特定調停 — 債務調整のための簡易裁判所の調停手続き
特定調停とは、特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律に基づく調停手続きです。利用要件や手続きの流れ、メリット・デメリットを解説します。
特定調停とは、「特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律」(平成11年法律第158号、通称:特定調停法)に基づき、金銭債務を負っている者の経済的再生を図るために行われる調停手続きです。簡易裁判所に申立てを行い、調停委員会の仲介のもとで債権者と債務の返済条件について合意を目指します。
特定調停の概要と要件
特定調停法は2000年(平成12年)2月に施行されました。この法律は、民事調停法の特例として位置づけられており、支払不能に陥るおそれのある債務者が、裁判所の関与のもとで債務の調整を行う機会を確保することを目的としています。
申立てができるのは、金銭債務を負っている者であって、支払不能に陥るおそれのある者、事業の継続に支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することが困難である者、または債務超過に陥るおそれのある法人です(特定調停法第2条)。
特定調停は簡易裁判所に申し立てます。個人だけでなく法人も利用でき、複数の債権者に対して同時に申立てを行うことも可能です。申立て費用は債権者1社あたり500円程度の収入印紙と郵便切手代であり、弁護士に依頼せず本人が申し立てることもできるため、費用面での負担が小さい手続きです。
手続きの流れ
特定調停の手続きは、概ね以下のように進みます。
まず、申立人が簡易裁判所に特定調停の申立書を提出します。申立書には、債権者の一覧、債務の内容、財産の状況、収支の状況などを記載します。裁判所が申立てを受理すると、調停委員会が組織されます。
調停委員会は、調停主任(裁判官または民事調停官)と2名以上の調停委員で構成されます。調停委員には、弁護士、税理士、不動産鑑定士などの専門家が選任されることが多く、債務整理に関する知見を活かした調整が期待できます。
調停期日では、申立人と債権者がそれぞれの主張を述べ、調停委員会が双方の間に入って合意形成を図ります。通常、2回から4回程度の期日を経て結論に至ります。期間としては申立てから2か月から4か月程度が一般的です。
合意が成立すると調停調書が作成されます。調停調書は確定判決と同一の効力を持つため(民事調停法第16条)、債務者が合意内容に違反した場合、債権者は改めて訴訟を提起することなく強制執行を申し立てることができます。
メリットとデメリット
特定調停のメリットとして、まず費用の低さが挙げられます。弁護士費用や裁判費用が最小限で済むため、資金繰りが厳しい中小企業にとって利用しやすい手続きです。また、申立てにより債権者からの取立てが事実上停止する効果も期待できます。
さらに、法的手続きでありながら、民事再生や破産と比較して簡易・迅速に進められます。事業を継続しながら債務の調整を行える点も、経営者にとっては大きなメリットです。
一方、デメリットとしては、調停はあくまで当事者の合意が前提であるため、債権者が応じなければ成立しないという点があります。裁判所は特定調停法第17条に基づき「調停に代わる決定」を出すことができますが、これに対して異議が申し立てられれば効力を失います。
また、調停が成立した場合でも、信用情報機関に事故情報として登録される可能性があります。法人の場合は直接的な信用情報への影響は個人ほど大きくありませんが、金融機関との取引関係に影響が及ぶ点は考慮する必要があります。
まとめ
特定調停は、費用負担が少なく、事業継続を図りながら債務の調整を行える法的手続きです。中小企業の資金繰り改善や債務整理の選択肢として有効ですが、債権者の合意が必要であること、強制力に限界があることを理解したうえで利用を検討してください。弁護士や認定支援機関に相談し、他の手続きとの比較を行ったうえで最適な方法を選ぶことが重要です。