経営改善計画 — 金融機関との交渉を支える再建の設計図
経営改善計画とは、業績悪化した企業が経営の立て直しに向けて策定する具体的な行動計画です。銀行提出の目的、405事業との関係、計画書の基本構成を解説します。
銀行への返済が厳しくなったとき、金融機関から「経営改善計画を出してほしい」と求められることがあります。経営改善計画は単なる書類ではなく、企業が立ち直るための道筋を示す設計図です。計画の質が金融支援の可否を左右するため、その位置づけと基本的な構成を理解しておくことが大切です。
経営改善計画とは
経営改善計画とは、業績が悪化した企業が経営の立て直しを図るために策定する、具体的な行動計画と数値計画を含む文書です。主に金融機関に提出し、リスケジュール(返済条件の変更)や追加融資の判断材料として活用されます。
金融機関にとって、融資先の経営改善計画は債務者区分の判断に影響する重要な資料です。金融検査マニュアル(2019年に廃止されたものの、考え方は金融機関の実務に引き継がれている)では、合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画が策定されている場合に、債務者区分の上位遷移が認められるとしていました。
つまり、経営改善計画の策定は、単に経営を見直す契機となるだけでなく、金融機関からの支援を継続的に受けるための条件にもなっています。
実務上のポイント
経営改善計画の策定にあたっては、中小企業庁の支援制度を活用することが有効です。
「経営改善計画策定支援事業」(通称:405事業)は、認定経営革新等支援機関(認定支援機関)の支援を受けて経営改善計画を策定する場合に、専門家費用の3分の2(上限あり)が補助される制度です。中小企業活性化協議会を通じて申請します。
より簡易な「早期経営改善計画策定支援事業」(通称:ポスコロ事業)もあります。こちらは資金繰りの悪化が深刻化する前の段階で、早めに計画を策定するための制度であり、手続きも比較的簡便です。
経営改善計画の基本構成は、おおむね次のとおりです。まず、企業の概要と事業内容を整理します。次に、業績悪化の原因を分析し、窮境原因を明確にします。そのうえで、具体的な改善施策(売上向上策、コスト削減策、事業の選択と集中など)を記載します。最後に、今後3年から5年程度の損益計画、貸借対照表計画、資金繰り計画を数値で示します。
計画の実現可能性を金融機関に認めてもらうためには、改善施策が具体的であること、数値の根拠が明確であること、そして過度に楽観的でないことが求められます。売上の急回復を前提とした計画は信頼性が低いと判断されがちです。むしろ保守的な前提のもとでも返済が可能であることを示すほうが、金融機関の納得を得やすいでしょう。
計画策定後は、毎月または四半期ごとに計画と実績を比較し、乖離がある場合は原因を分析して計画を修正するPDCAサイクルが重要です。金融機関への定期報告(モニタリング)も求められるため、計画は策定して終わりではなく、継続的に運用していくものと捉えてください。
関連用語との比較
経営改善計画と事業再生計画: 経営改善計画が主にリスケジュールなどの金融支援を得るために策定されるのに対し、事業再生計画はより深刻な局面(債務超過や資金ショートの危機)で策定されるものです。事業再生計画では、債権放棄やDES(デット・エクイティ・スワップ)など、より踏み込んだ金融支援が盛り込まれることがあります。
経営改善計画と事業計画: 事業計画は成長戦略や新規事業の展開を目的とする前向きな計画であるのに対し、経営改善計画は業績悪化からの回復を目的とする点が異なります。ただし、計画の構成要素(現状分析、施策、数値計画)は共通する部分が多いため、事業計画をベースに経営改善計画を作成するケースもあります。
まとめ
経営改善計画は、業績が悪化した企業が金融機関の支援を受けながら経営を立て直すために策定する行動計画・数値計画です。405事業や早期経営改善計画策定支援事業などの公的支援制度を活用することで、専門家の助力を得ながら策定を進めることができます。計画の策定後は、定期的なモニタリングと修正を行い、実効性を担保することが金融機関との信頼関係維持につながります。