地域雇用開発助成金の活用法|過疎地域での雇用創出
地域雇用開発助成金の概要、対象地域、支給要件、申請手続きを解説。過疎地域・雇用機会不足地域で事業所を設置し雇用を創出する中小企業向けに、助成金活用の実務をまとめました。
地方での事業展開を検討している中小企業にとって、地域雇用開発助成金は見逃せない支援制度です。雇用機会が不足している地域で事業所を設置・整備し、地域の求職者を雇い入れた場合に、設備費用と雇用増加数に応じた助成金が支給されます。
この助成金は最大3回まで支給を受けられるため、長期にわたって事業運営を支える財源となります。地方での工場建設、営業所の開設、サテライトオフィスの設置など、地域に根ざした事業展開を計画している企業にとって、活用価値の高い制度です。
本記事では、地域雇用開発助成金の概要と申請の実務を解説します。
制度の概要と目的
地域雇用開発助成金は、雇用保険法に基づく雇用関係助成金の一つです。雇用機会が特に不足している地域における雇用構造の改善を目的として、事業所の設置・整備に伴い地域の求職者を雇い入れた事業主に対して助成金を支給します。
対象地域
助成金の対象となる地域は、雇用状況に基づいて厚生労働大臣が指定しています。主な対象地域の区分は以下の通りです。
同意雇用開発促進地域: 都道府県が作成する地域雇用開発計画に基づき、雇用開発を促進する必要があると認められた地域です。主に有効求人倍率が全国平均を下回る地域が指定されています。
過疎等雇用改善地域: 過疎地域自立促進特別措置法に基づく過疎地域や、離島振興法に基づく離島など、人口減少と雇用機会の不足が深刻な地域です。
対象地域は定期的に見直されるため、厚生労働省のウェブサイトや最寄りのハローワーク(公共職業安定所)で最新の情報を確認してください。
支給要件
助成金を受給するためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
事業所の設置・整備: 対象地域内に事業所を設置(新設)または整備(増設・設備更新)し、一定額以上の費用を投じること。設置・整備費用には、土地の取得費、建物の建設・賃借費、設備・機器の購入費などが含まれます。
労働者の雇入れ: 事業所の設置・整備に伴い、対象地域内に居住する求職者を一定人数以上雇い入れること。雇入れの対象となるのは、ハローワークなどの職業紹介機関を通じて採用した者です。
雇用保険の適用: 雇い入れた労働者が雇用保険の被保険者であること。短時間労働者も要件を満たせば対象になりますが、雇用保険の加入要件を満たす必要があります。
支給額と支給回数
助成金の支給額は、設置・整備に要した費用の金額区分と、増加した労働者数の組み合わせで決まります。
支給額の決定方法
設置・整備費用は300万円以上から5,000万円以上まで複数の区分に分かれており、増加労働者数は3人以上(創業の場合は2人以上)から20人以上まで区分されています。中小企業は大企業よりも高い支給額が設定されています。
例えば、中小企業が設置・整備費用1,000万円以上3,000万円未満を投じ、6〜9人の労働者を増員した場合、1回あたり80万円程度の助成金が支給されるイメージです。具体的な支給額は公募要領の支給額表で確認してください。
最大3回の支給
地域雇用開発助成金は、要件を継続して満たしている場合に最大3回(1年ごと)の支給を受けられます。つまり、事業所の設置・整備後、3年間にわたって助成金が支給される可能性があります。
2回目以降の支給を受けるためには、以下の条件を維持する必要があります。
- 対象労働者が引き続き雇用保険の被保険者として雇用されていること
- 事業所における雇用保険被保険者数が、計画時点の人数を下回っていないこと
- 事業所の運営が継続していること
1回目の支給を受けた後に労働者が退職し、人数要件を満たさなくなった場合は、2回目以降の支給が受けられません。従業員の定着施策も並行して進めることが、助成金を最大限に活用するポイントです。
申請手続きの流れ
地域雇用開発助成金の申請手続きは、計画段階と支給申請段階の2段階で進みます。
計画書の提出
事業所の設置・整備と労働者の雇入れを行う前に、「地域雇用開発計画書」を管轄のハローワークに提出します。この計画書には、事業所の設置・整備の内容、投資予定額、雇入れ予定人数、事業計画の概要などを記載します。
計画書の提出後、計画期間内(最長18ヶ月)に事業所の設置・整備と労働者の雇入れを完了させます。計画期間を過ぎてから行った設置・整備や雇入れは、助成金の対象になりません。
支給申請
計画期間が終了した後、支給申請書を管轄の都道府県労働局またはハローワークに提出します。申請に必要な主な書類は以下の通りです。
- 支給申請書
- 設置・整備費用の支出を証明する書類(領収書、契約書など)
- 雇入れた労働者の雇用関係を証明する書類(雇用契約書、雇用保険被保険者資格取得届など)
- 事業所の所在地を示す書類(登記簿謄本など)
- 賃金台帳、出勤簿
申請期限は計画期間の終了日から2ヶ月以内です。期限を過ぎると申請が受理されない場合があるため、計画期間の終了時期を管理しておくことが重要です。
審査と支給
提出された申請書類に基づき、労働局が要件の充足を審査します。審査には通常2〜3ヶ月程度かかります。審査の結果、要件を満たしていると認められれば支給決定が行われ、指定口座に助成金が振り込まれます。
不支給となる主な理由として、対象地域の要件を満たしていない、設置・整備費用が下限額に達していない、雇入れた労働者が要件を満たしていない、申請書類に不備がある、などが挙げられます。
活用上の注意点
他の助成金との併用
地域雇用開発助成金は、同じ労働者の雇入れを対象として他の雇用関係助成金(キャリアアップ助成金、特定求職者雇用開発助成金など)と併用できる場合があります。ただし、同一の経費に対して複数の助成金を重複して受給することはできません。
他の助成金との組み合わせを検討する場合は、事前にハローワークや都道府県労働局に相談して、併用の可否を確認してください。
不正受給の防止
助成金の不正受給(虚偽の申請など)が発覚した場合、助成金の全額返還に加え、延滞金(年3%)や不正受給額の20%に相当する違約金が課されます。さらに、事業主名が公表され、5年間は雇用関係助成金の申請が不受理になります。
正確な書類作成と適正な申請を心がけ、不正受給のリスクを未然に防ぐことが大切です。
まとめ
地域雇用開発助成金の活用について、要点を整理します。
- 雇用機会が不足している地域で事業所を設置・整備し、地域の求職者を雇い入れることで、設置・整備費用と増加労働者数に応じた助成金を最大3年間にわたって受給できる
- 計画書の事前提出が必須であり、計画期間内に設置・整備と雇入れを完了させる必要があるため、事業スケジュールと助成金の申請スケジュールを連動させた計画立案が重要である
- 2回目以降の支給には雇用の維持が条件となるため、採用した従業員の定着支援にも力を入れ、助成金の受給効果を最大化する取り組みが求められる
よくある質問
- Q. 地域雇用開発助成金はどのような地域で利用できますか?
- A. 雇用機会が特に不足している地域(同意雇用開発促進地域、過疎等雇用改善地域など)が対象です。対象地域は厚生労働省のウェブサイトで確認できます。自社の事業所所在地が対象地域に含まれるかを事前に確認してください。
- Q. 助成金の支給額はいくらですか?
- A. 設置・整備費用と増加した従業員数の組み合わせで支給額が決まります。例えば、設置・整備費用が300万円以上600万円未満で3人以上の増員の場合、1回目の支給は50万円が目安です(中小企業の場合)。最大3回の支給を受けられ、合計で48〜960万円の範囲です。最新の支給額表を確認してください。
- Q. 既存の事業所の増設でも対象になりますか?
- A. はい、事業所の新設だけでなく、既存事業所の増設・設備整備も対象になります。ただし、一定額以上の設置・整備費用を要し、対象地域内で新たに労働者を雇い入れることが要件です。