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補助金・助成金

事業承継・引継ぎ補助金の申請ガイド

事業承継・引継ぎ補助金の制度概要と申請手続きを解説。経営革新事業・専門家活用事業・廃業再チャレンジ事業の3類型の違い、対象要件、採択されるためのポイントを整理しています。

中小企業の経営者にとって、事業承継は避けて通れない課題です。中小企業庁の調査によれば、2025年までに経営者が70歳を超える中小企業は約245万社にのぼり、そのうち約半数が後継者未定とされています。事業承継には親族内承継、従業員承継、M&A(第三者への引継ぎ)などの手段がありますが、いずれも相応の費用がかかります。この費用負担を軽減するのが「事業承継・引継ぎ補助金」です。本記事では、制度の全体像と申請の実務を整理して解説します。

事業承継・引継ぎ補助金の制度概要

事業承継・引継ぎ補助金は、中小企業庁が所管する補助金で、事業承継やM&Aを契機とした経営革新、専門家活用、廃業・再チャレンジを支援する制度です。中小企業における事業承継を円滑に進め、経済の新陳代謝を促進することを目的としています。

3つの事業類型

本補助金は以下の3つの事業類型に分かれており、それぞれ対象者と補助内容が異なります。

経営革新事業は、事業承継(親族内承継・従業員承継・M&A)を契機として、新たな取り組み(新商品開発、新規顧客開拓、生産性向上など)を行う中小企業が対象です。補助上限は600万円(一定の賃上げ要件を満たす場合は800万円)、補助率は2/3以内です。

専門家活用事業は、M&Aにおいて専門家(仲介会社、FA、弁護士、公認会計士など)を活用する際の経費を補助します。買い手・売り手の双方が対象で、補助上限は600万円、補助率は2/3以内です。

廃業・再チャレンジ事業は、事業承継やM&Aが成立しなかった場合に、廃業を行い新たな事業にチャレンジする事業者を支援します。補助上限は150万円、補助率は2/3以内です。経営革新事業や専門家活用事業と併用申請できる点が特徴です。

対象となる経費

事業類型ごとに補助対象経費は異なります。経営革新事業では、設備費、広報費、外注費、委託費、旅費などが対象です。専門家活用事業では、M&A仲介手数料、デューデリジェンス費用、事業価値評価費用、契約書作成費用などが該当します。廃業・再チャレンジ事業では、廃業支援費(在庫処分費、原状回復費など)が対象です。

申請手続きと必要書類

申請は電子申請システム(jGrants)を通じて行います。手続きの流れと必要書類を確認しましょう。

申請前の準備事項

電子申請にはGビズIDプライムが必要です。GビズIDの取得には2〜3週間程度かかるため、公募開始前に準備しておくことを推奨します。

また、認定経営革新等支援機関(認定支援機関)の確認書が申請に必要となる場合があります。税理士、公認会計士、中小企業診断士、金融機関など、最寄りの認定支援機関に早めに相談してください。

主な提出書類

経営革新事業の場合、主な提出書類は以下のとおりです。

  • 事業計画書(補助事業の内容、実施体制、スケジュール、経費明細)
  • 事業承継の実施を証明する書類(株式譲渡契約書、事業譲渡契約書、代表者の交代を示す履歴事項全部証明書など)
  • 認定支援機関の確認書
  • 直近2期分の決算書(法人)または確定申告書(個人事業主)
  • GビズIDプライムのアカウント情報

専門家活用事業では、上記に加えてM&A関連の見積書や契約書(案)が必要です。

申請から採択までのスケジュール

公募は年に数回実施されており、1回の公募期間はおおむね1〜2か月です。締切後、外部有識者による審査が行われ、1〜2か月程度で採択結果が公表されます。採択後は交付決定を受けて補助事業を開始し、完了後に実績報告書を提出して補助金の交付を受けます。

採択されるための事業計画書のポイント

事業承継・引継ぎ補助金の審査は書面審査が中心です。事業計画書の質が採否を大きく左右します。

事業承継の必然性を明確にする

「なぜ今、事業承継が必要なのか」を説得力のある形で記載します。現経営者の年齢・健康状態、業界の動向、承継によって維持される雇用や技術など、事業承継の社会的意義も含めて説明できると審査員の理解を得やすくなります。

承継後の成長ビジョンを数字で示す

経営革新事業の場合、承継を契機とした新たな取り組みの具体性が問われます。新商品の市場規模、ターゲット顧客、売上見込み、投資回収の見通しなど、定量的な根拠を盛り込みましょう。

「売上を伸ばす」という抽象的な記述ではなく、「既存顧客300社への新サービス提案により初年度3,000万円の追加売上を見込む」のように具体的に記載してください。

実施体制とスケジュールを具体化する

補助事業の実施体制(誰が何を担当するか)と、月単位のスケジュールを明記します。外注や委託がある場合は、委託先の選定理由や役割分担も記載してください。実現可能性の高さが審査のポイントになります。

申請時の注意点と活用のヒント

制度を最大限に活用するために、いくつかの実務上の注意点を確認しておきましょう。

交付決定前の経費は対象外

補助事業は交付決定日以降に開始する必要があります。交付決定前に発注・契約・支払いを行った経費は補助対象になりません。M&Aの仲介契約など、タイミングが重要な案件では、公募スケジュールと事業スケジュールの調整が不可欠です。

「中小企業のM&Aに関するガイドライン」への対応

専門家活用事業では、中小企業庁が策定した「中小M&Aガイドライン」に沿ったM&Aプロセスであることが求められます。仲介会社やFAを選ぶ際は、同ガイドラインに準拠していることを確認してください。M&A支援機関登録制度に登録された事業者を選ぶのが安心です。

廃業・再チャレンジ事業の併用

事業承継やM&Aが不成立となった場合に備え、廃業・再チャレンジ事業の併用申請を検討するのも一つの手段です。M&Aを進めつつ、万が一の場合の出口も確保しておくことで、計画的な事業整理が可能になります。

まとめ

事業承継・引継ぎ補助金の申請にあたり、押さえておくべきポイントは次の3つです。

  • 経営革新事業・専門家活用事業・廃業再チャレンジ事業の3類型から自社の状況に合った類型を選び、補助対象経費を正確に把握する
  • GビズIDプライムの取得と認定支援機関への相談は早めに着手し、公募締切に余裕を持って準備を進める
  • 事業計画書では事業承継の必然性と承継後の成長ビジョンを具体的な数字で示すことが採択のカギとなる

事業承継は企業の存続と地域経済の維持に直結する課題です。本補助金を活用し、費用面の不安を軽減しながら計画的に進めていきましょう。

よくある質問

Q. 事業承継・引継ぎ補助金はどのような事業者が対象ですか?
A. 事業承継(親族内承継・従業員承継・M&Aなど)を行った、または行う予定の中小企業・小規模事業者が対象です。経営革新事業では承継後の新たな取り組みに対する経費が、専門家活用事業ではM&A時の仲介手数料やデューデリジェンス費用が補助対象となります。
Q. 補助金の上限額と補助率はどの程度ですか?
A. 経営革新事業は補助上限600万円(一定要件で800万円)・補助率2/3以内、専門家活用事業は補助上限600万円・補助率2/3以内、廃業・再チャレンジ事業は補助上限150万円・補助率2/3以内です。公募回によって変更される場合があるため、最新の公募要領を確認してください。
Q. M&Aで事業を買収する側(買い手)も対象になりますか?
A. はい、専門家活用事業では買い手側も対象です。M&A仲介会社への手数料やデューデリジェンス費用、事業価値評価(バリュエーション)費用などが補助対象経費に含まれます。
Q. 過去に他の補助金を受けていても申請できますか?
A. 原則として申請可能です。ただし、同一の事業内容で重複して補助金を受けることはできません。過去に受けた補助金と異なる事業内容であることが条件となります。

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