民事再生法 — 事業を継続しながら再建を図る法的手続き
民事再生法とは、経済的に困難な状況にある債務者が事業を継続しながら再建を図るための法律です。手続きの流れや会社更生法・破産法との違いを解説します。
民事再生法とは、経済的に窮境にある債務者が、裁判所の監督のもとで事業や生活の再建を図るための法律です。1999年(平成11年)12月に公布され、2000年4月に施行されました(平成11年法律第225号)。旧和議法に代わる再建型の倒産手続きとして制定されています。
民事再生法とは
民事再生法は、債務者が支払不能や債務超過に陥る前の段階でも申立てが可能な、再建型の倒産処理手続きを定めた法律です。「破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがあるとき」または「事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないとき」に申立てができます(民事再生法第21条第1項)。
この法律の大きな特徴は、経営者が原則としてそのまま事業の経営を継続できる点です(DIP型手続き:Debtor In Possession)。会社更生法のように管財人が選任されて経営権が移るのではなく、従来の経営陣が引き続き経営にあたりながら再生計画を策定します。ただし、裁判所が必要と認めた場合は監督委員が選任され、一定の行為には監督委員の同意が求められます。
個人から法人まで幅広い主体が利用できることも特徴です。株式会社に限定される会社更生法とは異なり、合同会社や医療法人、学校法人、さらには個人事業主も民事再生手続きを利用することができます。
手続きの流れ
民事再生手続きは、おおむね以下の流れで進みます。
まず、債務者が裁判所に再生手続開始の申立てを行います。申立てと同時に弁済禁止の保全処分を申し立てるのが通常で、これにより既存の債務の弁済が一時的に停止されます。裁判所は申立てに問題がなければ、監督委員を選任したうえで再生手続の開始を決定します。
次に、債権届出期間が設けられ、債権者は自らの債権の届出を行います。届出のあった債権について、再生債務者が認否を行い、異議がある場合は査定の手続きに進みます。
その後、再生債務者は再生計画案を策定し、裁判所に提出します。再生計画案には、債務の減額率や弁済方法、弁済期間などが記載されます。債権者集会において、出席した議決権者の過半数かつ議決権総額の2分の1以上の同意を得られれば可決となります(民事再生法第172条の3)。裁判所が再生計画を認可すれば、計画に沿った弁済が開始されます。
申立てから再生計画認可までの期間は、通常5か月から6か月程度です。弁済期間は原則として10年以内とされていますが、3年から5年程度に設定されるケースが多いです。
会社更生法・破産法との違い
倒産手続きにはいくつかの種類があり、それぞれ目的と性質が異なります。
| 項目 | 民事再生法 | 会社更生法 | 破産法 |
|---|---|---|---|
| 目的 | 事業の再建 | 事業の再建 | 財産の清算 |
| 対象 | 法人・個人を問わない | 株式会社のみ | 法人・個人を問わない |
| 経営権 | 原則として現経営陣が継続 | 管財人に移転 | 破産管財人に移転 |
| 担保権の扱い | 原則として別除権(手続外で行使可) | 手続内に取り込まれる | 別除権として行使可 |
| 手続期間の目安 | 5〜6か月で認可 | 1年以上かかることが多い | 数か月〜1年程度 |
民事再生法は手続きが比較的迅速で柔軟な反面、担保権者を手続きに取り込む力が弱い点が課題です。担保権は再生手続きによって制約されないため(別除権)、担保権者との個別交渉が必要になります。一方、会社更生法では担保権も手続きの中で処理されるため、大規模な事業再建に適しています。
中小企業における活用
中小企業が民事再生手続きを利用するケースは、金融機関からの借入返済が困難になった場合や、取引先への支払いが滞った場合などです。経営者が引き続き経営にあたれるDIP型の仕組みは、取引先や従業員との関係を維持しやすいという利点があります。
一方で、民事再生を申し立てると取引先からの信用が低下し、現金取引を求められたり取引を打ち切られたりするリスクもあります。また、申立て時にはスポンサー(支援企業)の確保が重要となるケースが多く、事前の準備が不可欠です。
費用面では、裁判所への予納金が必要です。予納金の額は負債総額によって異なり、例えば東京地方裁判所の運用では数百万円から数千万円程度とされています。加えて、弁護士費用や財務アドバイザーの費用も発生します。
民事再生手続きに至る前に、私的整理(中小企業活性化協議会の支援による再生計画策定など)による解決が可能であれば、そちらを優先的に検討するのが一般的です。法的手続きに比べて事業への影響を抑えられるためです。
まとめ
民事再生法は、事業の継続を前提とした再建型の倒産手続きを定める法律です。経営者がそのまま経営を続けられるDIP型の仕組みと、迅速な手続き進行が特徴です。中小企業にとっても利用しやすい制度ですが、申立て後の信用低下や担保権者との交渉といった課題もあります。事業再生を検討する際は、弁護士や認定支援機関に早い段階で相談し、民事再生を含む複数の選択肢を比較検討することが重要です。