DES(デット・エクイティ・スワップ) — 債務を資本に振り替える手法
DES(デット・エクイティ・スワップ)とは、債務を株式(資本)に振り替える手法です。役員借入金の資本振替によるBS改善効果や税務上の注意点を解説します。
中小企業の貸借対照表には、役員からの借入金が多額に計上されているケースが少なくありません。この役員借入金を資本に振り替え、財務体質を改善する手法が「DES(デット・エクイティ・スワップ)」です。金融機関からの融資審査や事業承継の場面で、BS(貸借対照表)の健全性が問われる場面で活用されています。
DESとは
DES(Debt Equity Swap)は、日本語で「債務の株式化」と訳されます。企業が負っている債務を消滅させる代わりに、債権者に対して株式を発行する取引です。債権者の立場からすると、貸付金(債権)が株式(出資持分)に変わることを意味します。
具体的な仕組みを説明します。たとえば、社長が会社に3,000万円を貸し付けている場合、この3,000万円の貸付金を現物出資の形で会社に出資し、会社はその対価として株式を発行します。結果として、貸借対照表の負債の部にあった「役員借入金3,000万円」が消え、純資産の部の「資本金」(または資本剰余金)が3,000万円増加します。
会社法上、DESは現物出資として取り扱われます(会社法第199条第1項第3号)。現物出資の場合は原則として検査役の調査が必要ですが、弁護士・公認会計士等の証明がある場合や、金銭債権について帳簿価額を超えない場合は不要とされています(会社法第207条第9項第5号)。
実務上のポイント
DESを実施する際に注意すべき税務上の論点があります。
DESの実行方法には「券面額説」と「評価額説」の二つの考え方があり、税務上の取扱いが異なります。券面額説では、債権の額面金額をそのまま出資の価額とします。一方、評価額説では、債権の時価(回収可能額)を出資の価額とします。
法人税法上は評価額説が採用されており、債権の時価と帳簿価額に差額がある場合は「債務消滅益」が発生する可能性があります(法人税法第62条の8参照)。たとえば、帳簿価額3,000万円の債権の時価が1,000万円と評価される場合、差額の2,000万円が会社側の債務消滅益として課税対象になり得ます。
中小企業の役員借入金の場合、会社の財務状況が良好であれば債権の時価と帳簿価額は一致するため、債務消滅益は発生しません。しかし、債務超過の企業では債権の時価が帳簿価額を下回る可能性があり、思わぬ課税が生じるリスクがあります。DESの実行前に税理士と十分に協議しておくことが不可欠です。
BS改善効果としては、負債の減少と純資産の増加が同時に実現するため、自己資本比率が大幅に改善します。金融機関からの融資審査においてプラスの評価を受けやすくなるほか、事業承継の際に株式の評価にも影響を与えます。
一方、DESによって発行済株式数が増加するため、既存株主の持株比率が変動する点にも留意が必要です。オーナー企業で社長のみが株主かつ債権者である場合は大きな問題になりませんが、複数の株主がいる場合は株主間の合意を得る必要があります。
関連用語との比較
DESと債権放棄: 債権放棄は、債権者が債権を無償で放棄する行為です。会社側に債務免除益が発生し、課税対象となる点はDESと同様ですが、債権者側が対価(株式)を受け取らない点が異なります。DESは債権者が株式を取得するため、会社の業績が回復した場合に株式の価値上昇という形でリターンを得られる余地があります。
DESとDDS(デット・デット・スワップ): DDSは、既存の債務を条件の異なる債務(たとえば劣後ローン)に切り替える手法です。DESが債務を資本に変えるのに対し、DDSは債務のまま条件を変更します。金融機関が債務者企業の再生支援で活用するケースが見られます。
まとめ
DES(デット・エクイティ・スワップ)は、債務を資本に振り替えることで貸借対照表を改善する手法です。中小企業では役員借入金の資本振替に活用されるケースが多く、自己資本比率の改善や金融機関からの評価向上が期待できます。ただし、税務上の債務消滅益の発生リスクがあるため、実行にあたっては税理士との事前協議が欠かせません。