問題として、タイムカードの打刻と実際の労働時間のズレ、月末の集計に経理担当者が丸一日かかる、有給休暇の残日数を正確に把握できていない、直行直帰やテレワーク時の労働時間が管理できないといった点が挙げられます。これらの問題は勤怠管理システムの導入により大部分が解消できます。

クラウド型勤怠管理システムの選び方

中小企業が導入するシステムとして、現在はクラウド型が主流です。自社サーバーの設置が不要で、初期費用を抑えて導入でき、法改正への対応もベンダー側がアップデートで対応してくれる点が大きなメリットです。

選定の際にチェックすべきポイントを整理します。

まず打刻方法の柔軟性です。ICカード、スマートフォンのGPS打刻、パソコンのWebブラウザ打刻、顔認証など、自社の勤務形態に合った打刻手段が用意されているかを確認します。店舗勤務がメインの場合はタブレット打刻、テレワーク対応が必要な場合はPC・スマホ打刻が必須です。

次に、自社の就業規則や勤務体系に対応できるかを確認します。変形労働時間制、フレックスタイム制、シフト制、裁量労働制など、導入している制度に応じた労働時間の計算ができなければ意味がありません。特に1カ月単位の変形労働時間制を採用している企業では、月ごとの所定労働時間の設定や法定外残業の自動計算機能が重要です。

費用と他システムとの連携

クラウド型の月額費用は1人あたり200円から500円が一般的です。従業員50人の企業なら月額1万円から2万5,000円程度で、年間12万円から30万円の投資になります。これを手作業の集計にかかる人件費と比較して判断してください。

給与計算ソフトとのデータ連携も重要な選定基準です。勤怠データを手入力で給与計算に反映する作業は、ミスの温床であり非効率です。freee人事労務、マネーフォワードクラウド給与、弥生給与などの主要な給与計算ソフトとAPI連携やCSV連携ができるかを事前に確認しましょう。

導入のステップと社内展開のコツ

勤怠管理システムの導入は、一般的に以下の流れで進めます。

第一に、現行の勤務ルールと就業規則を整理します。システムに設定すべき項目(所定労働時間、休憩時間、締め日、残業計算のルール、有給休暇の付与基準など)を洗い出し、ドキュメント化します。この工程を省略すると、導入後に設定変更が頻発し、現場が混乱する原因になります。

第二に、無料トライアルを活用して実際の操作感を確認します。管理者画面の使いやすさだけでなく、従業員が日常的に使う打刻画面や申請画面の操作性も重視してください。ITに不慣れな従業員がいる職場では、画面のシンプルさが定着の鍵を握ります。

第三に、移行期間を設けて並行運用を行います。いきなり旧システムを廃止するのではなく、1カ月程度はタイムカードとシステムの両方で記録を取り、データに齟齬がないことを確認してから完全移行します。

運用定着のポイント

導入後に最も重要なのは、打刻漏れや申請忘れへの対応ルールを明確にしておくことです。打刻を忘れた場合の事後申請フロー、上長の承認期限、月次締め処理の手順をマニュアル化し、全従業員に周知してください。

また、管理者がシステムのアラート機能を活用して、残業時間が月36時間を超えた時点で本人と上長に通知する、有給休暇の取得が少ない従業員に取得を促すといった運用を行うことで、法令遵守と従業員の健康管理を同時に実現できます。

まとめ

この記事のポイント

  • 2019年の法改正で客観的な労働時間把握が義務化。手書き出勤簿だけの管理は法的リスクあり
  • クラウド型システムは初期費用を抑えて導入でき、法改正への自動対応も可能
  • 並行運用期間を設けて移行し、打刻漏れ対応ルールの周知で定着を図る

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