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経営改善計画の作り方|銀行提出用の策定ポイント

銀行に提出する経営改善計画書の作り方を解説。計画が必要な場面、構成と記載項目、数値計画の策定方法、金融機関との交渉のコツまで。405事業や中小企業活性化協議会の活用方法も紹介。

銀行から「経営改善計画を出してください」と言われたとき、何をどう書けばよいのか分からない。中小企業の経営者にとって、経営改善計画の策定は普段の業務にはない特殊なタスクです。

しかし、経営改善計画は単なる書類作成ではありません。自社の経営課題を構造的に整理し、具体的な改善策と数値目標を金融機関に示すことで、リスケジュール(返済条件変更)や追加融資の合意を得るための交渉材料です。

本記事では、銀行に提出する経営改善計画書の構成・記載項目・数値計画の作り方と、金融機関との交渉のポイントを解説します。

経営改善計画が必要な場面

金融機関から求められるケース

経営改善計画が必要になる典型的な場面は以下のとおりです。

リスケジュール(条件変更)の申込時: 返済が困難になり、金融機関に元金据置や返済額の減額を申し込む際に、計画の提出を求められます。金融機関は「どのような改善を行い、いつ正常な返済に戻すのか」を確認する必要があるためです。

業績悪化時の融資継続審査: 2期以上連続で赤字、または債務超過に陥った場合、融資の継続可否を判断するために計画の提出を求められることがあります。

新規融資の申込時: 業績が悪化している状態で新規融資を申し込む場合、金融機関は計画の提出を条件とすることがあります。

自主的に策定すべきケース

金融機関から求められなくても、以下の状況では自主的に経営改善計画を策定すべきです。

  • 売上が3期連続で減少している: 構造的な問題の可能性が高い
  • 営業利益率が業界平均を大幅に下回っている: コスト構造の見直しが必要
  • 資金繰りが常にギリギリ: 近い将来の資金ショートリスクがある
  • 借入金の返済が重荷になっている: 有利子負債月商倍率が10倍を超えている

自主的に計画を策定し、金融機関に提示することで、「経営者が課題を認識し、改善に取り組んでいる」という姿勢を見せることができます。

公的支援制度の活用

経営改善計画の策定にあたっては、以下の公的支援制度を活用できます。

制度支援内容費用補助
405事業(早期経営改善計画策定支援)認定支援機関による計画策定支援費用の2/3(上限25万円)
中小企業活性化協議会再生計画の策定支援、金融機関との調整協議会の支援は無料
よろず支援拠点経営全般の相談、計画策定のアドバイス無料

特に405事業は、早期の段階で専門家の支援を受けられるため、活用を検討してください。認定経営革新等支援機関(税理士、中小企業診断士、金融機関等)に相談すると、制度の利用手続きを案内してもらえます。

計画書の構成と記載項目

標準的な構成

金融機関に提出する経営改善計画書の構成は、概ね以下のとおりです。

  1. 企業概要
  2. 経営悪化の原因分析
  3. 経営改善の基本方針
  4. 具体的な改善施策(アクションプラン)
  5. 数値計画(損益計画・資金繰り計画・BS計画)
  6. 金融支援の依頼内容
  7. 実行体制とモニタリング計画

企業概要

会社の基本情報、事業内容、沿革、組織体制、主要取引先、株主構成を記載します。金融機関の担当者が変わった場合でも計画書だけで会社の全体像を把握できるよう、簡潔かつ正確にまとめます。

経営悪化の原因分析

計画書で最も重要なセクションの一つです。金融機関が見ているのは、「経営者が自社の問題を正確に把握しているか」という点です。

原因分析のポイントは以下の3つです。

外部要因と内部要因を分けて整理する:

区分
外部要因市場縮小、原材料価格高騰、競合の出現、法規制の変更
内部要因営業力の低下、コスト管理の甘さ、過剰な設備投資、人材の流出

数値で裏付ける: 「売上が減った」ではなく、「主力取引先A社の発注額が前年比40%減少し、売上高が年間2,000万円減少した」のように、具体的な数値を示します。

時系列で経緯を説明する: いつから業績が悪化し始め、どのような推移をたどっているのかを時系列で整理します。

具体的な改善施策

改善施策は「売上向上策」「コスト削減策」「財務改善策」の3つの柱で整理するのが分かりやすい構成です。

各施策には以下の要素を記載します。

  • 施策の内容: 何をするのか(具体的に)
  • 実施時期: いつから実施するのか
  • 担当者: 誰が責任を持つのか
  • 期待効果: どの程度の収益改善・コスト削減が見込めるのか(金額で)
  • 進捗の測定方法: どのようにモニタリングするのか

金融機関が懸念するのは、「絵に描いた餅」になっていないかという点です。すでに着手している施策や、具体的な交渉が進んでいる案件を含めることで、計画の実現可能性を示せます。

数値計画の策定方法

損益計画(PL計画)

損益計画は3〜5年分を年度ごとに作成します。月次計画まで落とし込めると、金融機関からの信頼度が高まります。

策定の手順:

1. 売上高の計画

売上高は「積み上げ方式」で策定します。既存取引先の継続売上、新規開拓による増加分、撤退・縮小による減少分を個別に積み上げ、合算します。

「前年比10%増」のような根拠のない数値は金融機関に見透かされます。取引先ごと、商品カテゴリごとに根拠を示すことが重要です。

2. 原価・変動費の計画

売上原価率の過去3〜5年の推移を分析し、改善施策の効果を加味して計画値を設定します。仕入先の変更、外注費の見直し、歩留まり改善などの施策があれば、それぞれの効果額を明示します。

3. 固定費の計画

人件費、地代家賃、減価償却費、その他固定費に分解し、それぞれ計画値を設定します。人件費については、人員数と平均給与に分解して計算すると説得力が増します。

資金繰り計画

資金繰り計画は月次で作成します。損益計画が黒字でも、資金繰りが回らなければ会社は存続できません

資金繰り表には以下の項目を含めます。

区分項目
経常収入現金売上、売掛金回収、その他収入
経常支出仕入支払、人件費、経費支払、税金等
経常収支経常収入 - 経常支出
財務収入借入金、増資
財務支出借入金返済、利息支払
財務収支財務収入 - 財務支出
月末残高前月末残高 + 経常収支 + 財務収支

金融機関が注目するのは、月末の現預金残高がプラスを維持できるかどうかです。月商の1か月分以上の手元資金を確保できる計画が望ましいでしょう。

BS計画

BS計画は年度末ごとに作成し、以下の指標の推移を示します。

  • 自己資本比率: 純資産 / 総資産
  • 有利子負債月商倍率: 有利子負債 / 月商
  • 債務超過解消の時期: 債務超過の場合、何年目に解消するか

金融機関のリスケジュールにおける実務指針では、計画期間内(概ね5年以内)に経常利益が黒字化し、有利子負債が正常な水準に戻る計画であることが求められます。

金融機関との交渉のコツ

事前準備

計画書を持参する前に、以下の準備を整えておきましょう。

試算表を最新にする: 直近月の試算表が古いと、「足元の数字も把握していない」と判断されます。計画提出時点の最新月次試算表を用意します。

質問への想定回答を準備する: 金融機関からの質問は概ね予測できます。「なぜこの売上計画が達成可能なのか」「人件費削減の具体策は」「計画どおりにいかなかった場合のリカバリー策は」といった質問への回答を準備しておきましょう。

バンクミーティングの進め方

複数の金融機関から借入がある場合は、バンクミーティング(全金融機関を集めた合同説明会)を開催するのが一般的です。

バンクミーティングの進行は以下のとおりです。

  1. 経営者から事業の現状と経営悪化の原因を説明
  2. 改善施策と数値計画を説明
  3. 金融支援の依頼内容を説明(リスケジュールの条件等)
  4. 質疑応答
  5. 各金融機関が持ち帰り、内部で検討

認定支援機関の税理士や中小企業診断士に同席してもらうと、専門的な質問への対応がスムーズになります。

金融機関が評価するポイント

金融機関が経営改善計画を評価する際の主なチェックポイントは以下のとおりです。

チェックポイント内容
経営者の姿勢問題を正面から受け止め、改善に本気で取り組む姿勢があるか
計画の合理性売上・利益の計画値に無理がないか、根拠が示されているか
改善施策の具体性施策が具体的で実行可能か、担当者と時期が明確か
数値の整合性PL・BS・資金繰りの3表の数値が整合しているか
モニタリング体制計画の進捗管理と金融機関への報告体制が整備されているか

**最も重要なのは「経営者の姿勢」**です。計画書の出来栄えよりも、経営者自身が計画の内容を理解し、自分の言葉で説明できるかどうかが決定的に重要です。

計画提出後のフォロー

計画が承認された後は、定期的に金融機関に進捗を報告します。月次または四半期ごとに試算表を提出し、計画と実績の差異を説明するのが一般的です。

計画どおりに進まない場合は、早めに金融機関に報告し、計画の修正を協議します。「報告が遅い」「都合の悪い情報を隠す」ことは金融機関からの信頼を大きく損なう行為です。

まとめ

経営改善計画は、金融機関に対して自社の再建可能性を示すための重要な書類です。原因分析の正確さ、改善施策の具体性、数値計画の合理性が求められます。

策定にあたっては、405事業や中小企業活性化協議会の支援を活用し、認定支援機関の専門家と連携して進めることを推奨します。計画の策定で終わりではなく、提出後のモニタリングと金融機関への報告を継続することが、信頼関係の維持につながります。

よくある質問

Q. 経営改善計画書は自社で作成できますか?
A. 基本的な計画書であれば自社で作成可能です。ただし、金融機関への提出を目的とする場合は、認定経営革新等支援機関(税理士・中小企業診断士等)の支援を受けて作成することを推奨します。405事業(早期経営改善計画策定支援事業)を利用すれば、専門家費用の3分の2(上限25万円)が補助されます。
Q. 経営改善計画の期間はどのくらいに設定すべきですか?
A. 一般的には3〜5年の計画期間が標準です。金融機関がリスケジュール(返済条件変更)を行う場合の返済計画と連動させるため、5年程度が求められるケースが多いです。10年以上の長期計画は現実性が低いとみなされることがあります。
Q. 経営改善計画を提出した後、計画どおりに進まない場合はどうなりますか?
A. 計画と実績の乖離が大きい場合は、金融機関に対して原因の説明と計画の修正(バンクミーティング等)が必要になります。計画の達成率が著しく低い場合は、追加の金融支援が得られなくなるリスクがあります。定期的なモニタリングと早めの計画見直しが重要です。
Q. 405事業(経営改善計画策定支援事業)とは何ですか?
A. 中小企業活性化協議会が実施する支援事業で、認定経営革新等支援機関の支援を受けて経営改善計画を策定する際の専門家費用を補助する制度です。計画策定費用の3分の2(上限25万円)、伴走支援費用の3分の2(上限25万円)が補助されます。

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